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社会保険庁のシステム調達改革に、早くも暗雲が漂い始めた。今年6月、基本設計業務の調達を開始したが、直後に自民党から待ったがかかり、計画の見直しを迫られている。現状の計画では一部大手ベンダーによる寡占を解消できない点が根拠である。


本記事は日経コンピュータ 8月7日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 “待った”がかかったのは、「社会保険オンラインシステム」の再構築プロジェクトである。社保庁は、2010年度末をメドに刷新したシステムを稼働させる予定で、今年6月初旬に基本設計を一般競争入札にかけた。このシステムの開発費用は総額で1000億円程度かかる見込みで、基本設計だけでも、74億円が予算として計上されている。

 システム調達改革の一環として、社保庁はこの再構築プロジェクトで、オンラインシステムを五つに分割してベンダーに発注する(図)。システム規模が巨大であるため、一部の大手ベンダーが事実上の競争なしで受注することになり、その結果、開発・運用費が高止まりしている、という指摘に対処するためだ。

 今回調達対象になっているシステムは長年にわたって、NTTデータが1社で開発・運用してきた。2005年度には、約500億円を同社に支払っている。金額の大きさに加え、過去には支払額の細かな内訳が示されてなかったことも判明し、政府のシステム調達改革の一つのシンボルと見られてきた。

 社保庁は、こういった批判に応えるために、システムを分割して入札にかけたのだが、それでも自由民主党のu-Japan特命委員会から待ったがかかった。

 問題とされたのは、四つの業務アプリケーションと、それらが動作する「基盤ソフトウエア」を、すべて同時並行で設計し開発を進める計画になっていること。基盤ソフトは、アプリケーション・サーバーやデータベース・ソフトを含むミドルウエア群である。

 業務アプリケーションの開発は、基盤ソフトで用意する開発環境やAPIを用いなければならないため、これらの開発は密接に連絡を取りながら進める必要がある。「基盤ソフトと業務アプリケーションを、異なるベンダーが開発するのは事実上不可能。このままでは、1社がすべて受注するのは目に見えている」(システム開発に詳しい政府関係者)。

 すでに、電子政府の構築を管轄する総務省行政管理局が、基盤ソフトを先行して設計・開発するように調達を見直す案を作成。社保庁の担当者に検討を促した。

 ただ、社保庁はこれに反発。「業務アプリケーションと基盤ソフトの要件は相互に影響しあうもので、同時並行でなければ作業が極めて非効率になる」と現計画の正当性を主張している。社保庁は、総務省や関係議員の説得に回っているという。

 問題の調達の結果は、今年8月21日に明らかになる予定だ。場合によっては、来年6月までに基本設計を終えるという計画が、早くも見直される可能性が出てきた。

(森側 真一)