ベンダーやシステム子会社との間で、運用に関するSLAを結ぶ企業が増えている。システム障害が経営に与える影響やコンプライアンス強化への要求が高まる中、サービス・レベルを明確にしてあいまい性を排除することで、運用品質の向上につなげようというのだ。ベンダーの抵抗などSLA導入のハードルは高いが、先行企業の取り組みから“ハードル越え”のポイントも見えてきた。
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「利用部門から問い合わせがきても、以前はすぐに対応できないケースが結構あった。それが今は、1カ月1000件の問い合わせに対し、ほぼすべて1営業日以内に回答できている」――。
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図●システム運用を取り巻く環境の変化 |
「年間100件もあった大規模障害が半減した」東レや、「障害発生率が半分になった」という全日本空輸(ANA)など、最近になって“システム運用の品質”を劇的に改善したユーザー企業が数多く登場している。各社が成果を上げた方法は様々だ。ただ、共通点が一つある。それは、ベンダーもしくはシステム子会社との間で、運用に関するSLA(サービス・レベル・アグリーメント)を結んだことである。
ここでのSLAは、両社の責任を明らかにし、目指すべきサービス・レベルを数値で示した“同意”を取ったというもの。サービスの可用性が99.9%、障害発生時の連絡は10分以内、といった具合だ。契約書などに明文化するだけでなく、測定し、順守度合いをチェックする。ただしSLAというと「何か問題が起きたときに、どれだけのペナルティを科すか」という契約を思い浮かべるが、先行企業は必ずしもペナルティを科していない。それでも、従来の“あいまい性”を排除したことで、品質の向上につなげることができた。
「たとえペナルティなしでも、ベンダー側の反発は大きい。できるものなら、とっくにやっている」と反論する向きもあろう。確かに各社とも、ベンダーの説得や、妥当性のあるサービス・レベルの決定、効果を最大化したり持続させたりするためのPDCAサイクルの確立に、大きな労力を費やした。そうした犠牲を払ってでもSLA導入を実行せざるを得なかったのは、環境の変化が従来の“あいまい運用”を許さなくなったからだ。
システム運用を取り巻く環境は以前に比べ厳しさを増している。システム障害が経営に与える影響は従来とは比べものにならないくらい大きい。いわゆる“日本版SOX法”への対応など、コンプライアンス(法令順守)強化への要求もある。コスト削減圧力が依然として強い中で、システムの数や複雑度は増している。運用品質の劇的な向上は、情報システム部門の喫緊の課題となっているのである。もはや「SLA導入はハードルが高い」とは言っていられない。
追い風もある。ベンダーは、ユーザー企業の変わりように「No」とは言えず、むしろSLAを“売り”にし始めた。
続きは日経コンピュータ2006年12月11日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。