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 従来の情報システム部門でもなく経営企画部門でもない新しい情報化推進部門が続々と登場している。名称は企業により千差万別だが、その役割は米国企業では一般的な「CIOオフィス」そのものだ。経営戦略と情報化戦略を同期させるために、システム開発・運用部門やITベンダー、事業部門と連携しながら、経営改革や業務改革を推進することを専門とする。

 リーマン・ショックから1年半。この間にシステム部門を取り巻く状況は一変した。システム部門はコスト削減部門と化し、開発案件がなかったため経営層や事業部門との距離も離れてしまった。一方でクラウドコンピューティングのような安価で誰でも使える新しいサービスが続々と登場。システム部門が経営戦略に沿った情報化をコントロールできなくなりつつある。IT投資の再開・強化に向けこの現状を改めるため、ユーザー企業は情報化の推進体制を再構築し始めた。

 システム部門改革に着手した20社の事例と、本誌恒例の「景況・IT投資動向調査」を基に、これからの情報化推進を担う「CIOオフィス」の姿を探った。

(目次 康男)

◆情報化推進体制を変える
◆崩壊するITマネジメント
◆改革は器づくりから始める
◆四つの鍵で制御不能を回避
◆反転攻勢の主役はIT部長・課長


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ4月28日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 三井物産では現在、世界規模で基幹系システムを刷新する約200億円規模のプロジェクトが進行中だ。今年8月には世界50拠点、11月には日本本社が新システムに移行する。その後も業務改革と平行して、新システムをグループ会社に展開していく。

 これに先駆けて、同社は2009年1月に情報化の推進体制を大きく変えた。経営層や事業部門との距離感を縮め、迅速かつ的確な情報化を推進できるようにするために、従来のシステム部門を解体。経営戦略に沿った情報化戦略や実行計画を立案する「情報戦略企画室」と、採用技術の選定やプロジェクトマネジメントを担う「IT推進部」を新設した。

 「情報システムは、今や経営や事業と不可分な存在。だからといって、情報システム部門に何でも任せようとすると、中途半端になってしまう」。三井物産でCIO(最高情報責任者)を務める田中誠一代表取締役副社長執行役員は、「本当に経営戦略と情報戦略を同期させるには、それを本業とするしっかりとした器(組織や人材、権限や予算など)を用意することが肝心だ」と強調する。

名ばかり企画部門からの脱却

 実は再編前のシステム部門の名称は「情報戦略企画部」。ところが、業務部門の要望を聞きシステム開発・運用計画を立てる技術部門、というのが実態だった。「正直、“戦略企画”を名乗っていいものかと思っていた」と、当時の情報戦略企画部長、現在はIT推進部長を務める中島透氏は言う。

 新設した情報戦略企画室は、経営企画部内に設置した。それまでの経営企画部には、ITの視点で戦略や実行計画を立案する機能がなかった。「技術部隊であるIT推進部と密接に連携できるため、システムを活用したグループ経営やグローバル経営を推進しやすくなった」と、真野雄司情報戦略企画室長は説明する。

 基幹系システムの刷新と並行して、業務プロセスをグローバルで標準化できたのも、企画に長けた情報戦略企画室と技術に長けたIT推進部が、それぞれの役割を明確にして連携した成果だ。4月からは共同で、3~5年先を見据えたグループ情報戦略や、それを支える技術の検討に着手した。

20社がシステム部門を再編

 三井物産の情報戦略企画室のように、従来の情報システム部門ではない、新しい情報化推進部門が続々と登場している。本誌が調べたところ、この半年間だけで上場企業の20社以上がシステム部門を再編していた()。

表●この半年以内にシステム部門にかかわる機構改革を実施した主な企業
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表●この半年以内にシステム部門にかかわる機構改革を実施した主な企業

 新しい情報化推進部門の名称は企業により千差万別だが、その役割は米国企業では一般的な「CIOオフィス」に近い。

 CIOオフィスをひと言で説明するならば、多忙なCIOの意思決定を支援する頭脳集団だ。主な仕事は戦略立案や調査研究である。世界情勢や金融事情、競合他社の動向や技術変化などを調査・分析し、自社の経営戦略と擦り合わせながら、情報化戦略や実行計画を立案する。そのためだけに、数百人規模のCIOオフィスを抱える米国企業・団体は珍しくない。

 業務部門の要望を聞きながらシステム要件を決めたり、採用する製品を選択したりすることはしない。開発・運用を担当するシステム部門やITベンダーのマネジャーと情報を共有しながら、計画通りに情報化戦略が進んでいるかどうかをチェックしたり、計画を変更すべきか考えたりする。

 米国のCIOオフィスと日本企業の取り組みの異なる点は、組織のトップとなるCIOが不在であるケースが多い点だ。本誌の調べでは、上場企業で専任のCIOが在籍しているのは、わずか1.7%。兼務を含めても15%しかない。CIO不在の場合は、経営層の要望を聞いたり新しい戦略を提言したり、事業部門の担当役員と交渉したりといった本来CIOが担う役割を、こうした新しい情報化推進組織が代替することになる。


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