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 「幸福な家庭はどれも似ているが、不幸な家庭はそれぞれに不幸なものである」

 ロシアの文豪トルストイは、代表作「アンナ・カレーニナ」の冒頭にこう記した。この法則は、現代の企業社会にも当てはまる。幸福な企業、つまり着実に業績を伸ばしている企業は、いずれもITを「利益の源泉」として活用しているのだ。

 本誌は、幸福へ至る道筋は三つあると考える。ITを使って異変を即座に察知するだけでなく、顧客を深く理解し、さらに成長の頭打ちをも防ぐ。本特集で紹介する12社が、なぜ好調なのか。強い企業のIT戦略を紹介しよう。

(小笠原 啓)

◆営業利益率15%の秘密
 シスメックス
◆異変を即座に察知する
 ゼンショーホールディングス/キヤノン/富士ゼロックス/あきんどスシロー
◆顧客を深く理解する
 ベネッセコーポレーション/クックパッド/ハウス食品/ケーズホールディングス
◆成長の頭打ちを防ぐ
 ニトリホールディングス/アインファーマシーズ/イオン


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ5月10日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

営業利益率15%の秘密

 約15%の売上高営業利益率を達成しつつ、10期連続で増収増益を続けている優良企業が神戸市にある。医療用検査機器大手のシスメックスだ()。

図●シスメックスの業績推移と「SNCS」の中核メンバー<br>10期連続で増収増益を達成し、2012年3月期も最高益を更新した見込み。血球分析装置の分野で世界シェア40%を誇る
図●シスメックスの業績推移と「SNCS」の中核メンバー
10期連続で増収増益を達成し、2012年3月期も最高益を更新した見込み。血球分析装置の分野で世界シェア40%を誇る
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 2011年3月期の連結売上高は1246億円で営業利益は182億円を計上した。2012年3月期は円高が足を引っ張ったが、それでも増収増益を継続したとみられる。

 シスメックスが快進撃を続ける理由の一つは、「SNCS(シスメックス・ネットワーク・コミュニケーション・システムズ)」という情報システムにある。コマツの建設機械向けシステムである「KOMTRAX(コムトラックス)」の医療機器版と考えると分かりやすいだろう。コマツはGPS(全地球測位システム)で建機を監視する仕組みを構築し、グローバル企業として飛躍した。シスメックスも同様に、ITこそが成長の鍵だと考えている。

 SNCSがどのようにシスメックスのビジネスに貢献しているのか。詳しく紹介しよう。

世界シェア4割、業界標準に

 シスメックスが強みとするのは、血液中の赤血球や白血球の数を測定して分析する「血球分析装置」だ。世界シェアは約40%に達し、国内では事実上の業界標準になっているという。他にも、乳がんの転移や免疫機能を検査する装置を手掛けている。SNCSはこれらの医療機器をネットワーク経由で遠隔管理する仕組みの総称だ。

 血球分析装置を導入した医療機関などの顧客は、毎朝の装置起動時に必ず、シスメックスが提供する人工血液を分析する。人工血液には一定量の赤血球などが含まれており、装置に異常が無ければ常に同じ値が測定される。

 シスメックスはこれを「精度管理情報」と呼び、毎日ネット経由で収集する。装置の稼働状況をSNCSに蓄積し、顧客サポートに生かすのが目的だ。

 顧客にとってもメリットがある。「毎朝装置の精度を確かめておけば、血液検査で異常値が出た場合に、装置の異常を疑わずに済む。念のため、別の装置で検査を繰り返すようなムダを省ける」と、シスメックスの矢野誠カスタマーサポート本部長は説明する。

 血球分析装置は部品点数が多いため、故障とは無縁ではいられない。「だが、そうした言い訳は医療現場では許されない。故障を未然に防ぐためにも、きめ細かいサポートが必要となる」と矢野本部長は気を引き締めるように話す。


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