コスト削減を優先するために、システムの稼働率を下げる。素早く利用し始めるために、システムの機能を最小限に抑える──。クラウドサービスを上手に利用するには、何かを優先し何かを割り切る「トレードオフ思考」が不可欠だ。266社の調査結果から、クラウドサービスとの上手な付き合い方を探る。
(目次 康男)

情報化戦略の意思決定者で構成する「景況・IT投資動向調査パネル」と、日経コンピュータが主宰する「システム部長会」の会員に対して、日経コンピュータと日経BPコンサルティングが共同でネット調査を実施した。調査期間は9月16日~24日。ユーザー企業266社(公共・教育機関など17団体含む)から回答を得た。
「どう利用すればよいのか分からない」。これがクラウドコンピューティングに対するCIO(最高情報責任者)やシステム部長の本音だろう。
「早く安くシステムを利用できる」とうたっているクラウドコンピューティングサービス(以下、クラウドサービス)への関心は高い。その一方で、「本当に費用対効果が高いのだろうか」「システム部門として今すぐ取り組むべきテーマなのか」「どこから手を付ければよいのだろうか」といった疑問の声は少なくない。
そこで本誌は独自に、情報化戦略の意思決定者であるCIOやシステム部長などを対象に、「クラウドサービスの利用実態調査」を実施した。ユーザー企業266社(公共・教育機関など17団体含む)の回答結果と、いち早く利用しているユーザー事例を基に、クラウドサービスとの上手な付き合い方を探った。
“割り切り”が肝心
クラウドサービスを賢く利用するためのキーワードは「トレードオフ」である。このことが独自調査を通じて分かった。
「クラウドサービスの利用に関して、『コストを削減するためなら、システムの稼働率が下がっても仕方がない』『システムを素早く利用開始するためには、機能は最小限に絞り込む』といったように、何かを優先するために別の何かを妥協したほうがよいと思うか」と質問したところ、「思う」と「やや思う」を合わせた回答比率は、6割だった(図)。3社に2社はトレードオフが必要だと考えている。
「割り切りが必要」が8割
クラウドサービスを利用している会社と利用していない会社とでは、割り切りの必要性に対する認識度合いが大きく異なる。
クラウドサービスを利用している63社のうち、割り切りが必要だと「思う」と「やや思う」を合わせた回答比率は、約8割(49社)を占めた。クラウドサービスを「1年以内に利用する予定」という会社も傾向は同じで、約8割が割り切りは必要だと「思う」、または「やや思う」と回答した。

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