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 クラウドを支えるコンピュータの理想型が見えてきた。オープンな製品や技術を使い、メーカーが垂直統合方式で組み上げたコンピュータ。本誌はこれを「オープンメインフレーム」と呼ぶ。必要なソフトウエアとハードウエアをメーカーが選び、組み合わせ、検証したコンピュータである。

 満を持して参入したのがオラクルだ。サンを買収して手に入れたハードウエア製品を使い、クラウド専用機「Exalogic」を発表した。ライバルも迎え撃つ準備は万端だ。IBMに、マイクロソフトとヒューレット・パッカード、そしてシスコとEMC、ヴイエムウェアが組んだVCE連合である。

 各社の狙いは、ソフトとハードを一体化して超高性能のコンピュータを作ることと、組み合わせの複雑さから顧客企業を解放することだ。これは顧客企業の問題意識とも合致する。

 クラウドが単なるブームではなくなり、企業の基幹へと入りつつある今、今後のコンピューティングを具現化するのがオープンメインフレームともいえる。米国取材などを基に、クラウド時代のコンピュータ像を追った。

(玉置 亮太、森山 徹)

◆クラウド時代の10年へ進化の第一歩
◆ソフト/ハード一体でしか出来ないことがある
◆終わりなきスタック買収合戦
◆日本もオープンメインフレーム志向へ


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ10月27日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 オープンメインフレームの登場は時代の必然だ。本当に高い処理性能、高い信頼性は、ソフトウエアとハードウエアを個別に調達していてはなし得ない。世界のIT大手は、こう考えた。これから始まるクラウド時代の10年を支えるコンピュータを作る。この目的の下、ハードとソフトを垂直統合した製品開発へと、一斉に乗り出した。

 9月19日、米国サンフランシスコ。オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2010」の基調講演に立ったラリー・エリソンCEO(最高経営責任者)の発言は、時代の大きな変化を象徴していた。「ハードとソフトを組み合わせ、完全にエンジニアリングしたシステムを提供する。顧客企業はもはや、ハードとソフトをバラバラに購入して、組み合わせに苦労する必要はない。これは本来、顧客企業の仕事ではないからだ。製品の選定から設計、チューニング、検証とテストまで、我々に任せてほしい」。

 エリソンCEOが発表した「Exalogic Elastic Cloud」は、「オラクルが考えるクラウドを形にした製品。いわば“Cloud in a Box”だ」。データベース専用機「Exadata」に続く、二つめのハードウエアアプライアンスである。

 その開発手法は、一言で表現すれば垂直統合方式。「自社のサーバー、ネットワーク、ストレージ、仮想化ソフト、OS、ミドルウエアを組み合わせて、すべてが問題なく動作するように設計したシステムだ」(エリソンCEO)。

 オラクルといえば、インターネットバブルがはじける前の1990年代にデータベース製品を大々的に拡販し、水平分業型のシステム構築手法を定着させた中心企業だ。それが今では、水平分業のパートナー企業だったサン・マイクロシステムズを傘下に収め、すっかり垂直統合の推進派に鞍替えした。

次は「マイクロソフト+HP」

 オラクルがExalogicを発表した陰で、もう一つの垂直統合型の製品開発が進行している。マイクロソフトとヒューレット・パッカード(HP)による、システム製品の共同開発プロジェクトだ。「マイクロソフトのソフトとHPのハードを組み合わせて、特定のシナリオ(用途)に最適化したシステムを開発している。次の四半期には、何らかの成果を発表できるだろう」。米マイクロソフトでサーバー製品事業を担当するボブ・ケリー コーポレート副社長は、こう打ち明ける。

 実は両社は今年1月、システム基盤の共同開発に関する提携を発表していた。日本ではほとんど注目されなかった提携だが、その内容は、従来のパートナー関係から踏み込んだものだ。「HPのハードを最も効率よく利用できるよう、マイクロソフトのソフトにチューニングを施す」(ケリー コーポレート副社長)。SQL Serverなどのマイクロソフト製ソフトの処理性能を高めるデバイスドライバーやファームウエアをHPのハードに組み込んだり、専用のシステム管理機能を共同開発。ソフトとハードを一体化したアプライアンスとして提供する。

 「インフラからアプリケーションまで、業界で最も包括的で統合された技術スタックを構築する」。提携発表の声明に並ぶ文言は、オラクルがサンを買収したときのキャッチフレーズ「アプリケーションからディスクまで」に酷似している。

垂直統合が業界を席巻

 ソフトとハードを一体にしたシステム製品開発は、今や米国のIT業界の潮流だ。その勢力は大きく四つ。サンを獲得したオラクル、関係を深めるマイクロソフトとHP、さらにシスコシステムズ、EMC、ヴイエムウェアの3社から成る共同プロジェクト「VCE(Virtual Computing Environment)連合」、そしてIBMである。

 IBMは11月、ハイブリッド型と銘打った新メインフレーム「zEnterprise」の出荷を始める。メインフレームだけでなく、同社のUNIXサーバーやx86サーバー、さらにDB2やWebSphereといった同社製ソフトも一体にして製品化した。同社は以前からメインフレームにオープン技術を取り込んできたが、zEnterpriseはUNIXサーバーのハードをメインフレームに増設し、全体を一元管理できるようにする。垂直統合型のモノ作りを、さらに推し進める。

 VCE連合が取り組むのは、3社の製品を組み合わせたシステム製品の開発だ。成果であるシステム製品「Vblock」は、シスコのブレードサーバーとネットワーク、EMCのストレージ、ヴイエムウェアの仮想化ソフトを一体にした。日本でも、今年2月から販売している。

オープンな製品だから出来る

 四陣営が開発するシステム製品は、「オープンメインフレーム」とも言うべきものだ。アプリケーションを除くインフラ製品を、1社または同一陣営で用意し、一体のものとしてコンピュータを設計、開発する。使っている製品や技術は、ほとんどがオープンシステムのものだ。システム基盤の開発方式として、オープンシステムの「業界標準」とメインフレームの「一体管理」、両者のいいとこ取りを狙った()。

図●「オープンメインフレーム」が登場した経緯<br>オープンシステムのスタック(製品や機能の層)を成すソフトとハードを、メインフレームのようにメーカーが最初から統合して提供する。システム基盤構築の複雑さを解消し、プライベートクラウドの基盤となる製品を実現するのが狙いだ
図●「オープンメインフレーム」が登場した経緯
オープンシステムのスタック(製品や機能の層)を成すソフトとハードを、メインフレームのようにメーカーが最初から統合して提供する。システム基盤構築の複雑さを解消し、プライベートクラウドの基盤となる製品を実現するのが狙いだ
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 プロセッサはx86、OSはLinuxやWindows、ソフトもリレーショナルデータベースやWebアプリケーションサーバー(WAS)などを使う。もちろん各製品はインターネット標準をはじめとする、各種の業界標準に準拠している。これらを使って1社、または同一の企業グループが、製品の選択から製品の設計、開発を一貫して手掛ける。

 各製品をただ組み合わせるだけではない。事前の動作検証はもちろん、処理性能を高める仕組みや管理機能を独自に作り込む。

 オープンメインフレームには、特定ベンダーによる「囲い込み」という懸念もある。ソフトとハードが不可分になっているからだ。ただし、囲い込みが即、顧客企業の不利益になるとは限らない。メインフレーム、オープンシステムに次ぐ、新たな選択肢ととらえるべきだろう。


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