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 「コンビニで住民票発行」「空港やゴルフ場の利用者にレジャー保険を提案」「台湾からの旅行者向け決済サービス」――。

 業種や国境をまたいで企業や組織が手を組み、ITを駆使して新しいサービスやビジネスモデルを創出した実例である。いずれも、今年に入ってから始まった日本初の取り組みだ。業種や国境を越えて連携する、必要であれば行政機関まで巻き込むという意味で、これらは「異次元コラボレーション」と呼べる。異次元コラボの最前線に迫る。

(山端 宏実)

セブン&アイ、NTTドコモ
 「変化」をチャンスに
北海道銀行、パーク24
 「地の利」を生かす
東急電鉄、ファミリーマート
 「チーム力」で挑む
◆IT部門、活躍の鉄則


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「変化」をチャンスに

 自社だけでは実現できない「さらに便利」な新サービスを、競合他社に先駆けて始めた企業がある。セブン&アイ・ホールディングスとNTTドコモだ。いずれも、企業を取り巻く社会環境の変化やITの進化を好機ととらえたのがポイントである。

セブン&アイ
コンビニで行政サービス

 住民票は役所窓口でなくコンビニで取得する――。ほんの1週間ほど前、行政サービスの常識が変わった。

 これまでの常識を打ち破ったのは、セブン&アイである。同社は5月末、全国1万2700カ所のセブンイレブン店舗で住民票や印鑑登録証明書を発行するサービスを開始した。東京・三鷹市や渋谷区、千葉・市川市などの住民は、全国のセブンイレブン店舗で、住民票などを取得することができる。2011年3月までには、30近くの自治体の住民が、セブン&アイのサービスを使えるようになる予定である。

 新サービスにおける処理の流れはこうだ。セブンイレブン各店の多機能コピー機で住民票発行の操作をすると、該当する自治体の証明書発行システムにその要求メッセージが届く()。同システムは住民票をPDFデータで送信、多機能コピー機がこれを印刷する。セブンイレブン店舗の多機能コピー機と自治体のシステムは、ネットワークを介してつながっている。

図●セブンイレブンで住民票を発行する際の処理の流れ
図●セブンイレブンで住民票を発行する際の処理の流れ
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三つのハードルに直面

 セブン&アイがこのタイミングで新サービスに乗り出したのは、ある「変化」を見越してのことだ。変化とは住民基本台帳カードの活用機運の高まり。政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)は5月11日、「2013年までに国民の50%以上がコンビニなどで行政関連の証明書を入手できるようにする」との目標を発表した。同本部では5年ほど前から、住基カードを活用した行政サービスについて議論してきている。こうした動きを前提に、セブン&アイは2010年を住基カードの「活用元年」と位置付け、準備を進めてきた。

 なぜ同社は住民票発行に目を付けたのか。理由は単純明快。「顧客の要望が大きかったからだ」(佐藤政行執行役員システム企画部 CVSシステム シニアオフィサー)。同社が定期的に実施している顧客1万人へのアンケート調査では、「実現を期待するサービス」の上位の常連が「コンビニでの住民票発行」だった。全回答者の35%に達し、第1位となったこともある。

 住民票の発行サービスを実現できれば、コンビニの利便性をこれまで以上に高められる。来店のついでに商品を購入してもらう機会を増やし、消費者の低価格志向の高まりによる売上高減少の流れを食い止めたいと考えた。

 ATMの設置や宅配便の取次、公共料金の支払いなどを展開してきたセブン&アイにとって、住民票発行は、ぜひものにしたいサービスだった。だが、新サービスに課題は付き物。今回も少なくとも三つのハードルがあった。

 一つめは、自治体との連携が必要になること。二つめは、偽造を防ぐ印刷技術を盛り込めるか。三つめはシステム対応の費用をいかに抑えるかだ。


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