ソフト会社やシステムインテグレータなどにメーカー/通信事業者の満足度を問うパートナー満足度調査。14回目となる今回は、「PCサーバー」「シンクライアントシステム」「統合運用管理ソフト」など、8部門で日立製作所が首位に立った。シスコシステムズの躍進も目立つ。新設した「TV会議/ビジュアルコミュニケーションシステム」で首位だったほか、「ネットワーク機器」でも大きく順位を伸ばした。日立やシスコの勝因はどこにあったのか。調査結果の詳細を報告する。
(吉田 洋平)

「ブランド力で他社と差がある製品や、コモディティー化していて違いを出しづらい製品をどのようにパートナーに売ってもらうか。パートナーの声をできる限り製品に取り入れ、問い合わせ対応などを充実させるしかない」。日立製作所 情報・通信システム社プラットフォームビジネス推進センタの松本和裕センタ長は、こう語る。
シスコシステムズの安斉孝之コマーシャルセクター事業執行役員は、「当社製品に対して、パートナーが『価格競争力が低い』というイメージを持っているのは事実。他の部分で付加価値を提供しなくてはならない」と話す。
第14回となる「パートナー満足度調査」は、どのベンダーの製品や支援体制をパートナーが魅力的に感じているかを調べたもの。ユーザーが製品や販売会社を選ぶ際の参考になる。
今回、日立が8部門で首位を獲得した(図)。前回の5部門から3部門増えただけでなく、前回首位だったシンクライアントシステムやストレージなどの部門でポイントをさらに伸ばした。シスコは、今回新たに設けた「TV会議/ビジュアルコミュニケーションシステム」で首位に立ったほか、「ネットワーク機器」で前回から順位を三つ上げて2位になった。
日立とシスコに共通するのは、自社製品の弱点を認識し、それを関連製品やサービスなどの総合力で補っていることだ。
総合力を発揮する仕組みを整備
「3年前から進めているパートナー支援の取り組みが実を結んだ」。今回の結果について、日立の松本センタ長はこう説明する。その一つが、営業、SE、事業部門による総合力を生かす仕組み作りだ。各製品の営業やSE、工場の担当者などが属するバーチャルな組織を作り、パートナーやユーザーから得られた意見を共有している。
日立はソフトウエアやハードウエアなどの製品ごとにパートナービジネスを担当する部隊を置いている。このため、「担当している製品単体をいかに支援するかに、どうしても目が行きがちになる」(松本センタ長)。
しかし、パートナーは「PCサーバーと統合運用管理ソフト」など、複数の製品を組み合わせてユーザーに提案するケースが多い。「パートナーもユーザーも、製品の組み合わせによって得られる付加価値に魅力を感じる」(同)からだ。バーチャルな組織は、組織間の連携を密にしてこうしたニーズに応えるのが狙いだ。
シスコの安斉執行役員も日立と同様に、「3年前にパートナー向けの施策を変更した。その成果が出てきたと感じる」と話す。シスコが実施したのは、製品の総合力を高めるための施策だ。ネットワーク機器とTV会議システム、データセンターのリソースなどを組み合わせて付加価値を付ける「ソリューション売り」を重視した。
その成果は調査結果に表れている。シスコが上位になった2分野では、優れたソリューションなどをパートナーに提示していることを示す「商材の開発」で他社よりも高いポイントを獲得した。
日立はパートナー支援の取り組みとして、バーチャルな組織の設立のほかに、地方のパートナーやユーザーの声を製品に取り入れる体制の整備も進めた。地方のパートナーの窓口となる担当者を全国に約100人配置したのである。
日立が実施しているもう一つのパートナー支援策は、製品をベータ版の段階でパートナーに使ってもらい、意見を収集することだ。新製品を市場に出す3~6カ月前に、ベータ版を提供する。意見を収集する際は、約100人の担当者が窓口となる。
中小に強い国産勢に安定感
このほかの分野では、中堅・中小市場で高いシェアを持つ国産ベンダーが、安定した強さを見せた。「ネットワーク機器」のヤマハ、「ERPパッケージ」のオービックビジネスコンサルタント、「情報分析・意思決定支援ソフト」のウイングアークテクノロジーズ、「グループウエアソフト」のネオジャパンはいずれも前回に続き、首位の座を守った。
「ネットワークサービス」では、昨年2位だったNTTコミュニケーションズが首位に立った。同社 第五営業本部営業推進部門の杉本栄部門長は、「2011年の震災後、できるだけ信頼性の高いネットワーク商材を使いたいというニーズが高まった。それに応えられたことが、好結果につながったのではないか」と話す。
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