性能を抑えた小型・低価格ノートパソコン「ネットブック」が普及に向けた転換点を迎えている。一般消費者向けから、景気後退で低価格志向が強まっている企業向けにも販路が拡大している。ネットブックが利用者層の拡大に向けた分岐点を迎える今、各社が提供するネットブックを徹底検証した。
(山端 宏実)

急速な景気後退を受けてIT投資削減を急ぐ企業がネットブックの導入を検討し始めている。


8月に日経コンピュータが企画・実施したIT投資DI(ディフュージョンインデックス)調査では、全体の55.1%(172社)が「ネットブックは業務での利用に適している可能性がある」と回答した(図1)。実際に業務でネットブックを使用している企業が2.6%(8社)にとどまることを考えれば、今後導入が一気に進むことがデータ面からも予想される(図2)。
商機とみたメーカーは今春から企業向けモデルを投入。アスース・ジャパンは4月、OSに「Windows Vista Business」を搭載した法人向けネットブック「Eee PC 1000H Business」を発売し、法人市場に本格参入した。同機種は今年5月の時点で、すでにアスース・ジャパンのノートパソコンの販売台数の2割を占めた。NTTドコモなどNTTグループに採用されたほか、日本生活共同組合連合会も導入を検討しているという。
日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は8月27日に法人向けネットブック「HP Mini 5101 Notebook PC」の受注を開始した。CPUはネットブック向けプロセサの上位版Atom N280(動作周波数1.66GHz)で、OSは「Windows XP Professional SP3」を搭載。9月上旬には通信モジュールを標準搭載した中堅・中小企業向けネットブックを発売する。価格は6万円程度に抑える考えだ。
さらに4月以降、「進化系ネットブック」と呼ばれる新たなカテゴリが登場した。米インテルが開発した消費者向け超低電圧(CULV)プロセサを搭載した8万円前後で買える高機能な超薄型ノートパソコンだ。高機能だが高額な既存のノートパソコンと、安価だが省機能の「ネットブック」のすき間を狙う製品として、今後急速に需要が拡大する可能性を秘める。
需要に合わせて「ネットブック」の機能や位置づけも変わりつつある。各社が提供するネットブックを法人向け、一般消費者向けに分け、その使い勝手や傾向を検証した。
法人向け
バッテリー駆動時間に難
法人向けネットブックを提供しているのは日本HPとアスース・ジャパン。それぞれ法人向けモデルとして「HP Mini 5101 Notebook PC」「Eee PC 1000H Business」を用意している(以下、「HP Mini 5101 Notebook PC」を「HP Mini」「Eee PC 1000H Business」を「Eee PC」と表記する)。
法人向けと一般消費者向けの決定的な違いは搭載OSにある。法人向けは「Windows XP」の上位版である「Professional」、もしくは「Windows Vista」の上位版「Business」を標準搭載しており、ドメインへの参加やドメイン管理機能、リモートデスクトップ、暗号化ファイルシステムなどを備える。価格は、HP MiniとEee PCはそれぞれ6万9930円、4万7800円だ。価格を除き、DI調査でも注目度の高かった処理性能、バッテリー駆動時間、大きさ・重さ、使いやすさ、セキュリティの5項目について両者を比較した。
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