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新型の株式売買システム「arrowhead」を稼働させてから1年、東京証券取引所は同システムとそれを使った新サービスにより、新しい顧客を呼び込み、新たな収益源を得た。東証の取り組みから、最新のITを駆使したビジネスモデル変革の進め方を探る。カギは、「処理性能」「意思決定」「顧客ニーズの反映」という三要素のスピードを速めたことにある。

(吉田 洋平)


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 「この1年で、東証に対する投資家の評価が明らかに変わった」。クレディ・スイス証券の巻口蓉子 株式本部エレクトロニック・トレーディング部長ディレクターはこう指摘する。「今までは東証のことを見向きもしなかった海外のヘッジファンドが、東証に注文を出すようになった」(巻口部長)。

 ヘッジファンドの注文は、株価や出来高に基づき数ミリ秒単位で自動注文する「アルゴリズム取引」が中心だ。取引所の売買システムの処理スピードが遅いと、「投資家はアルゴリズム取引の利点を生かせない」(ドイツ証券の亀井雄也 株式営業統括部エグゼキューションマーケティンググループディレクター)。世界の取引所が売買システムの処理スピードを競っているのは、海外の投資家を市場に呼び込むためだ。

 東証が海外の投資家を呼び込めるようになったのは、2010年1月に株式売買システム「arrowhead」を稼働させたことがきっかけである。注文応答時間を旧システムの約1000倍の2ミリ秒に縮め、さらにそのスピードを生かした新サービスを投入してきたことが奏功した。

 新サービスのうち、「海外の投資家が特に評価しているのはコロケーションサービスだ」(クレディ・スイス証券の巻口部長)。これは、arrowheadを設置している東証のデータセンターのスペースを証券会社に貸し出すサービスである。証券会社は、東証から借りたスペースに発注用のサーバーを置き、そこで投資家から預かった自動発注プログラムを動かす。arrowheadのそばにあるサーバーで自動発注プログラムを動かすことで、発注にかかる時間を最小限にできる。

 東証はarrowheadの稼働と同時に、株式取引を対象にしたコロケーションサービスを開始した。以来、同サービスを利用した注文件数は右肩上がりである。2010年12月時点で、株式売買の全注文件数に占めるコロケーションサービスを利用した注文件数の割合は、1カ月の平均で約30%にまで増えている。

 コロケーションサービスは、東証にとって新たな収入源でもある。これまで手掛けていなかった、データセンターの貸し出しビジネスによる収益を得られるからだ。回線の貸し出しビジネスなどと合わせて、すでに売上高の10%程度の規模に達している。

 東証は、新システムの稼働を機に、新しい顧客と収入源を得た。最新のITを駆使することで、ビジネスモデル変革を果たしたわけだ。東証はどのようにこの変革を成し遂げたのか。ポイントである三つの「スピード」について見ていく。


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