大手ソフトウエア・ベンダーが、続々とオンデマンド・アプリケーションへの参入を表明している。カスタマイズの自由度を大幅に高め、既存のアプリケーションとの連携まで可能にした「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」の登場が大きな理由だ。SaaSはユーザー企業に何をもたらし、ソフトウエア業界にどのような衝撃を与えるのかを探る。

(目次 康男、今井 俊之)

セールスフォースの凄み
SaaSに針路を取れ
CADからERPまで


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ4月17日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

図●アプリケーションの投資効率を可視化するAPM(アプリケーション・ポートフォリオ・マネジメント
 パッケージ製品の販売と保守サポートで高収益を上げてきた大手ソフトウエア・ベンダーが、ここにきて続々とオンデマンド・アプリケーションへの参入を表明している。

 独SAPは2月、CRM(顧客関係管理)アプリケーション「SAP CRM On-Demand」を投入。日本ではSAPジャパンが日本IBMからインフラ提供を受けて5月に提供を始める。米マイクロソフトは3月末、CRMソフト「Dynamics CRM」のホスティング業者版を発表した。日本オラクルは日本テレコムと組み、オンデマンド・アプリケーション・ベンダー向けにインフラ提供を始めた。日本オラクルの新宅正明社長は、「ソフトウエア産業はサービス産業に変わる」とまで言い切る。

 だが、セル・モデルに比べると、オンデマンド型は減収につながる可能性が大きい。データセンターなどの設備も必要になる。それでも参入が相次ぐのはなぜなのか。ソフトウエア市場で何が起きつつあるのだろうか。

 “ネットバブル”と呼ばれた2000年ごろ、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)モデルが一躍脚光を浴び、そして急速に沈静化していった。カスタマイズに制約があったり、他のアプリケーションとの連携が難しかったことが、ユーザー離れにつながったことは、周知の通りである。ネットワーク環境も十分ではなかった。

 それから6年を経た今、これらの課題はほぼ解決された。これがオンデマンドへのシフトを促す理由の一つだ。例えば、ブロードバンド回線は2000年当時、0.5Mビット/秒で月額5000円。今では同じ料金で、100Mビット/ 秒の光ファイバー回線が使える。暗号化通信によって、データを外部に預けることへの抵抗感も薄まった。

 それどころか、「セキュリティや内部統制を考えると、管理を徹底している専門業者にデータを預けるほうが安全だという認識がユーザー企業に生まれてきた」(富士通の石田一雄アウトソーシング事業本部長)という。

 だが、パッケージ大手が一斉にオンデマンドの市場に参入するのには、もっと大きな理由がある。カスタマイズの自由度を大幅に高め、既存のアプリケーションとの連携まで可能にしたオンデマンド・アプリケーション「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」の登場がそれだ。SaaSに対する“恐怖感”がパッケージ大手をオンデマンド市場参入に駆り立てている。

 SaaSプロバイダの代表が、ASPから進化を遂げた米セールスフォース・ドットコムだ。同社のマーク・ベニオフ会長兼CEOは、1999年の創業以来一貫して「エンド・オブ・ソフトウエア(ソフトウエアの終焉)」を唱えてきた。「企業がパッケージ・ソフトを買う時代は終わる」という意味だ。今、異端児の言葉は現実味を帯びている。

 SaaSはソフトウエア業界にどのような衝撃を与えているのか。それによって起きつつある変化はユーザー企業に何をもたらすのだろうか。まずはセールスフォース・ドットコムを通してSaaSの姿を浮き彫りにしてみよう。


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