グーグルの“どこでも利用”か、マイクロソフトの“あくまでも高機能”か——。オフィス・ソフトの世界に変化の兆しが見えてきた。グーグルはオフィス・ソフトの無償提供を計画、第1弾としてWebブラウザだけで利用できるワープロを用意している。マイクロソフトは複雑になっていたOfficeの操作画面を一新し、高機能化と使いやすさ向上の両立を狙う。操作性の革新を目指す両社の取り組みを通じ、オフィス・ソフトの明日を展望する。

(玉置 亮太)


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 マイクロソフトが事実上独占してきたオフィス・ソフトの世界が今、変わりつつある。仕掛け役となるのは米グーグル。同社は現在、従来とは異なる発想で開発されたワープロ・ソフト「Writely」の提供開始に向けて、着々と準備を進めている。

表●オフィス・ソフトをめぐる、米グーグルと米マイクロソフトの動き

 WritelyがマイクロソフトのWordと決定的に異なるのは、Webブラウザだけで利用できる点だ。クライアントにソフトを導入する必要はない。それでいて、使い勝手もWordなど既存のワープロ・ソフトにさほど引けを取らない。マウス操作やキーボード操作に応じた動的なWebアプリケーションを作成する手法「Ajax」を活用。文字や段落の編集、画像の張り付けなど、ワープロ・ソフトが持つ文書作成・編集に必要な機能を提供する。

 利用者が作成した文書データは、グーグルのサーバーに保存する。インターネットにつながったパソコンさえあれば、いつでもどこでも自分の文書を編集できる。いわば「どこでもワープロ」というべきものがWritelyだ。

 しかもグーグルは、Writelyを原則無料で提供する見通し。元々Writelyはベンチャー企業の米Upstartleが2005年に開発したソフトで、当時から無料だった。グーグルは今年3月に同社を買収し、Writelyを手に入れた。

 Writelyのように、Webブラウザだけで、オフィス・ソフトの機能を提供する動きが出てきている。一例を挙げると、表計算ソフトの領域では、すでに「NumSum」というソフトがインターネット上で利用可能になっている。NumSumも無償で利用でき、Webブラウザ上で表形式のデータを集計したり、簡単なグラフを作成できる。マイクロソフトのExcelで作成したファイルを読み込んで編集することも可能だ。また、「gOffice」と呼ぶソフトは、Webブラウザ上でPDF文書を作成できるほか、表計算やプレゼンテーション機能が用意されつつある。

 一方、マイクロソフトは2007年1月、満を持して次期Officeの「the 2007 Microsoft Office system(以下、Office 2007)」を発売する。同社の基本方針は、あくまでも高機能化を追求することにある。4月に来日した米マイクロソフトのビル・ゲイツ会長兼チーフソフトウエア・アーキテクトは、「システム」と銘打った次期Officeについて次のように熱弁を奮った。

 「我々はOfficeで、文書作成、プレゼンテーション、データ処理などオフィス業務の標準ソフトを作ってきた。(次期Officeは)企業内外のコラボレーションやコンテンツ管理、ビジネスインテリジェンス、プロジェクトマネジメントなどを含む、完結したプラットフォームを提供する」。

「結果指向」を打ち出す

 Office 2007の最大の変化は、新しいユーザー・インタフェース(UI)の提供である。ユーザーが実施したい作業をある程度先読みして必要なメニューを自動的に表示したり、アイコンやメニューの上にマウス・カーソルを合わせるだけで、コマンドの実行結果を仮表示(プレビュー)したりできる。ユーザーの作業を妨げずに、意図する作業結果にたどり着けるようにするという意味で、マイクロソフトは新UIのコンセプトを「結果指向」と呼んでいる。

 オフィス・ソフトは今や、個々のオフィスワーカーの道具にとどまらず、組織や企業の業務を支える存在になった。さらに、企業の枠を越えた情報共有や共同作業の基盤となっていくことが確実だ。


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