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 日本企業のアジア進出は待ったなし。経済産業省の「企業活動基本調査」では、製造業における海外子会社の保有比率が24.9%と過去最高を記録。国際協力銀行の企業向けアンケートでは、「今後3年程度をメドに事業展開する可能性が高い国」のトップ10にアジアから7つの国・地域がランクインする。今後もアジア市場を目指す日本企業は増え続けるはずだ。
 こうなると遅かれ早かれ、IT部門のアジア対応が必要になる。多くの国や言葉、規制、商習慣が入り交じる多様さがアジアの特徴。この多様性とグローバル標準のバランスを取りながら「アジア最適」のIT戦略を考えられる人材の育成が不可欠だ。
 ベトナム、香港、シンガポール――。沸騰するアジア市場の最前線には、現地の経営陣や事業部門を支えるべく、孤軍奮闘する日本人IT担当者の姿がある。そこには、アジア展開に必須なIT人材を育てるためのヒントが散りばめられている。

(宗像 誠之)

◆アジアで戦うIT人材
◆意思疎通、開拓、現地化が重要
◆「顧客を支える」、IT大手も本腰


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奮闘(1)ファミリーマート
ゼロからのIT環境へ手探り

 おびただしい数のバイクが喧騒のなかで駆け巡るベトナム・ホーチミン市。1台のバイクに、家族総出で3~4人乗りをするのは当たり前。そんな同市の中心部である「District1」の一角にファミリーマートのベトナム第1号店がある(写真)。同店の2階部分が、ファミリーマートと現地企業の合弁であるビナ・ファミリーマートの本部。ベトナムでの出店戦略と業務を統括する“アジア最前線の基地”だ。

写真●ホーチミン市におけるファミリーマートの第1号店
写真●ホーチミン市におけるファミリーマートの第1号店

 第1号店の出店から2年後、2012年1月には18号店目のオープンにこぎ着けた。出店ペースをさらに加速させ、2015年までにホーチミン市で300店まで増やす野心的な計画が着々と進む。それをシステム面から支援するのが、ビナ・ファミリーマートでITを担当するゼネラルマネジャー、佐藤隆雄である。

 「システム導入が間に合わないから出店計画を遅らせるという事態だけは、絶対に避けなければならなかった」。佐藤は、苦闘の日々をこう振り返る。佐藤がベトナムのホーチミン市に赴任したのは、2009年6月のこと。第1号店の出店予定は、同年11~12月だった。

 実質的に半年間も準備期間がないにも関わらず、「店舗運営に必要なIT環境が何もなく、ホーチミンのネット環境なども分からない状態からのスタートだった」。佐藤の奮闘は、このゼロの状態から始まった。

 まず着手したのが、POS(販売時点情報管理)システムの調達だ。現地ですばやく保守できるようにするため、機器やソフトは出店地域で調達することを基本としている。その分、商習慣などが異なる現地ベンダーとの綿密なコミュニケーションが求められる。佐藤はPOSシステム導入の実績を持つベトナムのベンダーを複数コンペさせ、英語で必要な仕様をやり取りしながら絞り込んだ。

 POSの画面は現地ベンダーに頼み込んで現地の人が使いやすい画面デザインを作り上げたが、「要求を文書化してもその通りにならず、何度もやり取りした」。

 受発注や店舗会計などの店舗管理システムについては、「ファミマ・スターター・パック(FSP)」と呼ぶ自社開発のシステムを採用。これは海外での業務立ち上げ時期に使う基本的な業務アプリケーションをまとめ、ネットワーク経由で使えるようにしたものだ。当初は、現地でシステム開発することも検討したが、FSPにベトナム語対応や通貨単位の表示変換など一部を追加開発しても、コストと導入期間でFSPの方がメリットがあると判断した。

 佐藤が特に気を使ったのは、通信環境に不安があるベトナムでのネットワーク構築だ。FSPのサーバーは日本のデータセンターに設置してある。店舗業務を円滑に進めるにはストレスなくネット経由でシステムを使えるようにする必要がある。ただ、「ベトナムのネット環境は、日本ほどブロードバンド化が進んでおらず、しかもよく切れる」。電柱に無造作に束ねてある通信回線を、バスが引っかけて数時間、通信できなくなることも珍しくないという。

 佐藤は、現地の複数の通信会社の通信サービスを調べ上げるため、日系通信会社にサポートを依頼。細かな情報まで集めた。通信品質やコストだけでなく、政府系か民間かといった社風にも着目。「頼んだ仕事を早く着実に行ってもらえそうかどうか」を考慮して、利用するサービスを選定した。メインで利用する光ファイバーと、バックアップ用に別の通信会社と契約するADSL回線の組み合わせを標準構成に決めた。

 わずか半年で店舗運営に必要なIT環境を構築したが、その後のマネジメントは苦労の連続だ。当初は日本での業務のやり方をベトナムに移管しようとした。だが、「日本ではこうしている」と指示すると、「ここはベトナムだ」との反発に悩まされた。やり方を変えて今は、すぐ指示を与えるのではなく、まず「どうすべきか?」とスタッフに問いかける。納得がいくやり方なら実践させ、そうでない場合はさらに突っ込んで考えさせる。時間はかかるが、現地流の発想を吸収でき、スタッフに応用力も付くと割り切る。


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