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経済産業省がIT産業の構造改革に本格的に取り組む。7月に、IT産業のあるべき姿や行動計画を示す提言を13年ぶりに公開。年内にも、提言の実施に必要なガイドラインを策定する。ベンダーの能力やIT人材のスキルを可視化・評価する制度を策定するのが目玉だ。


本記事は日経コンピュータ 6月26日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 経産省が公開するのは、「情報サービス・ソフトウェア産業維新」と題する提言書。現状の情報サービス/ソフトウエア産業が抱える課題を提示するとともに、大きく三つの領域での解決策を示す。(1)情報サービス産業における競争力の強化策、(2)ソフトウエア産業の国際競争力の強化策、(3)IT人材の高度化に向けた戦略、である(図)。経産省がIT産業に向けてこの種の提言を出すのは1993年以来のことだ。

 今回の提言は、IT産業の問題点や「あるべき論」に加え、具体的な行動計画を盛り込んだことが特徴。特に、「情報サービス産業の競争力強化を狙い、不透明な取引慣行を排除することを重視した」(鍜治克彦 商務情報政策局情報処理振興課長)。

 中核となるのは、ベンダーのシステム構築能力を可視化し、第三者が評価する制度の策定だ。指標として、(a)システムの信頼性、(b)IT人材のスキル、(c)IT投資価値の三つを使う。「これらは、提言を議論した産業構造審議会のメンバーから『“見える化”すべき』との意見が強かった」(同)。

 例えばシステムの信頼性については、今年4月に策定した「信頼性ガイドライン」を基にする。同ガイドラインは、システムの信頼性確保に必要な開発体制や事前予防の考え方をまとめたものだ。ここから「システム障害発生時の対応手順を文書化する」など50項目を選び、「信頼性評価指標」として6月に策定した。

 その上でコンサルティング会社などに対し、この指標を使ってシステムの信頼性を評価・認証するよう促していく。「保険会社が信頼性を評価し、結果をシステム障害保険の設定に反映させることも考えられる」(鍜治課長)。加えて、政府がシステムを調達する際にベンダーの能力を測る用途でも利用できるとみている。一部報道で、今回の提言が「格付け評価制度」と表現されたのはこのためだ。

 IT人材スキルの評価も、ベンダーの能力の“見える化”を狙ったものだ。まず年内にも、ITSS(ITスキル標準)で定めるIT関連のスキルや知識をどのように評価すべきかを定めた「スキル評価ガイドライン」を策定する。

 ガイドラインの内容を、早ければ来年度の情報処理技術者試験に反映。そのうえで、同試験をITSSと関連づけ、試験の合格者がITSSのどのレベルにあるかを明確にする。「ITSSのスキル・レベルごとに平均的な年収を示せば、IT人材の市場価値とスキルとの関係が明らかになる」(鍜治課長)。

 こうした情報サービス産業に関連する強化策に加えて、「魅力あるソフトや技術を生み出すためのイノベーションを促進する」(同)。対象は動画を含めた情報検索技術、グリッド・コンピューティングなどだ。その一環として7月に、産官学共同で検索技術開発に取り組む「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」を発足させる。

 鍜治課長は、「日本のIT産業はいまだに“多重下請け構造”や“人月工数主義”といった古いやり方を引きずっている。このままでは技術進歩に追従できないばかりか、システム品質の低下が続く」と話す。提言を実現するには、いくつもの壁を越える必要があるが、ユーザー企業やベンダーをうまく巻き込むことができれば、改革は決して不可能ではないと言えよう。

(森側 真一、玉置 亮太)