「5年間で利益を7倍に」「リードタイム48時間を6時間に短縮」「1年で新規顧客を100件獲得」――。社内にシステムの専門家がいないにもかかわらず、ITを利用して目覚ましい成果を上げ、売り上げや利益を伸ばす企業がある。各社は“IT指南役”であるITコーディネータを徹底活用。先進技術をいち早く取り込んだり、システム開発会社の取りまとめに成功している。その取り組み姿勢は、中堅中小企業はもとより、社内にしっかりとしたシステム部門を持った大手企業にも役立つはずだ。

(目次 康男)


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 従来は延べ510分かけていた1商談当たりの交渉時間を140分にまで短縮し、60人いる営業部門の商談件数を年間3万3000件から4万7000件に、1人当たりの商談件数を1日4.6件から6件に増やした企業がある。工作機械やプラントに組み込む送風装置で、国内シェアの4割を握る昭和電機だ(図1)。課題だった営業活動を効率化したことで、同社は5年間で売上高を5割、経常利益にいたっては7倍に増やした。

図1●昭和電機の業績と情報化の推移

 昭和電機は社員163人中、44人を参画させた業務改革プロジェクトを実施。ITコーディネータの助けを借りながら、社員たちが商談時間を短縮する施策を自力でまとめ上げた。その上で約6000万円をかけて技術情報データベース、営業支援システム、図面管理システムを相次いで構築。顧客や営業担当者からの技術的な質問に答える専門組織を作った。

あえてシステムは議論せず

 昭和電機を支援したITコーディネータの森下勉氏と岩佐修二氏は、プロジェクトの冒頭、チームメンバーに対し、「システムのことは議論しない」という制約を課した。「システムに気を取られず、業務の改革に集中してもらう」(森下氏)ためだ。「情報化のプロジェクトだと聞いて参加したのに、あまりにも遠回りなやり方で、当初は戸惑った」と、プロジェクトのリーダー役を務めた営業推進グループの栗山隆史グループ長は振り返る。

 44人のメンバーは、自社の強み・弱みを探るいわゆるSWOT分析や、業績向上策の案をまとめることから始めた。週に1度、模造紙を壁一面に張り付けた会議室に集まり、業務上の問題や解決案を書いた付箋紙を張り付けながら、議論を重ねた。森下氏と岩佐氏は進行役に徹し、「こうすべきだ」という意見は一切言わなかった。

 1カ月ほどたつと、「営業担当者に技術教育を徹底し、商談における調査時間を短縮する」、「送風機の仕様など、顧客から来る技術面の質問に答える専門組織を作る」といった案が出てきた。「従来は自分の仕事の効率化しか考えていなかった社員が、会社全体としてどうすべきか考えられるようになった」(栗山グループ長)。

 商談に時間がかかっていたのは、営業担当者が機械メーカーの設計担当者と工作機械やプラントの図面を見ながら、「設計通りに空気を循環できるか」といった技術面の詳細について相談していたためだ。営業担当者は技術的な質問が寄せられるたびに、社内の設計部門や生産部門に戻って調べていた。1つの質問に答えるために、長いときには1週間近く費やしたこともある。

 森下氏はプロジェクト・メンバーがまとめ上げた業務改善案を基に、技術的な質問を集めた技術情報データベース、製品の仕様や過去の設計変更を調べるための図面管理システム、見積書の作成を支援する営業支援システムを構築する案を導いた。専門組織の設置については、柏木武久社長の説得に回った。さらに、全国10カ所にある営業拠点を行脚し、システムや新組織を使った新しい営業のやり方がうまくいくかどうか、プロジェクトに参加していない営業担当者の本音を聞いて回り、プロジェクトを後押しした。

 業務改善案を現場から募ったり、導入するシステムを考えるプロセスは、「ITコーディネータとして独立する以前、大手医薬品メーカーで営業部門の業務改革プロジェクトを指揮した経験が生きている」と森下氏は言う。同氏は営業部門代表として改善案をまとめ、販売管理や顧客分析システムの開発に携わった経験があった。


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