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ビッグデータ活用元年──。2012年は、ITの歴史にこう刻まれることになるだろう。あらゆる企業が、ビッグデータを経営に活用できる舞台が整ったからだ。スマートフォンの普及により情報収集が容易になり、クラウドの進化でデータ分析に必要なITコストが劇的に下がった。では、どこに目をつければビッグデータを上手に活用し、競合に差をつけられるのか。データを「自ら生み出す」、データに「語らせる」、データを「深掘りする」という三つの視点から、先進事例を探ってみよう。

(小笠原 啓)

◆誰もがスタートラインに
◆データを自ら生み出す
◆データが語り出す
◆データを深掘りする


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ2月2日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 京都駅から特急列車で約2時間半。志賀直哉の小説の舞台としても有名な兵庫県北部の城崎温泉で、全国でも珍しいデータ活用の取り組みが進んでいる。FeliCaチップを内蔵したICカードや携帯電話を、外湯の入場券として使えるシステム「ゆめぱ」だ。

 城崎温泉には趣の異なる七つの外湯があり、滞在中にどれだけ入れるかが楽しみの一つ。ゆめぱは、その利便性を高めるものだ。

 使い方は簡単。宿泊客が旅館にチェックインする際、携帯電話やICカードをゆめぱ端末にかざし、利用登録を行う。携帯電話を持って外湯に行き、受付でゆめぱ端末にかざせば、その場で料金を払わずに入浴できる。飲食店などの代金をつけ払いにし、チェックアウト時に精算できる仕組みもある。

 2010年11月の開始から1年が経過し、今では約80軒の旅館ほぼすべてが、ゆめぱに対応。30軒以上の商店でも使える。昨年12月は3万7601人の宿泊客が、延べ9万4364回ゆめぱを利用した。日帰りで利用する人も多い。

 城崎温泉が地域ぐるみでゆめぱを導入した本当の狙いは、宿泊客の行動データを集めることにある。ゆめぱを利用するたびに発生するデータは、常に旅館から見られる。七つの外湯の男女別入浴者数が30分おきに見られるだけでなく、宿泊客がどの店で何を買ったかも把握できる。

 「以前は分からなかった客の動線が見えるようになった。近くの外湯に多くの客が入っていることが分かれば、通り道にある地ビール販売所に従業員を配置するなどして、売上増につなげられる」と、ゆめぱ導入で中心的役割を果たした旅館「山本屋」の経営者、高宮浩之氏は効果を説明する。

データ活用の三つのヒント

 本特集のテーマは「ビッグデータ」である。ここで紹介した事例に違和感を抱く読者もいるかもしれない。しかし、城崎温泉の取り組みからは、企業がこれからビッグデータを活用するうえでの、三つのヒントが見いだせる()。

図●ビッグデータを活用するうえでの三つのヒント
図●ビッグデータを活用するうえでの三つのヒント

 まずは、誰でも「データを自ら生み出す」時代になったことだ。ゆめぱでは、旅館と入浴施設、そして商店にFeliCaの読み取り端末を置くことで、毎月約10万件の利用データが手に入る。しかも、コストは低い。城崎温泉では、初期費用やシステム運用で産業技術総合研究所などの援助を受けたが、2012年度からはゆめぱシステムのサーバー費用などを負担する。その額は年間約400万円。旅館1軒あたり数万円に過ぎない。

 クラウドの普及によりデータ収集と分析の価格が安くなり、通信手段も多様化した。これにより、旧来の企業情報システムの「外側」にある有意なデータを、誰でも収集できるようになった。

 最初はスモールデータであっても、生まれるデータを束ねて分析頻度を高めていけば、データはどんどんビッグになる。こうしたデータを組み合わせれば、次の打ち手を「データに語らせる」こともできる。

 例えば、POS(販売時点情報管理)データを既に持つ流通業では、それを顧客の来店動機のような新たな情報と組み合わせることで、機会損失防止や新商品開発につなげられる。規模こそ小さいが、外湯の混雑状況を把握し、ビールの販売施策を変える高宮氏の手法はまさにそれだ。

 三つめのヒントが、「データを深掘りする」ことだ。現在のゆめぱシステムでは、「男/女」といった単純な属性しか分析していない。居住地など他の属性も含めて精緻に分析できるようになれば、「より多くの顧客を城崎温泉に呼び込める方策を考えられる」と高宮氏は見る。まさに今、注目を浴びているビッグデータ活用の姿である。先進企業は、Webサイトで取得できる顧客の膨大なデータを高頻度に分析し、マーケティングを強化しようとしている。


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