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国内大手メーカーが、海外のハイエンド・サーバー市場に活路を見いだそうとしている。NECは米ユニシスと次世代機を共同開発、ユニシスのメインフレーム・ユーザーの需要を狙う。富士通は米EDSと組み、北米のレガシー・マイグレーション市場に挑戦する。


本記事は日経コンピュータ 2005年11月14日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 NECとの提携を発表した10月25日、ニューヨーク株式市場で米ユニシスの株価は反発、0.7ドル高の5.2ドルで引けた。米国では1株5ドルを切ると危険水域とされており、市場はNECとユニシスが、メインフレームの後継機となるハイエンド・サーバーを共同開発するという発表を好感したようだ。

 米ユニシスは売上高の減少に歯止めがかからず、2005年7-9月期までの4四半期赤字が続いている。年率8%の勢いで減り続けるメインフレーム事業のために、巨額の開発投資を続けるのは難しい。約300億円といわれるメインフレーム用CMOSプロセサの開発投資は大きな負担だ。しかし、製品の継続を約束しなければ、顧客に逃げられてしまう。NECが次世代サーバーの開発費を負担、生産も引き受けるという提携が、ユニシスの窮地を救った。

2007年に次世代機を投入

 両社が開発するのは、インテル製プロセサを使い、両社のメインフレーム用OS(ユニシスのOS2000とMCP、NECのACOS)や、UNIX、Linux、Windowsが動くハイエンド・サーバーだ。米ユニシスのメインフレームClearPathとES7000、NECのi-PX 9000、NX7700iとExpress5800(4way以上)の後継機になる。2007年にIA-32対応の最大16way構成のサーバーを、2008年にIA-32/64兼用で最大32way構成のサーバーを市場投入する。

 提携にはこのほか、(1)ミドルウエアの相互利用、(2)セキュリティ分野や通信分野での協業、(3)海外市場での保守サービスをNECが米ユニシスへ委託、(4)米ユニシスからNECへのシステム構築方法論での協力---も含まれる。

 この提携はNECにとっても、「タナボタと言えるぐらい、メリットは大きい」(NECの小林一彦専務)。一つは、生産台数が増えることによるコストダウン効果だ。もともとNECは、2007年からの4年間で1万5000台という出荷台数を前提に、IAサーバーの開発を計画していた。ユニシス向けの2万2000台を上乗せすると、ボリュームは2倍以上に膨らむ。小林専務は「チップセットなど主要な部品だけで10%以上のコストダウン効果がある」と強調する。ユニシスのOSを動かすための仕様変更は生じるが、「単独開発の予算内に収め、追加の投資は生じさせない」(同)という。米ユニシスからの技術供与で、現在は米IBMからOEM(相手先ブランドによる生産)供給を受けている、8way以上のIA-32対応チップセットを自社製品に切り替えることもできる。

北米市場に再挑戦する富士通

 富士通も11月1日、米エレクトロニック・データ・システムズ(EDS)と、基幹業務向けのIA-64サーバー「PRIMEQUEST」の販売提携を決めた。

 同サーバーは、メモリーなどすべてのハードウエアを二重化することで、可用性を高めている。LinuxとWindowsの両方が動作する。「メインフレームの置き換えでは、国内ではLinuxが主流。だが、EDSからの要望があったため、北米ではWindows Server 2003のEnterprise EditionやDatacenter Editionを搭載したPRIMEQUESTで、メインフレーム市場を攻める」(富士通)。

 EDSが手掛けているレガシー・マイグレーションやホスティングなどのサービス向けに、今後3年間で2000台の販売を見込む。富士通はPRIMEQUESTについて、3年で1万台という販売目標をたてている。半分以上は海外市場向けだ。EDSとの提携によって、目標が現実味を帯びてきた。

 同社は資本参加していた米アムダールを通じ、北米のメインフレーム市場で一時は年間1000億円規模の売り上げを計上していた。しかし、米IBMの攻勢によって、採算が悪化。2000年に事実上撤退していた。EDSと組みPRIMEQUESTで、北米のメインフレーム市場に再挑戦する。

国内市場はデル、HPに押される

 NEC-ユニシス、富士通-EDSの提携は、メインフレームを含むサーバー市場の変化を反映している。

 価格競争が激化しているローエンドは、米デルや米ヒューレット・パッカード(HP)が市場を席巻。今年の4~6月期、PCサーバーの国内出荷台数は、デルがNECを上回って1位を獲得、2位は日本HPだった。通年ではNECがなんとかトップを維持しているものの、「年間の出荷台数で、数年以内に国外勢がトップを占める可能性は大きい」(IDC Japanの中村正弘サーバーグループマネージャー)。

 国産メーカーの2005年度中間決算からも、苦しい戦いを強いられている様子が分かる(表)。IAサーバーの売り上げが前年同期比で17%増、UNIXサーバーが同7%増えたNECは、ハードウエア事業で増収増益を達成したものの、営業利益は20億円という水準にとどまった。富士通は通信機器の好調に支えられ、ハードウエア事業で35億円の営業利益を確保した。しかし、通信機器を除くハードウエア事業は売上高が0.8%減の1561億円で、減益になった。日立製作所は、メインフレームとUNIXサーバー、PCサーバーとパソコンの売上高が、いずれも前年同期に比べて17%減った。通信機器を含むハードウエア事業(ハードディスク事業を除く)は106億円の営業黒字と健闘したが、「サーバーは価格下落の影響が大きい」(三好崇司専務)という。

 IDC Japanによれば、2005年4~6月期にPCサーバー国内出荷台数は前年同期比16.4%増えたが、出荷金額は同9.8%増に過ぎない。「勢いは衰えてきたが、当面、実質5~9%の価格下落が続く」(IDC Japanの中村氏)とみる。ローエンド市場の価格競争も止まりそうもない。

垂直統合モデルを築けるか

 こうした状況で、国産メーカーにとって利益率の高いハイエンド機の重要性は増している。特にメインフレームは、「ひと昔前と違って6割はないが、今も3~4割の利益率がある」(NECの小林専務)。

 ところが、この市場はIBMの独り勝ちだ。ガートナー・ジャパンによれば、2004年に世界のメインフレーム市場でIBMのシェアは75%まで上昇した。「その分、実は他のメインフレーマは売り上げを落としている」(亦賀忠明エンタープライズ・インフラストラクチャ バイスプレジデント)。

 IBMはサーバーからOS、ミドルウエア、アプリケーション、サービスまでをすべて一社で揃える垂直統合モデルを築いた。「オープンの技術を取り入れながら、顧客には昔ながらのメインフレームのようにハード・ソフト一体で提供する」(ガートナー・ジャパンの亦賀氏)という戦略が、高可用性を求めるメインフレーム・ユーザーからの支持を得たのである。

 NEC-米ユニシスの提携は、「ミドルウエアの相互利用」を含んでいるところが、単純なOEM契約とは異なる。富士通もEDSにハードウエアだけでなく、ミドルウエアも提供する。Windowsの可用性向上を技術面で支援する。二つの提携が実を結ぶかどうかは、メインフレーム・ユーザーが納得するような垂直統合型モデルを築けるかどうかにかかっている。

(目次 康男)