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現状のクラウドコンピューティングは過渡期にすぎない。クラウドはやがて、業務とのつながりを深め、様々なデバイスと融合し、社会に不可欠なインフラとなる。いわばクラウド+(プラス)へと進化していくわけだ。クラウド+の時代には、海外の企業に後れを取っていた日本のIT企業にとっての好機が訪れる。

(マッキンゼー・アンド・カンパニー 萩平 和巳BTO 日本共同代表、
吉本 貴志マネジャー、田中 宏隆マネジャー、高橋 友紀コンサルタント)


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 クラウドコンピューティングには様々な領域が存在する()。今のところは、パブリッククラウドやクラウド管理の領域を中心に、外資系の専業事業者や新興企業が攻勢をかけているように見える。

図●クラウドコンピューティングのスタックとサービスの範囲
図●クラウドコンピューティングのスタックとサービスの範囲
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 多くの企業に期待されているにもかかわらず、迎え撃つ大手国産IT企業は、クラウドで何を目指すかという具体的なメッセージをまだ明確には発信していない。

 たとえメッセージを発信しているとしても、市場で幅広く認知されるには至っていない。新聞や雑誌などが、クラウド専任部隊チームの設立や人員拡大、あるいはデータセンターの設立などを報道しているだけだ。

 だが今後、クラウドの活用が進み、複数のクラウドを連携させるインタークラウド/ハイブリッドクラウドが重要になるにつれ、国産IT企業の存在感は高まると筆者は考えている。

クラウド+に三つの方向

 クラウドは今後、クラウド+(プラス)と筆者が呼ぶ、新たな次元に突入する。クラウド+は社会に大きなインパクトをもたらすだけでなく、日本企業に絶好の機会を生み出す。クラウドに関しては、これまで米国を追いかける格好になっていたが、クラウド+の時代になれば、日本が世界を先行し得る。

 クラウド+には三つの方向がある。具体的には、a. 提供する業務サービスの深化による企業の海外展開の支援、b. デバイスとの融合を通じた人間中心の社会の進展、c. 業種クラウド間の連携とセンサーネットワークなどとの融合が実現する社会インフラ化である。

 業務面の深化は、海外市場へのシフトを進める日本企業が、現地業務の展開を加速し、製造業であれば品質や生産性を向上させ、さらにはガバナンスの強化に寄与する。デバイスとの融合は、製品からサービスへの付加価値の源泉がシフトするなかで、収益力の維持に悩むハイテク製造業などに新たな収益源をもたらす。

 デバイスとの融合と相まった社会インフラ化は、地理的条件や時間、利用する機器、業種といった様々な制約から人間を解放する。一人ひとりの人間の可能性や生産性が高まる「next generation humanity」とでも呼ぶべき時代が到来すれば、少子高齢化と人口減少が同時に進行する日本社会に貢献できるだろう。

 クラウド+を世界に先駆けて実現するには、1社だけでなく多くの企業が継続して収益を上げることのできる“生態系”を、いかに作り上げるかが重要である。生態系作りが不得手といわれるが、日本企業はなんとしてもこの問題を克服する必要がある。

大手企業はコモディティ業務から

 マッキンゼーは、2006年から全世界でクラウドの分析に取り組んでおり、09年には日本法人が独自に調査・検討を実施した。延べ数十人に上る大企業のCIO(最高情報責任者)やITにかかわるキーパーソンとの議論、数十社の中堅・中小企業へのインタビュー、さらには数百社に対するWeb調査などである。その結果、クラウド導入に対する企業の意識は、企業規模や対象業務によって異なることが分かった。

 企業規模別に見ると、年商が1000億円以上の大企業は、パブリッククラウドのセキュリティやSLA(サービス・レベル・アグリーメント)、サポート面に強い懸念を持つのが特徴だ。現時点では、商品情報などデータを外部に置けるコモディティー業務(例:CRM、顧客関係管理)のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)化、あるいはプライベートクラウドの構築を中心に、導入もしくは導入の検討を始めているところだ。

 大企業に比べIT投資余力や運用力が低い数百億円規模の準大手企業は、パブリッククラウドの利用を積極的に考えている。数十億円規模の中堅企業も、クラウドの利用で恩恵をこうむるはずだが、ITリテラシーが低いためか、現時点で準大企業ほどはクラウド利用の意向が高くない。

 数億円規模の中小企業は、大規模なIT投資を実行する機会が少ない。中小企業向けパッケージソフトを、取引のある近隣のIT企業に依頼するか、自力で導入するのが一般的だ。クラウドへのニーズは低いといえる。


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