操作の誤り、思い込み、知識不足からくる間違いなど人間ならだれでも起こし得るミスが原因で、順調に動いていたはずのシステムが突然、深刻なトラブルに見舞われる——。システムを利用する人間の引き起こすリスク、すなわちオペレーショナル・リスクが拡大している。20を超す最新の事例から、なぜミスが発生し、企業はそれを防ぐことができないのかを探った。
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図●さまざまな人為的ミスがシステムを脅かしている |
日本郵政公社では今年4月16日、4重のチェック体制を取っていたにもかかわらず、定期メンテナンスの作業中に、約3900台のATM(現金自動預け払い機)が停止する事態が起きた。運用オペレータの作業ミスが原因である。
カジュアル衣料のライトオンは、2月に実施した販売管理系システムの移行に失敗し、全社的な売り上げに影響が生じた。システム移行時の作業ミスが原因だったとみられる。
システムの専門家だけでなく、1人のエンドユーザーの操作ミスも大きな波紋を呼ぶ。昨年から今年にかけて、証券会社で相次いでいる誤発注がその典型例だ。1度の誤発注による損失が数億円に達するケースも珍しくない。
人為的ミスは以前から起きていた。ここにきて、オペレーショナル・リスクが拡大している最大の理由は、ITの進化とともに業務とシステムが不可分のものになってきたことだ。インターネットの普及によって、企業内だけでなく、複数の企業間がシステムで結ばれることも珍しくなくなった。人為的ミスの影響は、またたくまに広がってしまう。
システムの運用や利用の現場も変化している。いずれの場所でもシステムを熟知したベテランが引退し始めたのだ。属人化しているベテランのノウハウは、他のスタッフに引き継ぐことができない。その結果、現場の弱体化する企業が現れるようになった。
自己防衛のために、企業はシステムの運用管理ツールや運用・操作のマニュアルを整備し、操作画面に警告を表示するといった対策をとっている。それでもミスはなくならない。結局、システムを操作するのは人間だからである。
残念ながら、人によるミスを完全になくすのは無理だ。だが、大きなトラブルにつながる可能性がある以上、ミスを放置するわけにはいかない。
システムを揺るがすミスにはどのようなものがあり、なぜ企業はそのミスを避けることができなかったのか。また深刻なトラブルを経験した企業は、どのような対策を取っているのか。
過去1年の間に起きた20超の事例への取材と、専門家による座談会を通じて、これまであまり触れられることのなかったミスの実態に迫った。
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