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 企業のIT投資が、業績向上とイノベーションの活性化にどれだけ寄与しているのか――。

 IT活用による付加価値創出の実態を調査するため、本誌は早稲田大学などと共同で「イノベーション経営調査2013」を実施し、207社から有効回答を得た。表は、IT投資の内訳や業績推移などを採点し、回答企業の偏差値をランキングしたものだ。上位であるほどIT活用に優れ、かつ業績が好調であることを示す。まずは「新ビジネスの創出」と「既存事業の高速化」にITを駆使する、上位企業の戦略から見ていこう。

(小笠原 啓、岡部 一詩)

◆新ビジネスはITで生み出す
◆22%が「チェンジ」に重点投資
◆既存事業を高速回転
◆変革速める三つの法則
◆調査で見えた、七つの事実
◆総合ランキング21~100位


【無料】特別編集版(電子版)を差し上げます 本記事は日経コンピュータ5月16日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文は、日経BPストアの【無料】特別編集版(電子版)で、PCやスマートフォンにて、5月22日よりお読みいただけます。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 「ビッグデータ分析事業が、毎月2000万円もの売り上げを稼ぎ始めた。今後さらにシステムを強化し、年間10億円規模のビジネスに育てたい」。こう意気込むのは、日本調剤の河野文隆システム部長。今回調査で19位にランクインした同社は、ITを活用してイノベーションを起こし、新ビジネスを生み出している企業の代表選手だ。これまで10期以上連続で増収を続け、2013年3月期の連結売上高は前期比7.2%増の1395億円となった。

 日本調剤は2012年から、医薬に関するビッグデータを分析し、製薬会社などに情報提供するビジネスを手掛けている。分析の基とするのは、全国約470の調剤薬局で扱う処方箋のデータ。その数は1日当たり約4万枚、年間で1000万枚を超えた。

 処方箋を分析すれば、どの薬がどの地域で多く処方されているのか、年齢層によってバラツキがあるのかといった情報を把握できる。こうした情報を製薬会社などに提供すれば、大きな売り上げが見込める。そう予感した日本調剤は、社内で独自の分析システムを構築し、新事業に打って出た。

製薬会社のニーズ先取り

 処方箋データを販売する企業は他にもあるが、日本調剤の場合、自社の薬剤師がジェネリック医薬品(後発薬)と先発薬のどちらを選んだかまで分析して提供する。製薬会社は「こうした情報を喉から手が出るほど求めている」(河野部長)。ジェネリックの処方動向は、先発薬メーカーの経営を大きく揺さぶりかねないからだ。

 情報提供事業の付加価値をさらに高めるため、日本調剤は2014年3月までに約1億円(本誌推定)を投じ、BI(ビジネスインテリジェンス)システムを刷新する。年間IT投資額が推定数億円の同社にとって、大きな挑戦だ。

 「これまではハードウエアとソフトウエアの制約により、主に過去の処方実績を分析していた。処理能力を向上させることで、どんな薬の需要が増えるのか、未来を的確に予測したい」と河野部長は力を込める。分析データの付加価値を高めることで、より多くの製薬会社に加え、大学や医療機関などへの拡販を目指す考えだ。

 日本調剤はITを活用して処方箋データを精緻に分析することで、顧客に新たな体験価値、すなわち新鮮な体験や感情といった「驚き」を提供できた。だからこそ、新事業創出に成功したわけだ。

 日本調剤がビッグデータ分析事業を始めた背景には、外部環境の影響を受けにくいビジネスモデルを構築したいとの思いがある。

 調剤薬局の経営は、法規制に大きく左右される。店頭での業務プロセスや情報管理は法令で規定されている上、2年に一度実施される薬価改定のたびに、コスト削減が課題となる。さらに政府は、在宅医療や夜間営業の強化を調剤薬局に求めている。日本調剤が成長を続けるためには、ITを活用して、「役所の都合」と無関係な事業に乗り出すことが欠かせない。

システム内製に注力

 もちろん、一朝一夕に新ビジネスを生み出せたわけではない。同社はシステムにノウハウが宿ると考えた三津原博社長の号令で、2000年ごろから情報システムの内製に取り組んできた。

 診療報酬明細書の管理ノウハウや調剤録などを社内に蓄積し、「情報を一元管理して素早く経営に反映できる仕組みを磨いてきた」と河野部長は言う。経営者自らが情報活用を主導したからこそ、処方箋分析という独自ビジネスが花開いた。

 今後の課題は、店舗システムの刷新だ。現在は、調剤録などを店舗内に保管することが法令で求められている。そのため、各店舗にWindowsサーバーを設置せざるを得ず、新規出店の足かせとなっている。日本調剤は、この規制が緩和される可能性に備えて準備を始めた。「Linuxをベースにしたクラウドを構築し、店舗システムを集約したい。システムの運用コストが下がれば、出店ペースを加速できるはずだ」(河野部長)。

 安倍晋三首相は医療など、成長が見込める分野での規制緩和を進める考えだ。日本調剤は制度変更をリスクととらえず、IT活用で飛躍のチャンスに変えようとしている。


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