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ソフトバンクモバイルは10月28日と29日の両日、システム・トラブルが原因で、携帯電話番号ポータビリティの申し込み受け付けを停止した。同社は「顧客が殺到したことが理由」と説明するが、処理システムの開発が遅れたことが、最大の原因とみられる。


本記事は日経コンピュータ 11月13日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 電話番号を変えずに、携帯電話会社を変更できる携帯電話番号ポータビリティは、「携帯電話事業者にとって最大のチャンス」(ソフトバンクモバイルの孫正義代表執行役社長、写真)のはずだった。

 しかし現実には開始早々、2日間にわたって、システム・トラブルが原因で、ポータビリティの受付業務ができず、チャンスを逃した。トラブルを起こしたのは、携帯電話事業者間で相互接続し、ポータビリティを申し込んだ顧客の情報をやり取りする「MNPシステム」である。

 ソフトバンクモバイルは、ポータビリティの申し込みがあった場合、MNPシステムでこれを処理し、その結果を実際の課金・決済を処理する基幹系システムに反映させる。この一連の処理に遅延が発生し、規定時間内に他社と情報のやり取りができなかった。

 11月2日には、同社の阿多親市専務執行役が総務省に出向いて、障害発生の経緯と改善策を説明するに至った。直接の障害の対策費用だけで、数億円がかかる見込みだ。

 孫社長は10月30日の記者会見で、「想定より多くの顧客が殺到した」と説明した。ただ現実には、ポータビリティを利用して解約する利用者が、新規顧客よりも多かったとみられる。阿多専務執行役も、「負荷が高まった最初の要因は、“家族割”の解約処理が複雑だったこと」と話す。

 解約処理だけでなく、他社からの家族割を申し込む処理も、システムへの負荷を高めた。同じ家族割とはいえ、ソフトバンクモバイルとNTTドコモ、KDDIでは詳細が異なる。

 「顧客が他社から移行する際、家族割の申し込み方法が適切でないものが多く、何度も手続きをやり直す必要があった」(同社広報部)。

 システムへの負荷を下げるため、同社は、基幹業務システムと、MNPシステムを、バッチでつなぐことにした。当初はオンラインで処理していた。

 またアプリケーションに割り当てるスレッド数やプロセス数を見直し、申し込みの処理能力を2倍程度に増強。MNPシステム関連のサーバーのCPU数を1.5倍に、メモリーの容量を2倍弱に増強し、11月最初の3連休を乗り越えた。

 だがこれですべての問題が解決するかどうかは不透明だ。システムが処理能力不足に陥った原因は、システム開発の不備やテストの不足による可能性が高いからである。本誌の取材によれば、そもそもソフトバンクモバイルでは、MNPシステムの整備が遅れていた。

 「問題となった他社との相互接続も、テスト時点から処理速度が遅いと指摘されていた。トラフィックが高くなりやすい月末近くに、ポータビリティを開始したのも、少しでもスタートを遅らせたいソフトバンクモバイルの要請だったはず」(携帯電話会社の情報システム関係者)。

 ただし、ソフトバンクモバイル広報部は、「システム対応に遅れはなかった」と否定する。

 実際には、ポータビリティによって携帯電話会社を変更した利用者の、月次の料金計算や請求が正しく処理できて、初めて問題が解決したといえる。

(岡本 藍)