東日本に拠点を置く企業は今夏、大幅な節電に取り組まねばならない。ビジネスへの悪影響を最小限に抑えるべく、今のうちから対策を考えておきたい。対策は主に三つある。目標値のハードルが高いだけに、サーバーやストレージを移設することも視野に入れる必要がある。節電対象期間が始まるとされる6月20日までにどのような対策が可能か、ポイントを探る。
(福田 崇男)

情報システムの大移動が始まった。一部の大手企業が、東京電力や東北電力の管内から西日本や北海道に、IT機器を移設し始めた。
日本生命保険は、関東圏内にあった基幹系システムのバックアップサーバーを、関西地域にあるデータセンターに移設する方針を固めた。本番環境のサーバーは従来から関西地方にあるが、電力不足を懸念し、バックアップシステムの移設を決めた。
健康食品や医薬品を販売するケンコーコムは、5月に一部業務を東京から福岡に一時移転する。自社で運用していたシステムについては、4月からクラウドへの移行を始めた。
これらの企業がそろって懸念する電力不足は、今夏に向けてさらに状況が厳しくなる。東京電力は7月末時点で5500万kW(ワット)まで電力供給力を高める計画だが、それでも需要が供給を上回る見通しだ。猛暑になれば昨年同様、東京電力管内で6000万kW以上の電力が必要になるからだ。
企業にはさらなる節電が求められている。情報システム部門は、電力不足と節電下でも情報システムの利用で混乱が生じないよう、手を打つ必要がある。
企業に厳しい削減義務
具体的な目標値がある。政府の電力需給緊急対策本部は4月8日、今夏の電力需給対策の骨格案を発表した。そのなかで、東京電力管内の企業や一般消費者に対して、6月20日から9月22日の3カ月間における最大使用電力を、昨年比で15~25%削減するよう求めた(図)。

厳しい削減義務を課せられるのは、500kW以上の大口需要家として契約を結んでいる企業だ。電気事業法第27条に基づくものである。違反した場合は、100万円以下の罰金を支払わねばならない。工場を所有する製造業や大きなオフィスビルを持つ企業が、これに該当する。
500kW未満の小口需要家や個人も、15~20%の削減が求められている。ただ、こちらは27条は適用されない見通しだ。このため、どこまで政府の計画通り電力需要を抑制できるかは不透明だ。
その後東京電力が電力供給力を上積みしたことから、目標値が一律「15%」に緩和される可能性が出てきた。大口需要家に27条を適用するかどうかも流動的だ。
15%になったとしても、企業が大幅な電力削減を強いられることに変わりはない。しかも、節電対象期間は6月20日に始まる見込みだ。準備期間は短い。早急に対策の検討に着手したい。
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