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富士通は5月14日、運用・保守サービスの提供形態を一新する。これまで事業部やユーザー企業ごとに異なっていた作業内容や用語を全社で統一し、あいまいな契約のままでのサービス提供を撤廃する。顧客との責任範囲を明確にするのが狙いだ。


本記事は日経コンピュータ 2007年5月14日号に掲載予定のレポートより、本文のみを抜き出したものです。そのため図や表が割愛されていることをご了承ください。

 富士通が新たに投入する運用・保守サービスは、昨年10月に作成した「インフラ最適化システムモデル」に則ったもの。「アプリ保守」「トラブル対応」といった5つの運用モデルと、そのそれぞれに6段階のレベルに分けた作業内容を定義した(図)。

 これら30の作業パターンは、富士通が持つ3000の事例から導き出したもの。例えば「システム運用管理」モデルの場合、最も低い「レベル0」は、手順書もなく対応がすべて属人化している状況。中間の「レベル3」は、運用手順に沿ってサーバーなどを監視する。「レベル5」になると、管理内容をより細分化・高度化するほか、ユーザー部門に提供するサービス内容についてSLA(サービス・レベル契約)を締結する。

 パターン作成に先立ち富士通は、これまでは公共や製造、金融といった事業部の別や、ユーザーごとにばらばらだった運用・保守の作業項目を6カテゴリ139項目に整理・統合した。

 「統合管理」「運用管理」「業務運用」「システム運用」「アプリ保守」「システム保守」の各カテゴリにおいては、実際にどんなツールを使い、どんな作業を実施するのかと、その料金までを定義。社内用語も統一した。インフラ最適化システムモデルの30のパターンは、これら139の作業項目を富士通が選択・組み合わせたものである。

 年間の運用サービスの契約金額が3000万円以上の大口顧客に向けては、139の作業項目から必要なものを選択して組み合わせるカスタマイズ型の「運用・保守総合モデル」も用意する。

 今回、富士通が運用・保守サービスの提供形態を一新したきっかけは、05年11月に東京証券取引所で起きたシステム障害。富士通が同月から実施した「緊急点検」により、「契約や役割分担、作業の承認フローがあいまい」「作業手順や作業履歴が文書化されていない」など、運用・保守サービスにおける多くの課題が浮かび上がってきた。

 作業項目の全社統一が顧客に与えるメリットについて、上嶋裕和 経営執行役公共ソリューションビジネスグループ官公庁ソリューション事業本部副本部長は、「平常時とトラブル時のそれぞれで実施しなければならない作業内容や手順が明確になった。結果、無駄な運用を省けるし、トラブル解決のスピードも上がる」と説明する。

 だが富士通にすれば、現場の技術者が契約なしに提供してきた無償サービスを排除するという、事実上の決別宣言だ。無償サービスは、同社の収益を圧迫するばかりでなく、“善意”の作業が場合によってはシステム障害を引き起こし、損害賠償など大きな問題に発展しかねない。同社は今後、公共分野を皮切りに、製造、金融などすべての顧客を対象に、数年をかけて新サービスへの契約切り替えを迫る。

 あいまいな契約で運用サービスを利用してきたユーザー企業にすれば、受けるサービスが料金に見合っているかどうかを判断できるだけの力量が求められることになる。

(井上 英明)