雇用形態の多様化で、勤続年数が短い社員や中途採用者、あるいはアルバイトが現場を支えるようになった。企業の競争力を高めるには、彼らを即戦力化するための育成策が必要だ――。こんな問題意識の中、eラーニングが再び脚光を浴びている。キーワードは動画を使った“疑似体験”。自社内にいるベテラン社員をビデオ撮影し現場に提供することで、OJTよりも効率的に業務のやり方を教育したり、ベテランのノウハウを伝授したりする。

(島田 優子)


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ2005年11月28日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集2」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 ランチタイムの喧噪が一段落した居酒屋の店内。休憩中の店員が二人、客席でパソコンをのぞき込んでいる。映っているのは、挨拶の仕方を解説する動画像。「あ~、45度のお辞儀って、ここまで頭を下げるんだ」。動画を見ていた店員たちは、店長から常に注意されていたお辞儀のコツがつかめたような気持ちになった――。

 これは、「土風炉」や「鳥元」、「日本橋亭」など複数業態の飲食店を、首都圏を中心に123店舗、展開するラムラのeラーニングの風景だ。同社はこの2月、2700万円をかけて、店員教育向けのeラーニング・システムを初めて構築した。

 経営企画室情報システムグループ・ゼネラルマネージャーの松尾直氏は、「顧客にとって、店員が社員かアルバイトかは関係ない。均一で質の高いサービスを提供することが競争力の源泉だ。それには店員のサービス品質を短期間に高められる仕組みが必要だった」と説明する。鳥元・馬喰町店(東京都中央区)の津田一行支店長は、「新人に動画像を見せながらポイントを解説するようになってからは、紙のマニュアルより習熟が早くなった」と効果の一端を話す。

“疑似体験”で人材育成期間を短縮

 今、動画像を使えるようにしたeラーニングが改めて注目を集めている。

図1●知識伝達から疑似体験を与えることに,eラーニングの役割が変わってきている
 これまでラムラは、接客マニュアルを配布したり、OJT(オンザ・ジョブ・トレーニング)で店員に教えたりしてきた。しかし、各店舗の店員はアルバイトがほとんど。頻繁に入れ替わるだけでなく、最近は中国人など外国人の採用も増えている。受けてきた教育や、育ってきた環境が異なる店員を即戦力化するための教育は、難しくなる一方で、「従来の教育方法では限界といった声が現場から上がっていた」(松尾氏)という。

 現場の人材教育が抱える問題は、ラムラだけのものではない。これまで、現場のノウハウはOJTなどで時間をかけて伝えればよかった。だが、雇用形態が多様化した今は、どの業界も短時間で人材を育成できなければ企業が立ち行かなくなっている(図1[拡大表示])。

 人材育成に詳しいアクセンチュアの小濱健二シニア・マネージャーは、「人材育成の短期化を利用するシステムとして、動画像はOJTと同じ役割を果たす。OJTでは業務を乗り切るコツや気付きを現場で先輩が後輩に伝えていた。それと同じ効果が動画像にもあるからだ」と、説明する。

 動画像を利用したeラーニングは先輩社員などの立ち居振る舞いを撮影し、お手本になる動画像を見せ、現場のスタッフに先輩が頼りだったOJTを“疑似体験”させる。


続きは日経コンピュータ2005年11月28日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。