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NTTデータなど大手ベンダー6社が、システム仕様を固める際にどのようにユーザーと合意形成を進めるかに関する手順の標準化に着手する。システム仕様に関するユーザーとベンダー間の齟齬をなくし、失敗プロジェクトの撲滅につなげることを狙う。


本記事は日経コンピュータ 5月1日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 NTTデータ、NEC、富士通、日立製作所、東芝ソリューション、構造計画研究所の6社は4月12日、「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」を発足させた。来年9月までに要件に関する合意形成の手順や、ユーザー視点のドキュメント類を策定。これらの成果物を無償公開し、各社のシステム・インテグレーション活動に役立てていく。情報処理推進機構のSEC(ソフトウェア・エンジニアリング・センター)などとも協力し、“業界標準”とすることを目指す考えだ。

 検討会が手がけるのは、ユーザー企業が定義した機能要件を基に、ユーザー側の合意をとりながらベンダーがシステム仕様書を作成していく手順の標準化である。具体的には、(1)画面遷移やレイアウトなどの「画面遷移・定義」、(2)業務の流れや手順を示す「ビジネス・プロセス」、(3)「データ・モデル」、(4)業務処理の詳細を記述する「業務ロジック」の4分野に関して、ユーザーに分かりやすく説明するにはどのような手順やドキュメントが必要かを議論し、ガイドラインにまとめる(図)。

 その際にゼロから議論するのではなく、参加企業が持つ手順やドキュメントをたたき台にする。例えば画面遷移では、紙芝居風に見せる、画面とフローチャートと対比させる、プロトタイプ画面を見せる、いった方法がある。これらが有効か、新たな方法を使うべきかを話し合い、ベスト・プラクティスとしてまとめていく。今年9月までに画面遷移・定義、来年3月までにビジネス・プロセスとデータ・モデル、同9月までに業務ロジックに関する手順やドキュメントを完成させる計画だ。

 設計以降の作業は、各社のドキュメントや開発プロセスに沿って進めることになる。システム化計画や要件定義など上流工程に関しては、SECが「超上流」として標準化作業を進めている。SECは「検討会の活動は我々と補完関係にある」としており、両者で協調して活動する見通しである。

 今回の検討会はNTTデータの浜口友一社長の肝いりでスタートした。同社の山下徹 副社長は狙いを、「現在のプロジェクトでは複雑な機能を持つシステムを短期間で開発する必要がある半面、開始時に要件を固めきれないケースが少なくない。そこでユーザーと共同で要件とシステム仕様をすり合わせていく作業が重要になる。ところが、ユーザーとベンダーとの合意プロセスはあいまいで、ベンダー視点で書かれたドキュメントはユーザーにとって分かりにくい場合が多い。この問題に取り組まない限り、失敗プロジェクトをなくせない」と語る。

 検討会が思惑通りに成果を出せば、ユーザー企業にとってもメリットは大きい。しかし肝心のユーザー企業が1社も参画していないなど疑問も残る。現時点では、ベンダー6社が手順やドキュメントをまとめた後でユーザー企業がレビューする予定だが、本来なら議論の段階からユーザー企業も参加するのが自然だ。日本IBMや野村総合研究所、アクセンチュアなどが名前を連ねていないのも気になる点である。それでも有力ベンダーが手を組んで上流工程の標準化に乗り出す試みは、これまでなかったこと。是が非でも成功させてほしいものだ。

(井上 英明)