「Amazon Web Services(AWS)」がIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)のデファクトスタンダード(事実上の標準)となった今、様々なベンダーが「Amazon互換クラウド」の提供にしのぎを削っている。日本で16社が提供するAmazon互換クラウドの実力を検証しよう
(中田 敦)

互換クラウド
「アマゾンに追いつきたい」。NTTコミュニケーションズ(NTTコム)の有馬彰社長は、2013年4月に開催したクラウドに関する戦略説明会の場でそう語った。クラウド、特にIaaSの領域では、米アマゾン・ウェブ・サービスがリーダーであり、AWSのサービスの機能や仕様がデファクトスタンダード(事実上の標準)。そう明言するITベンダーのトップが、国内外で増えている。
米オラクルのラリー・エリソンCEO(最高経営責任者)は「ライバルはIBMではなくアマゾン」と、“打倒Amazon”に闘志を燃やす。一方の米IBMは、“Amazon互換”に事業戦略を転換した。
「クラウドサービスとソフトを『OpenStack』ベースにする」と発表したのだ。
OpenStackは、AWSのようなIaaSを実現するためのOSS(オープンソースソフトウエア)だ。これまで、IaaSを実現するソフトを自社で開発してきたIBMが戦略を転換したことは、IT業界に大きな驚きを与えた。
技術面でAWSが圧倒的リード
AWSは技術面でも、他のIaaSを圧倒的にリードしている。AWSがIaaSのデファクトスタンダードになったことで、AWSの機能にユーザーの注目が集まり、AWSの機能が他のIaaSに広まるという流れが生まれたからだ。
そもそも、「オンデマンド型」「セルフサービス方式」「プログラムによる運用管理の自動化」という特徴を備えたIaaSは、AWSが世界初だった。
その後もAWSは、OSSの分散バッチ処理ソフト「Hadoop」のサービスや、クラウドの中にユーザー専用のネットワークセグメントを作り出す「仮想ネットワークサービス」などの付加機能を、他社に先駆けて提供。米マイクロソフトや米グーグル、日本IBM、富士通、NTTコミュニケーションズなどが、それらの機能を相次ぎ自社のIaaSに取り入れて、「Amazon互換クラウド」の提供を始めている。
IaaSの選択基準が変わった
AWSがIaaSのデファクトスタンダードになった今、IaaSの選択基準が変わろうとしている。ユーザー企業がIaaSを利用するに当たっては、AWSを軸に検討し、他社のIaaSについて「AWSとどこまで互換性があるのか」「AWSには無い“プラスアルファ”は何か?」という視点で評価し、自社に合ったサービスを選ぶことが賢明な策となる。
なぜなら、デファクトスタンダードとなったAWSと互換性のあるサービスを選べば、ユーザー企業はクラウド事業者によるロックイン(囲い込み)を避けられるからだ。
ここでいうIaaSの互換性とは、業務アプリケーションの互換性ではなく、運用管理に関する互換性を指す(図)。
続きは日経コンピュータ5月30日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。