大手ソフトウエア・ベンダーが、続々とオンデマンド・アプリケーションへの参入を表明している。カスタマイズの自由度を大幅に高め、既存のアプリケーションとの連携まで可能にした「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」の登場が大きな理由だ。SaaSはユーザー企業に何をもたらし、ソフトウエア業界にどのような衝撃を与えるのかを探る。
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図●アプリケーションの投資効率を可視化するAPM(アプリケーション・ポートフォリオ・マネジメント |
独SAPは2月、CRM(顧客関係管理)アプリケーション「SAP CRM On-Demand」を投入。日本ではSAPジャパンが日本IBMからインフラ提供を受けて5月に提供を始める。米マイクロソフトは3月末、CRMソフト「Dynamics CRM」のホスティング業者版を発表した。日本オラクルは日本テレコムと組み、オンデマンド・アプリケーション・ベンダー向けにインフラ提供を始めた。日本オラクルの新宅正明社長は、「ソフトウエア産業はサービス産業に変わる」とまで言い切る。
だが、セル・モデルに比べると、オンデマンド型は減収につながる可能性が大きい。データセンターなどの設備も必要になる。それでも参入が相次ぐのはなぜなのか。ソフトウエア市場で何が起きつつあるのだろうか。
“ネットバブル”と呼ばれた2000年ごろ、ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)モデルが一躍脚光を浴び、そして急速に沈静化していった。カスタマイズに制約があったり、他のアプリケーションとの連携が難しかったことが、ユーザー離れにつながったことは、周知の通りである。ネットワーク環境も十分ではなかった。
それから6年を経た今、これらの課題はほぼ解決された。これがオンデマンドへのシフトを促す理由の一つだ。例えば、ブロードバンド回線は2000年当時、0.5Mビット/秒で月額5000円。今では同じ料金で、100Mビット/ 秒の光ファイバー回線が使える。暗号化通信によって、データを外部に預けることへの抵抗感も薄まった。
それどころか、「セキュリティや内部統制を考えると、管理を徹底している専門業者にデータを預けるほうが安全だという認識がユーザー企業に生まれてきた」(富士通の石田一雄アウトソーシング事業本部長)という。
だが、パッケージ大手が一斉にオンデマンドの市場に参入するのには、もっと大きな理由がある。カスタマイズの自由度を大幅に高め、既存のアプリケーションとの連携まで可能にしたオンデマンド・アプリケーション「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」の登場がそれだ。SaaSに対する“恐怖感”がパッケージ大手をオンデマンド市場参入に駆り立てている。
SaaSプロバイダの代表が、ASPから進化を遂げた米セールスフォース・ドットコムだ。同社のマーク・ベニオフ会長兼CEOは、1999年の創業以来一貫して「エンド・オブ・ソフトウエア(ソフトウエアの終焉)」を唱えてきた。「企業がパッケージ・ソフトを買う時代は終わる」という意味だ。今、異端児の言葉は現実味を帯びている。
SaaSはソフトウエア業界にどのような衝撃を与えているのか。それによって起きつつある変化はユーザー企業に何をもたらすのだろうか。まずはセールスフォース・ドットコムを通してSaaSの姿を浮き彫りにしてみよう。続きは日経コンピュータ2006年4月17日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。