「保守サポート料金を毎年値上げ」「ライセンス料金を2倍に」「保守サポート契約を自動更新」──。
オラクル、SAP、IBM、マイクロソフトといった世界のソフトウエアメーカーが、相次いで保守サポート料金やライセンス料金の改定に動いている。契約形態や利用環境によっては、突然の値上げにつながることがあり、ユーザー企業には見逃せない動きだ。
「単なる値上げではない」と口をそろえるソフトメーカーの狙いは何なのか。ユーザー企業にとって最適な契約形態はどんなものなのか。新年度の予算策定を前に、ソフト料金にかかわる最新事情をお届けする。
(玉置 亮太)
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2011年はソフト料金改定の「当たり年」だ。主要ソフトメーカーが、毎月のように自社製品のライセンス料金や保守サポート料金の契約体系、契約内容などを変更している(表)。小規模な値上げであれば珍しくないが、今年は特に大規模な改定が集中している。
なかでも、最も大きな波紋を呼んでいるのが、日本オラクルにおける保守サポート料金の変更だ。同社はこの11月、保守サポート料金を毎年数%ずつ値上げする新ルールを導入する。同社の保守サポート契約は1年単位だ。年を重ねるに連れて保守サポート料金は右肩上がりとなる。
保守サポート料金の改定に動くのは、日本オラクルだけではない。SAPジャパンも2011年1月から、保守サポートサービス「Enterprise Support」の料金を段階的に引き上げている。値上げは2016年まで続く。
保守サポートの契約更新ルールを見直したのが日本IBMだ。同社は4月、グループウエア「Notes」などの保守サポートについて、1年単位で自動更新する契約形態に変えると発表した。変更するのは2012年2月からだ。それまでは、契約期限の前に更新の意思表示をしないと自動解除となる。新ルールによって、継続的な保守サポートが必要なユーザー企業は便利になる半面、同サービスを打ち切りたいと考える企業には解約手続きの手間が生じる。
ライセンス料金の改定も続く
ソフトのライセンス料金にも、変化が起こっている。日本オラクルは昨年末、米インテルのプロセッサ「Itanium」を搭載した大型サーバー向けのライセンス料金を、2倍に引き上げた。
日本マイクロソフトはこの7月、同社製のソフトとクラウドサービスを併用しやすくするという名目で、ライセンス体系を改定した。さらに企業向けライセンス形態の一つである「ソフトウェア アシュアランス(SA)」の強化も同時に実施した。
狙いは、SAに対するユーザー企業の不満を解消し、導入を促すことにある。SAは同社が2001年に提供を開始したライセンスで、当初は「契約期間内の新バージョン利用権」という位置付けだった。しかしユーザー企業からは必ずしも支持されてこなかった。そこで日本マイクロソフトは、SAで提供するソフトやサービスの充実に10年越しで取り組んでいる。
すれ違う主張
なぜいま、ソフトメーカーは料金の改定に臨むのか。
保守サポート料金については、ソフトメーカーの言い分をまとめると次のようになる。「新バージョンのソフトを開発したり保守サポートのサービス内容を充実したりするためのコストが年々増えており、その一部を転嫁せざるを得なくなった」。
一方、ユーザー企業の声を総合すると、「値上げは受け入れ難い。サービス内容は今のままで結構だから、料金は据え置きか値下げを望む」となる。
例えばソフトメーカー各社の保守サポートサービスには、新バージョンの無償提供というサービスが入っていることが多い。新バージョンが安く入手できる「オトクなサービス」との位置付けだ。しかし「バージョンアップの予定がないから、このサービスは不要」とみなすユーザー企業は少なくない。
変化の実態を知る
ユーザー企業が値上げに不満を持つのは不思議ではない。ただし、ソフトメーカーの営業担当者に文句を言うだけでは、何の解決にもならない。
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