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 「安定稼働しているにもかかわらず、ソフトウエアメーカーの都合でバージョンアップするのは嫌だ。できればやりたくない」。ユーザー企業のシステム部長の本音はこうだが、実際には避けられないケースが多い。気が乗らない作業は、少しでも手際よく終わらせたい。

 バージョンアップを賢く乗り切るコツは何か。これを探るため、本誌はユーザー企業33社に取材を敢行。最新のWindows 7をはじめ、Officeやオラクル製データベース、SAP製ERP(統合基幹業務システム)パッケージなど主要ソフトのバージョンアップに取り組んだ事例に迫った。

 「既存の業務アプリケーションを新版で動かすための検証・改修作業量を5分の1に」「古いパソコンを生かして5000万円節約」「作業の一部を自社で手掛け、当初見積額の3分の2で作業を完了」。ちょっとした工夫で効果を出しているところはいくつもある。

 バージョンアップは、もう怖くない。先行企業のノウハウを知り、より安く・早く・楽に乗り切ろう。

(中井 奨)

◆クライアントソフト編
  検証・改修の効率化に照準
◆サーバーソフト編
  「自力」「独自」が成功の鍵
◆「バージョンアップしない」を貫く


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ4月14日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

クライアントソフト編
検証・改修の効率化に照準

 クライアントソフトのバージョンアップは、パソコンの台数が多いほど面倒だ。特に手間がかかるのが、パソコンで動かしている業務アプリケーションを新しいOSやオフィスソフトでも正常に動作するかどうかを検証したり、改修したりする作業である。

 これらを効率よく進めるには、ポイントがある。最新版にこだわらない、検証対象を絞り込む、改修の優先順位を付ける、仮想化技術で回避策を作る、といった方策がそうだ。

最新版にこだわる必要などない

 バージョンアップというと、最新版に移行することを前提に物事を考えるかもしれない。これは間違いである。

 最新版に固執せず、セキュリティパッチが無償で提供される保守サポート期間を見て、比較的新しいバージョンを選択するのが得策だ。つまり、「保守サポート期間が3~5年残っていれば、最新版ではなく一つか二つ前のバージョンを選択する」ということだ。

 資生堂がこの考え方で、オフィスソフトをバージョンアップした。最新版のOffice 2007ではなく、一つ前の世代のOffice 2003を選んだ。

 同社は2008年9月から約3カ月間かけてOffice 2000から2003に移行した。Office 2003の保守サポート期間は2014年4月までなので、移行した時点から5年以上保守サポートを受け続けられる()。

図●WindowsとOfficeのバージョンと保守サポート期間<br>保守サポート期間は、出荷開始からバグ修正対応プログラムやセキュリティパッチの提供が打ち切られるまでの期間を示した
図●WindowsとOfficeのバージョンと保守サポート期間
保守サポート期間は、出荷開始からバグ修正対応プログラムやセキュリティパッチの提供が打ち切られるまでの期間を示した
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 保守サポート期間が5年以上残っていたこと以外にも、Office 2003を選択した理由がある。「Office 2007に移行するとなれば、利用している業務アプリケーションの改修作業に相当な手間がかかる恐れがあった」(資生堂の毛戸一彦情報企画部課長)からだ。

 最新版のOffice 2007へのバージョンアップを検討するため、資生堂はパソコンで動かしている200本以上の業務アプリケーションについて、Office 2007で正常に動くかどうかをチェックした。

 この結果、Office2007に移行する場合、多くの業務アプリケーションを改修する必要があると分かった。これに対し、Office 2003ではそのまま修整せずに動かせるものが多かった。

 残りの保守サポート期間に余裕がある。業務アプリケーションの改修作業の手間があまりかからない。この二つの面から、新たに利用するバージョンを選択するのが得策だ。

不要な業務アプリを見つけて捨てる

 業務アプリケーションの動作検証・改修作業の負荷は、本数に比例して増す。だからこそ、上手に手を抜きたい。ここでは、既存の業務アプリケーションすべてを検証・改修作業の対象にする必要などない、との割り切りが大切である。

 この考え方で、オフィスソフトをOffice 2007にバージョンアップしたのが東京都三鷹市だ。同市は、2009年2月に庁内のパソコンやファイルサーバーなどのシステム更改に伴い、Office 2000もしくは2003を最新版に移行した。

 三鷹市のシステム部門に相当する企画部情報推進室は、約130本の業務アプリケーションについて、各部署に利用実績と開発元を聞き取り調査した。その結果、利用している業務アプリケーションは78本であることが分かったという。

 「利用していない業務アプリケーションは捨てることにし、動作検証作業の対象から外した」。三鷹市企画部情報推進室の佐々木健主事は述べる。

 利用実績がある78本の業務アプリケーションについては、改修作業の必要があるかもしれない。その工数と費用を自力で調べるのは手間がかかるし、見落としが発生してしまう可能性もある。そこで三鷹市の情報推進室は、業務アプリケーションが新版でも動くかどうかの調査を開発元に依頼した。

 ただし、78本の業務アプリケーションの開発元はのべ50社あり、1社ごとに聞くのは手間がかかる。そこで質問表を作成した。

 質問表の内容はこうだ。クライアントの標準ソフトが「Office 2007」「Adobe Acrobat Reader 7.0」「LHA(圧縮解凍ソフト)」という組み合わせであることを前提に、開発した業務アプリケーションが、「標準ソフトでそのまま動くかどうか」「改修作業が必要かどうか」で答えるよう依頼した。

 質問表を開発元に一斉に送付し、2007年11月16日から2週間で回答してもらったという。その後、「改修作業が必要である」と開発元が回答してきた業務アプリケーションに絞って、修整作業を進めた。「クライアント向けの業務アプリケーションは本数が多いだけに、動作確認を自力でやるのは難しい。有償でも開発元に協力してもらう方が効率的だろう」(佐々木主事)。


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