2005年11月から続いた情報システムを巡るトラブルで信用を大きく損なった東京証券取引所。その東証によるシステム再構築プロジェクトがこの1月、2009年後半の稼働を目指して本格的にスタートする。この1年間で、東証のシステム部門の何がどう変わったのか。東証が進めてきた取り組みは、2007年問題と闘うすべての企業にとって、解決のヒントとなるに違いない。

(大和田 尚孝、今井 俊之)

ガバナンスを取り戻せ
シンプルで強靱なシステムを作る
必要なコストは削らない


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ1月8日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 ロードモジュールの登録ミスによる全銘柄売買停止、みずほ証券の誤発注を取り消せなかった不具合が発覚、株式売買の急増に能力増強が追いつかず取引時間を短縮――。2005年11月以降、情報システムを巡るトラブルで信用を大きく損なった東京証券取引所。その東証による売買システムの全面再構築プロジェクトがこの1月、2009年後半の稼働を目指して本格的にスタートする。

図●東証で過去10年に起きた売買系システムの障害
 この1年間で、東証のシステム部門の何がどう変わったのか。次世代システムの開発体制は、周囲の不安を払拭できるのか。それらを検証するのが、この特集の狙いである。

 一連のトラブルの根本原因は、システム部門の弱体化にある。東証は旧経営陣によるITの軽視によって、(1)開発・運用の完全な外部委託、(2)業務部門ごとの縦割りによるシステムの個別最適化、(3)システム投資の行き過ぎた削減、という問題を抱えていたのである。

 ITガバナンス復活への取り組みは、2006年2月にCIO(最高情報責任者)として迎え入れた鈴木義伯常務を中心に進めた。まず、開発プロジェクトの進め方やベンダーとの役割分担を抜本的に見直した。次世代システムの構築では、証券会社を巻き込んでシステムの肥大化につながる複雑な売買ルールを簡素化。証券業務まで踏み込んで、あるべきシステム像を検討した。ベンダー選定では、RFP(提案依頼書)の作成を外部に任せず、自前でこなしている。

 カネも投じる覚悟だ。2006年度からの3年間で620億円のIT投資を計画。2001年度からの3年間と比べて4倍以上に増やす。東証の西室泰三社長は「稼働時点で世界最先端のシステムを作る」と宣言。公開入札で国内外のITベンダーから提案を募り、昨年12月にベンダーを決定した。

 東証が抱えていた問題とその対策は、まさに「ITの西暦2007年問題」に当てはまる。2007年問題とは、狭義には団塊世代の大量退職によるITスキルの喪失を指す。広義には、経営とITの断絶が、業務とITが分かる人材の不足、システムのブラックボックス化、システム部門の士気低下などを招き、結果的にシステム障害など経営を揺るがす様々な問題を引き起こす現象を意味する。

 東証の挑戦は、2007年問題と闘うすべての企業にとって解決のヒントとなるに違いない。2007年を迎えた今、東証の次世代システム開発への取り組みを見ながら、2007年問題解決の方策を探る。


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