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 安く安定した高速回線とクラウド型のシステムが当たり前になった今、日本中、世界中のシステムを集約する動きが盛んになっている。

 集約先は必ずしも日本とは限らない。ソニー、サントリー、OKIデータ──。彼らは日本で使うシステムを、アジアのデータセンター(DC)に移設した。シンガポール、マレーシア、タイ、香港、日本の地方都市。ユーザー企業にとって、これまで首都圏一辺倒だったDCの選択肢が、一気に広がっている。一方で、首都圏では新型DCの開業が相次ぐ動きもある。

 ユーザー企業は現在、どのような視点でDCを選んでいるのか。アジア、地方都市、首都圏におけるDCの強みは何か。先進事例と国内外のDCの最新動向を基に、ユーザー企業にとってのDC選びの勘所を探る。

(中田 敦、宗像 誠之)

◆日本を去る、ソニーの決断
◆アジアの3強、どこ使う?
◆アジアDC徹底比較 その1 実績の香港、タイは将来性
◆アジアDC徹底比較 その2 マレーシアが意外に高評価
◆国内集約で本社の統治強化
◆DCの2013年問題、首都圏で
◆BCP追い風に地方DCが台頭
◆資料編 国内の主要DC事業者と主な施設


【無料】特別編集版(電子版)を差し上げます 本記事は日経コンピュータ10月25日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文は、日経BPストアの【無料】特別編集版(電子版)で、PCやスマートフォンにて、10月30日よりお読みいただけます。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 2012年、ソニーが日本に設置していた業務システム用サーバーが、全て姿を消した。

 生産管理などの基幹系システムを、シンガポールのDCに移転したのだ。これらサーバー数の合計は約2000台に上る。東京と名古屋のDCで稼働していたものだ。

 2007年から5年をかけた大規模な移転プロジェクトが一区切りついたのは今春のこと。それから6カ月が経過するが、使い勝手に問題はなく、日本にシステムを置いていた頃と同じようにシンガポールのシステムを利用できているという。「ITインフラの総コストは従来比で2割減。期待に近い効果が出た」とソニーの堺文亮CIO(最高情報責任者)は語る。

 ソニーの取り組みで注目すべき点は、単なるシステムの移転だけではないことだ。

IT業務を機能別に分解・統合

 ソニーはシステム開発、サーバーの物理的な設置、システム運用、ハードウエア保守・サポート、戦略策定・企画といったITに関連する業務を全て機能別に分解し、アジア地域で統合。各地に適材適所の役割を分担させることで、コスト削減とガバナンス強化を実現している()。

図●日本を含むアジア地域のシステムをシンガポールに集約したソニーの取り組み<br>企画は日本、開発はインドと中国、システムの設置とハードウエア保守はシンガポールで、運用はインドからリモートでと、機能により最適な場所を選び組み合わせている
図●日本を含むアジア地域のシステムをシンガポールに集約したソニーの取り組み
企画は日本、開発はインドと中国、システムの設置とハードウエア保守はシンガポールで、運用はインドからリモートでと、機能により最適な場所を選び組み合わせている
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 具体的には、システム開発は中国とインドの拠点を通して現地企業へアウトソーシングする。システム運用はインドの大手ベンダーに委託。約200人規模の要員を確保し、遠隔でシンガポールのシステムを監視・運用する。ハードウエア保守については、DCが存在するシンガポールで手掛ける。ユーザーサポートはシンガポールと日本に設置。日本の拠点はIT戦略の企画に特化した。

 「テクノロジーが進化している今、もはや各拠点でこれらの機能を個別に持つ必要はない。システムを単純に海外へ移すだけでなく、最も安く効率化できる場所へITの機能ごとに振り分けることが重要」と堺CIOは力説する。

 ソニーは2006年に世界規模でのITインフラ集約を検討し始めた。投資の効率化や作業負荷の軽減などの狙いがあったが、最も大きな理由はBCP(事業継続計画)の強化だ。DCは東京と名古屋に分散していたが、「自然災害の多い日本で分散させるよりも、より安全な場所にシステムを移すべき」という議論になった。

 こうした問題意識を契機に、世界の各拠点が使うシステムを2カ所のDCに集約するプロジェクトが発足。結果的に、欧州や米国などのシステムは米国のDCに集約。日本やアジアのシステムはシンガポールのDCに統合することになった。

 アジアのシステムを集約するDCについては当初、日本や中国、香港、マレーシア、シンガポール、オーストラリアの6カ国・地域を比較した。コストやインフラ、DC事業者のサポート状況、自然災害やカントリーリスクなどの指標を比べ、最終的にシンガポールを選定した。併せて、日本国内のITベンダーに依頼していたシステム運用をインドのITベンダーに切り替える決断も下した。


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