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私物のスマホやタブレット端末を業務で利用するBYOD(ブリング・ユア・オウン・デバイス)が新展開を見せている。仕事を円滑に進めるために、オンラインストレージやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)など、個人が契約したクラウドサービスを私物の端末から利用するビジネスパーソンが増えているのだ。こうした端末やシステムの“公私混同”の潮流に、システム部門はどう対処すればよいか。本誌は二つの方策を提案する。

(高槻 芳)

◆クラウドが生むBYOD新潮流
◆クラウドにお墨付きを与える
◆法人向けで“ほどほど”実現
◆システム部門こそ公私混同を


【無料】サンプル版を差し上げます 本記事は日経コンピュータ9月13日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集1」の全文をお読みいただける【無料】サンプル版を差し上げます。お申込みはこちらでお受けしています。 なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 「次の会議は確か1時間後。今のうちに、前回の会議内容を確認しておこう」。真夏日が続いた2012年8月のある日、中堅カード会社で営業部長を務める近藤進氏(仮名、50歳)は、横断歩道の赤信号の間にスマホをポケットから取り出した。1年前に購入した私物のスマホだ。

 「古いスマホは遅くてね。仕事のために買い替えたんだよ」。スマホを本誌記者に自慢しながら、慣れた手つきで画面をタッチし、スケジュールや会議資料を確認した。「そういえば、先方の担当者が変わったんだ。名前も確認しておこう」。名刺管理アプリを起動。クラウド上に保管してある名刺データを検索した。

 「これらがないと、仕事にならない」。近藤部長はスマホの画面を指さし、話を続ける。「うちの会社のシステム部門は、どうも頭が固すぎる。私物のスマホやクラウドの利用を認めるようにするとか、それに近いシステムを作るとか、今どきのITをもっと勉強してほしいものだよ」。

デバイスを越える私物解禁

 本誌は「私物解禁」と題し、1年以上前の2011年6月23日号で、BYOD(ブリング・ユア・オウン・デバイス)の広がりや必要性を報じた。当時は、会社支給のPCやスマホの代わりに、私物のスマホなどから会社のシステムにアクセスし、「いつでもどこでも仕事ができるようにする」ことが、新しい動きだった。

 だが、わずか1年で状況は大きく進展した。会社のシステムにアクセスするだけでなく、個人が契約したクラウドサービスに仕事のデータを保管し、業務で利用するケースが増えているのだ。

 冒頭で紹介した近藤部長は、米グーグルの「Google Calender」でスケジュールを管理している。会社のグループウエアには社外からアクセスできないため、会社のPCにエージェントソフトを導入。自動的にクラウド上のスケジュールと同期して、いつでもどこでも個人のスマホからスケジュールを管理できるようにした。

 米エバーノートのクラウドサービス「Evernote」も活用中だ。会議資料やプレゼン資料だけでなく、スマホのカメラで撮影したホワイトボードやノートに記したメモもアップロードしている。名刺管理やオンラインストレージなどのクラウドサービスも、個人で契約し仕事で使っている。

 従来のBYODであれば、外部からのデータの閲覧状況などを会社のシステム側で把握したり、社外からのアクセスをコントロールしたりできる。だが、私物の端末から個人契約したクラウドを利用する最近のケースでは、システム部門は全く手を出せない()。

図●最近のBYODの特徴
図●最近のBYODの特徴
個人が契約したクラウドサービスに会議資料や名刺などの業務の情報を管理。個人所有の端末(スマホやタブレット)からクラウドにアクセスする

 とはいえ、システム部門は短絡的にこれらを禁止すれば済む状況ではない。自分の時間を有効に使うため、仕事の生産性を高めるために、私物端末と個人向けクラウドを業務で使う“公私混同”を、ユーザーが求めているからだ。「社内からしか利用できないシステムよりも便利。私物のスマホや個人契約したクラウドは、業務システムの一部」(近藤部長)といった声は少なくない。

約半数がBYODを実践中

 スマホなど私物のデバイスや個人向けのクラウドサービス(以下、個人向けクラウド)を業務で利用するBYODは、驚くべき速さで浸透している。

 本誌がIT総合情報サイトの「ITpro」読者を対象にインターネット調査(調査期間は2012年7月11日から26日)を実施したところ、半数を超える53.9%が私物端末を業務で利用(音声通話を除いたデータ通信での利用)していると回答した。さらに、全体の4割強となる43.8%は、個人向けクラウドを業務で使っている。

 私物端末や個人向けクラウドの、利用頻度の高さも目を引く。回答者の33.1%は私物端末を「ほぼ毎日」業務で利用し、全体の30.1%は個人向けクラウドを「ほぼ毎日」業務で利用していた。「週に2~3日程度」や「週に1日」も含めると、その割合は私物端末の業務利用は47.3%、個人向けクラウドは40.6%に達する。

システム部門への不満噴出

 こうした動きに、ユーザー企業のシステム部門は対応できているのだろうか──。会社は正式に認めていないものの、BYODを実践している調査回答者を集めた覆面座談会では、この問いに対し全員が首を横に振った。

 「代替案を用意せず、『危ないから使うな』だけではだめだ。私物のスマホやクラウドを使い続けないと、仕事で今のパフォーマンスは維持できない」(金融業の営業担当者)、「BYODが厳しく禁止されたら、ユーザーはデータを印刷したり、USBメモリーにコピーして持ち歩くようになる。それでも禁止するのは、システム部門の責任回避にしか見えない」(物流業の営業担当者)、といった厳しい意見が相次いだ。


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