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IFRS(国際会計基準)への対応が喫緊の課題として浮上してきた。2010年度、多くの企業が本格的にIFRS対応に着手する。IFRS対応を機に競争力の強化を目指すのか、制度対応を優先するのかで、目指すシステムの姿は大きく異なる。システム部門の決断が、IFRS対応全体に大きな影響を与える。IFRS適用後の企業経営を左右すると言っても過言ではない。

(島田 優子)

◆ネスレ、12年目の決断
◆残り「3年」を生かせ
◆基幹システム、三つの選択肢


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 グループ全体売上高は9兆2800億円(2009年12月期)、社員数は28万人。世界100カ国以上に拠点を持つ─。これだけの規模で、精密に月次で経営状況を把握している企業がある。スイスに本社を置くネスレだ。コーヒーのネスカフェをはじめ、チョコレートのキットカットや、麦芽飲料のミロなど強いブランド力を持つ超大企業である。

グローバル統一システムを構築

 ネスレが月次で把握しているのは、商品別、事業別、地域別の売上高や利益、費用のほか、予算と実績の差異分析や最終的な損益予想に関する世界の状況である。同一の数値に基づいて財務諸表と社内管理を実施しており、社内管理の数値をそのまま社外に公表できる。月次決算や予測の基礎となるデータは、ほぼリアルタイムで収集する。グローバル経営の“理想”ともいえる。

 「グループ全体でIFRS(国際会計基準)という一つの物差しを基準にしている。その上でグローバルに統一した情報システムを整備した。これが決定的に経営を変えた」。ネスレ日本 財務管理本部の細見安男会計部長はそう強調する。

 ネスレのグローバル統一システムの名称は「GLOBE(グローバル・ビジネス・エクセレンス)」。会計や販売、SCM(サプライチェーンマネジメント)、人事といった業務アプリケーションに加え、勘定科目や顧客、製品のマスターデータを世界で統一している。

 ネスレはGLOBEの導入を決断する12年前に、グループの会計基準としてIFRSを採用した。1989年のことだ。ネスレがGLOBEの構築プロジェクトに着手したのは2001年。その後、業務プロセスの標準化やシステムの開発を経て、ネスレ日本がGLOBEを導入したのは2007年のことだ。

 IFRSをより生かした経営に転換するには、どうすればよいか。IFRSの適用から12年後に出した答えがGLOBEの構築だった。

以前は膨大なドキュメントと格闘

 GLOBEの導入により、ネスレ日本など現地法人の業務も大きく変わった。ネスレ日本は2007年まで一般的な日本企業と同様に、手間をかけて決算書類を作成していた。

 本社はIFRSを採用していたものの、ネスレ日本をはじめとする現地法人は、各国の会計基準で取引データを収集しており、IFRSに基づくデータに変換してから本社に報告する必要があった。ネスレ日本は決算作業に表計算ソフトを利用し、本社向けの財務報告書を作成していた。

 データ変換作業のために本社が用意したドキュメントは700ページに及ぶ。グループ全体における会計処理の原則を示した「ネスレ アカウンティングスタンダード」が400ページ、IFRSによる会計処理を説明した「ネスレ インターナルバランスシート」が300ページである。

 IFRSは基本的な考え方のみを示し、会計処理の詳細は決めない「原則主義」を採用している。詳細な会計処理はIFRSに対応する企業自身が考える必要がある。ドキュメントはどうしても大量にならざるを得ない。このため「担当者の負担が重く、現場で混乱も起きていた。2000年に入ってから月次決算は実施していたものの、精度は高くない」(細見部長)状態が続いた。

 こうした状況が2007年に一変する。GLOBEの導入により、これまで会計部の担当者が手作業で進めていたデータ変換作業がなくなり、担当者の負荷は大幅に軽減した。作業の自動化により、データの精度も上がった。

図●ネスレは世界各国の経営管理を強化するために、グループ全体で基幹系システムを統一した
図●ネスレは世界各国の経営管理を強化するために、グループ全体で基幹系システムを統一した
複数の会計基準に基づいた処理を実現する「複数帳簿」機能を導入し、IFRSに基づいたデータをすぐに本社で入手可能にした
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