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ビジネスの変革を支える情報システムは自らしか作れないとして、インソーシング(システムの自社開発)に踏み切る企業が急増している。今やビジネス環境は、乱高下する株式や外国為替のごとく、激しく好転と暗転を繰り返す。そうした変化に即応し、システムは素早く、柔軟に作らなければならない。そのためにIT担当者は、“ビジネスを創る、変える”観点からシステムを企画し、プログラミングも自らが担う。ITが競争力に直結する時代を迎えた今、“インソーシング革命”の現場を追う。

(編集委員 木村 岳史)

◆「素早く柔軟に」を最優先
◆外注から内製に切り替えた理由
◆自社開発の常識を捨てよ


【無料】特別編集版(電子版)を差し上げます 本記事は日経コンピュータ6月27日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文は、日経BPストアの【無料】特別編集版(電子版)で、PCやスマートフォンにて、7月3日よりお読みいただけます。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 「これはいいね。経営会議で使うことを検討しよう」。花王の情報システム部門が作成した経営情報の「見せる化ツール」のプロトタイプを評して、CIO(最高情報責任者)の橋本健取締役常務執行役員はそう話したという。

 見せる化ツールは、自社製品の売れ行きや課題を直感的に把握できるようにしたもの。製品グループ別の売上高などを四角形の大きさで表現し、対前年比の増減などを色で表現する。このツールに、大手スーパーがメーカーに提供しているPOS(販売時点情報管理)データを入力することで、国別、製品グループ別に他社製品の売れ行きと比較して販売戦略を練り上げる際などに活用できる。

 実は、花王の最大のライバル、米プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、既にこうしたツールを活用し成果を上げていた。花王は、P&Gがオープンソースソフト(OSS)を基に作成したことを知り、それを参考にしながら同様のツールを作ることにしたのだ。担当したのは入社2年目の國友翔次氏。わずか2日間で、経営陣の意思決定に役立つ、見せる化ツールを作り上げた。

 「今や社外には、OSSといった形でシステムのパーツとして使えるものが無数にある。システムを自社開発してきた企業ならば、それを取り込んで、差異化につながる仕組みを素早く作ることができる」。花王情報システム部門の小和瀬浩之統括はそう指摘する。

 システムの自社開発を基本としてきた花王は今後、こうしたOSSなども取り込んで、ビッグデータ関連など経営に資するシステム作りを加速させていく考えだ。

インソーシング企業が続々

 今、ユーザー企業によるシステム内製に新たな動きが出てきた。対象となるのは、バックヤードのシステムではなく、経営やビジネスに直結するシステムだ。ビジネス環境の変化に即応するためにOSSやクラウドサービス、さらに外部の技術者のノウハウや顧客の意見などを取り込んで、自らの手で素早く作る。

 実際、ビジネス直結のシステムの開発を外注から内製に切り替える企業が多数出てきた。例えばマネックスグループ。従来、傘下のマネックス証券のシステム開発は外注が基本だったが、2011年6月に米国の証券会社トレードステーションを買収、同社のIT部門の開発力を取り込んだ。

 以降、今後のグローバル展開に備えて、アジャイル開発手法を取り入れたシステム刷新を内製で進めている。2013年5月にはその成果として個人投資家向けの投資情報サービス「MONEX INSIGHT」の提供を開始した。「顧客が利用するサービスはITそのもの。価値の源泉であるシステムをもはや外部に任せはしない」と、マネックス証券のピーテル・フランケン常務執行役員チーフ・テクノロジー・オフィサーは話す。

 中古車買い取り・販売の大手ガリバーインターナショナルは、いったんは廃止したIT部門を、「ITチーム」として2013年4月に復活させた。従来のIT部門は基幹系システムの運用が業務の中心だったが、新たに発足したITチームは「ビジネスの変革に貢献するためのシステム開発」を担う。

開発スピードを大幅アップ

 こうした変革への貢献を目的とするシステム内製の新たな動きを、従来の内製と区別して、この特集では「インソーシング」と呼ぶ。インソーシングはアウトソーシングとは反対の概念で、システムを自社開発することを意味するとともに、外注していたシステムを自社開発に切り替える移行プロセスを指す言葉でもある。

 インソーシングの取り組みが増えているのは、ビジネス直結のシステムでは開発スピードが全てに優先するからだ。ビジネスの変化に合わせ、即座にシステムを構築したり改修したりする柔軟さを求められる。

 例えば綜合警備保障は、ホームセキュリティなど機械警備のためのシステム開発を、外注中心からインソーシングに切り替える。セコムなどとのサービス開発競争の激化に備えるためで、2012年から体制作りを進めている。

 実際インソーシングにより、開発スピードを大幅に引き上げ、成果を上げる企業も増えてきた。以前からインソーシングを実践する良品計画は、商品の生産・物流・販売というコア業務をつかさどる「MD(マーチャンダイズ)システム」の機能追加などを2カ月以内に仕上げる。要件定義は週1回の会議を4回実施して1カ月、開発は2~3週間という短期間だ。

 「要件定義は完璧を期さず7割程度で十分。一刻も早く使えるようにすることが最も重要だ。使えば開発前に見えなかった要件が見えようになるから、その後でシステムの完成度を高めればよい」とCIOの小森孝常務取締役は話す。こうした超高速開発は、ITベンダーに外注したのでは、とても不可能である()。

図●ビジネス直結のシステムで外部のITベンダーに発注するのが難しい理由
図●ビジネス直結のシステムで外部のITベンダーに発注するのが難しい理由
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