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働き盛りの30代のITエンジニアが、仕事に対する“やりがい”を失っている――。こんな実態が、本誌の調査から浮かんできた。最大の理由は、「仕事や会社に対し、将来性を感じていない」こと。「脱3K」が叫ばれる昨今だが、将来ビジョンの提示が不可欠だ。


本記事は日経コンピュータ 12月11日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 「現在の仕事にやりがいを感じているか」――。本誌が「働く意識調査」で聞いたこの質問に対し、ITエンジニアのおよそ4人に1人(25.3%)が「感じていない」と答えた。「強く感じている」の19.1%を上回る。

 中でも目に付くのが、リーダー役としての活躍が期待される30代後半の士気が、最も下がっていること(図)。約3割が“やりがい”を失っている。同世代で「やりがいを感じている」との回答は12.7%だった。

 この結果に対し、従業員満足度(ES)に詳しいJTBモチベーションズの林浩平コンサルタントは、次のように警鐘を鳴らす。「社員の士気は、会社の業績や離職率などを予測するための先行指標の一つ。業界を問わず、士気には世代間の差はあるが、これほど顕著にV字型になるのはIT業界だけ。30代の士気低下は遠からず20代にも伝播するだけに、このままでは業界全体の活力が失われる」。

 実際、ITエンジニアが抱く将来への不安は、彼らが描く「10年後のキャリア」像にも表れた。IT分野以外の仕事に転職する、あるいは社内で職種を変えるとするITエンジニアが全体の63.7%にも上る。「IT分野の専門職として、現在の会社で働き続けたい」という回答は17.4%である。

 やりがいを感じない理由として最も多かったのは、「仕事や会社に将来性を感じない」(41.3%)こと。2番目の「評価が上がらない」(31.3%)を10ポイントも上回る。自社内でESを調査している複数のITベンダーの人事担当者も、「この1~2年で、将来に不安を感じる社員が急増した」と口をそろえる。

 ITエンジニアの間には、「会社や上司の方針が頻繁に変わる。社員に何を求めているのか、会社がどこを目指しているのか分からない」(30代前半のSE)や、「赤字プロジェクトを減らせと言いつつ、何も対策を打っていない。社員のサービス残業で赤字を補填しているにすぎない」(30代後半のプロジェクト・マネジャ)といった不安や不満が高まっているわけだ。

 野村総合研究所(NRI)で人材開発コンサルティングに携わる木原裕子コンサルタントによれば、ITエンジニアが抱える将来への不安を払拭するには、「経営幹部と社員の間にあるコミュニケーション・ギャップを埋めることが先決」という。

 IT業界は今、“キツイ、帰れない、給与が低い”の3K職場の代名詞にまでなっている。処遇の改善や福利厚生制度の拡充といった施策を打つだけでなく、経営陣がビジョンを掲げ、それを現場と共有するための仕組みを確立することが、IT業界が活性化するための第一歩といえそうだ。

(目次 康男)

調査概要
11月1日から17日にかけて、日経BP社のIT情報サイト「ITpro」などで告知し、Webサイト上で実施。システムの企画・開発や運用・保守、営業などに携わるITエンジニア、2214人(平均年齢39.3歳)から有効回答を得た。詳細は次号で報告する