本誌調査に回答した情報システム部長やCIO(最高経営責任者)が寄せた「2010年の決意表明」を紹介する。先が見えない経済環境を「新たな常態(ニューノーマル)」として受け入れ、情報化投資をむやみに増やさない前提で戦略を立て直す。やるべきは「儲かる(業績に貢献する)システム」を創ること。過去の成功体験を捨て、新しい1年をスタートしたい――。これが決意表明の基調だ。250社の回答と先進15社に対する取材結果を基に、ニューノーマルを生き抜く情報化戦略を明らかにする。
(目次 康男)
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「儲かる」仕組みを創ろう
2010年、日本企業の情報化投資はどうなるのか。2009年12月上旬に、システム部長やCIO(最高情報責任者)を対象に実施した「景況・IT投資動向調査」の結果によれば、回答を寄せた250社中、6割の企業が2010年度も前年度並みの予算を確保する見込みだ(図)。6割の内訳は、情報化投資を「(前年より)増やす」が27.6%、「前年並み」が34.4%である。
一方、「減らす」と答えた企業の割合は37.6%であった。だが、決意表明を読む限り、減らす企業といえども、システム開発と並行して業務改革を推進するなど、情報システムを経営に生かす努力を重ねている。調査開始日に1ドル84円台を記録した急激な円高の影響を考慮しても、日本企業における2010年度の情報化投資は、前年度並みで推移すると考えてよさそうだ。
現在の状況が“常態”に
調査に加え、有力企業各社の情報化戦略について取材を進めていくと、一つの言葉が浮かび上がってきた。「ニューノーマル」である。「新しい常態、新しい普通、新しい常識」を意味する。
この言葉を広めたのは、「世界経済がリーマンショックから回復した時、危機前の姿に戻るのではなく、全く別物になっている」と語った米債券運用大手ピムコのモハメド・エラリアンCEO(最高経営責任者)だと言われる。2009年11月に来日したマイクロソフトのスティーブ・バルバーCEOも「ニューノーマルの今、さらなるビジネスの効率性が求められる」と話していた。
世界経済全体がV字回復することはなく、局所的かつ短期的に回復と後退が繰り返される。変化は突然どこかで起き、一気に世界に広がる。先行きを見通すことはできない。企業が置かれている現状こそが常態だ。これがニューノーマルである。
だとすれば、企業の情報化戦略や情報化投資に対する考え方を次のように変えていかなければならない。
●右肩上がりの経済を前提にした大規模な情報化投資はなかなかできない。小さい投資を重ねて、迅速に開発していく。●外的変化(技術やITベンダーの事業戦略など)は突然起きる。影響をもろに受けないシステム設計や開発・運用体制が不可欠になる
これが情報化投資におけるニューノーマルである。本特集で紹介するセイコーエプソンやリコー、オリンパスや良品計画、コマツや小林製薬といった企業は、情報化投資を現状維持もしくは削減する一方、予期せぬ変化に対応できるシステム基盤を整備する取り組みを進めている。
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