スマートフォンの業務利用を推進することは、今春からシステム部門の重要テーマになる。現時点では電子メールやグループウエアの利用が中心だが、企業システムで本格的に利用するようになるのは時間の問題だ。スマートフォンはPCと並ぶ企業システムの主端末として位置づけられる時期にきている。業務利用を後押しする運用・開発ツールも出揃ってきた。今こそシステム部門は、スマートフォンを自由自在に操れるようになろう。
(福田 崇男)
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通勤電車の車内やビジネス街で周囲を見回してほしい。ビジネスパーソンがスマートフォンで電子メールをチェックしたり、Webサイトで何かを調べていたりする光景を、当たり前のように目にするようになった。
米IDCの調査によれば、2010年10月~12月期のスマートフォンの世界出荷台数は1億900万台でPCを抜いた。日本市場においても、2011年のうちにスマートフォンがPCの出荷台数を抜くとみられている。
企業システムの端末としても、スマートフォンやタブレットPCといった新しい端末は、もはや無視できない存在になってきている。「規則はないものの、事実上、利用を認めている状態だ」「もはや見て見ぬふりはできない」と、ユーザー企業のシステム部長は口を揃える。
日経コンピュータが主宰するシステム部長会の会員に意見を募ったところ、約7割(回答企業は48社)が、スマートフォン/タブレットPCの業務利用を「認めている」または「事実上、認めている」と回答した。
スマートフォンはもう、特別な存在ではない。システム部門はPCと並ぶ企業システムの主端末としてスマートフォンを位置づけ、会社全体で積極的に活用していくことが求められている。
本格導入できる環境が整う
スマートフォンの業務利用について、不安の声があるのも事実である。「セキュリティを保てるか分からない」「PCのように管理できる仕組みはないものか」といった声が、システム部長の多くから寄せられた(図1)。

だが、そういう心配は無用になりつつある。スマートフォンを取り巻く状況が、半年前と大きく変わっているからだ。
具体的には、企業利用におけるノウハウが蓄積されてきたことが大きい。「どういう視点で端末を選択すればよいか」「どういったところにリスクが潜むか」といったことが明らかになってきた。
また、スマートフォンの業務利用を後押しするツールが充実してきた。2010年末から2011年春にかけて、スマートフォン向けの運用・開発ツールが続々と登場しつつある。月額数百円で手軽に利用できるSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)もある。
スマートフォンの業務利用を推進することは、今春からシステム部門の重要テーマになる。スマートフォンを企業で自由自在に操る環境作りのポイントを紹介しよう。
端末は自由度とリスクで選ぶ
スマートフォンを導入するにあたり最初に検討しなければならないことは、アップルのスマートフォン「iPhone」と、グーグルが開発するOS「Android」を搭載したスマートフォンの、どちらを選ぶか、である(図2)。

iPhoneとAndroid端末の特徴を一言で説明すると、「いろいろと制限されているが、その分だけ互換性や安全性が高い」スマートフォンがiPhone、「自由度が高いものの、統制が行き届いていない」のがAndroid端末である。どちらを選ぶかで、システム部門が運用管理をする手間や、アプリケーションを開発するために必要な技術が大きく変わる。
このことは、タブレットPCにも当てはまる。iPadにはiPhoneと同じOSが搭載されている。大画面を備えたAndroid端末も登場しており、やはりユーザー企業が選択すべき道は分かれる。
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