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「国内外のグループ会社全体の業務システムを統一することで、大きな経営効果を生み出す」──。こう決意し、グローバル統一システムの構築に挑戦している企業は実在する。もう先送りは許されない。

(島田 優子)


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 世界約90カ国、約250拠点にまたがる約4000人の従業員が、同一の基幹系システムを利用している企業がある。アプリケーションは600種類以上、帳票類が800以上、そしてEDI(電子データ交換)の接続先は約6000社という巨大システムである。業務データはリアルタイムに更新。さらにシステムの操作画面やマニュアル類などはすべて英語である──。

 このシステムを利用しているのは、海運大手の商船三井だ。同社の連結売上高の34%(約6340億円)を占めるコンテナ船事業を管理する定航部は、海外拠点のグループ会社のシステムを統一している。

 システムの名称は「STARNET」である。荷物の積載や引渡しの証明書である「船荷証券」の発行や、顧客からの依頼に基づく貨物船の手配、貨物船に積載するコンテナの管理といった業務を支える。

 STARNETの導入にあたり、商船三井はデータ項目やデータの入力タイミングを世界で統一し、業務データの精度を向上させた。STARNETを利用することで、顧客の荷物の運搬に必要なコンテナの手配業務が円滑になり、顧客の荷物の配送状況も適宜把握できる。

 「世界で業務プロセスとそれを支える業務システムを統一したことで、国内外で顧客サービスのレベルが向上した。海外拠点の受注状況や経営状態を瞬時に把握できるようになったことで、意思決定スピードも上がり、具体的な改善策を打ちやすくなった」。商船三井の金田和久定航部部長代理は、STARNETの導入効果をこう語る。

 世界で業務プロセスやシステムが同じなので、J-SOX(日本版SOX法)にも迅速に対応できた。「ドキュメント管理の体制を見直したぐらいで、システムの改修作業はほとんど発生しなかった」(金田部長代理)。

 現在は、STARNETのインフラ部分を見直している。データベースサーバーを統合し、アプリケーションや稼働プラットフォームなどを統一するのである。2010年1月にも、米国向けと米国以外の地域向けの2カ所に分散させていたSTARNET用のデータベースサーバーを米国内に集約する。

グループ統一は避けて通れない

 「国内外のグループ企業で基幹系システムを統一する」。このことは、企業の情報システム部門にとって長年のテーマだった。

 グローバル統一システムを構築すれば、国内外を問わず、グループ全体が一つの企業のように振る舞える環境が整うからだ。拠点ごとに個別最適なシステムを保持しているよりも、人材を機動的に配置できる。

 昨今の世界恐慌のように、今後も経営環境はめまぐるしく変化する。これに迅速に対応するためにも、グローバル統一システムを整え、本社がリアルタイムに各国の経営状況を把握し、的確な指示が出せるようにすることが欠かせない。

 法制度への対応能力を高めるためにも、グローバル統一システムが必要だ。各国ごとにシステムを個別に構築しているのに比べ、法規制に対応するためのシステム関連作業の手間を省けるからだ。早ければ2015年にも適用が見込まれるIFRS(国際会計基準)だけでなく、環境や貿易など様々な分野で新たな制度が出てくる()。これに備えておくべきだ。

図●グローバル統一システムを構築すべき理由
図●グローバル統一システムを構築すべき理由
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 グローバル統一システムの構築は急務だ。国内市場が縮小するなか、日本企業は海外進出を進めざるを得ない。日本経済新聞の調査によると、世界経済が悪化する前の2008年3月期決算において、上場している日本の製造業の海外売上高比率は45%に達した。

 ところが、世界でシステムを統一しているところはまだ少ない。「日本企業は、特に海外企業を統治する力が弱く、グループ全体でシステムを統一できているところはほとんどない」。アビームコンサルティングの原市郎プリンシパルはこう指摘する。


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