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インターネット経由のサービスでアプリケーションを利用するSaaSの導入企業が確実に増えている。損害保険ジャパンは、SaaSを戦略的プラットフォームとして16業務に採用。人事やERPにまで使う企業も現れた。併せてSaaS先進国である米国の最新動向を現地取材でお届けする。

(安東 一真)

スピード感がまるで違う
米国現地報告 - 調達、人事、ERPもサービスに
見えてきた導入の留意点


【無料】サンプル版を差し上げます本記事は日経コンピュータ11月12日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集1」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 2007年11月現在、損害保険ジャパン(損保ジャパン)ではグループで合計5000人の社員が16の業務について、セールスフォース・ドットコムのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)アプリケーションを利用している。日本郵政グループでも、4万人以上がセールスフォースを使い始めた。

 これら2社だけではない。システムを自社で持たず、インターネット経由のサービスとして利用するSaaSは確実に広まりつつある。

 この傾向は、ガートナージャパンが07年6~8月に実施したアンケートからも明らかだ。国内企業3500社に、手作りとパッケージ・ソフト、SaaSの3つについて、今後のシステム開発でどれを選ぶかについて聞いたところ、SaaSの割合が3年ごとにほぼ2倍に増えるという結果が出た(有効回答数は411社)。これに対して手作りは同期間に1割ずつ減少し、パッケージも微増するにすぎない。

 SaaSの最大の魅力は「開発のスピードが革新的に向上すること。決して大げさではない」(損保ジャパンの柱本裕IT企画部課長)。しかもSaaSは「すぐに導入でき、ダメならすぐにやめられる」(郵便局会社の松波栄治システム企画部企画役)。

 特に導入が進んでいるのはCRM(顧客情報管理)をはじめとしたフロント業務にかかわるシステムだ。SaaS先進国ともいえる米国では、人事管理のサクセスファクターズやワークデイ、調達業務のリアーデン・コマースなどが利用企業を増やしつつある。日本でも活動しているネットスイートのように、ERP(統合基幹業務システム)パッケージを提供するベンダーも現れた。

 07年末にもSaaSビジネスを本格化させる方針である富士通の五十嵐司マーケティング本部企画部部長は「米国の状況は来年度以降、確実に日本にもやってくる」と断言する。普及し始めたSaaSの実力を探った。

スピード感がまるで違う

 2007年4月、損保ジャパンは1つのシステムを稼働させた。このシステムの開発案件がIT企画室に持ちかけられたのは1カ月前の3月のことだ。

 内容は、4月以降に満期になる自動車保険や火災保険を更新する際、対象物件の査定や契約内容が適切かどうかを確認するというもの。各代理店が契約した保険のなかで内容に問題があるものを各支社がシステムに登録し、対応の履歴を記録する。

 損保ジャパンは全国5万7400の代理店、516の支社を抱える。表計算ソフトなどで対応の進捗を管理するのは事実上不可能だ。

 そこで活用したのが、セールスフォース・ドットコムがSaaSとして提供するCRM(顧客情報管理)サービスのSalesforceである。

 現場部門とシステム部門の担当者が1室に集まり、システム化する業務の流れをホワイトボードに書き込みながら整理。その場で試用版のSalesforceを使って、画面をカスタマイズし、実際に使用感を試しながら業務のフローを確認していった。

 損保ジャパンの柱本IT企画部課長は「決裁権限を持つ担当者がいれば、8割の作業が終わる。現場部門が実際にシステムを使いながら議論するので手戻りもほとんどなかった」と話す。

 フローの詳細をシステムに盛り込んだ後、IT企画部が1~2日をかけてテスト。本社や各支社などの約1700人が利用する新システムは、1カ月どころか2週間で完成した。「こんなスピード感は、従来のパッケージ・ソフトでは考えられない」と柱本課長は強調する。

 損保ジャパンがセールスフォースを戦略的プラットフォームと位置付け、本格活用し始めたのは05年4月のことである。迅速にサービスを開始できるだけではない。現場でのカスタマイズの容易さや運用管理が不要であること、初期利用コストの安さ、すぐに利用をやめられる点などを評価した。

 戦略プラットフォームとして最初に利用を開始し、現在も日々改善しているのが、Webサイトや各種広告などに対してコールセンターへ問い合わせてきた見込み客を代理店に紹介し、対応状況を支社もチェックする仕組みだ()。柱本課長は「もしパッケージで同じものを作ろうとすると、3年間でTCO(総所有費用)が5億円といった試算になった。SaaSのほうがコストも抑えられる」と話す。

図●損保ジャパンはセールスフォースを戦略的プラットフォームとして活用
図●損保ジャパンはセールスフォースを戦略的プラットフォームとして活用

ベンダーにシステム改善を要求

 もう1つ損保ジャパンが評価しているのが「ベンダーと直接交渉して、サービスを改善できること」(システム子会社の損保ジャパン・システムソリューションの井戸潔社長)だ。

 損保ジャパンは、セールスフォースに対して、利用者の立場から改善を求めるプロジェクトを06年1月に立ち上げた。井戸社長は「サービスを使い始めた当初は色々と問題があったが、交渉を続けて逐一改善できた」という。

 その好例が、損保ジャパンが頭を悩ませていた「土曜日の午後にいつも発生する細かいトラブル」(井戸社長)の解決である。損保ジャパンはこの問題の原因が、米国の金曜日の深夜、つまり日本時間の土曜日の午後、セールスフォースがシステムのバージョンアップやパッチの適用を実行しているためではないかと推測した。

 セールスフォースに、米国向けのシステムと、日本向けのシステムを切り分け、バージョンアップなどのタイミングを変更できないかと提案した。同社はこれを受け入れ、米国向け、欧州向け、アジア向けと3種類のシステムを06年に用意するようになったという。

 このほかにも損保ジャパン・システムソリューションは多くの要求を実現させた。米国のデータセンターとつながるISP(インターネット接続事業者)を明確にしてネットワーク障害を切り分けやすくする、障害情報の公開範囲を拡大するなどである。


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