PR

機能や品質にこだわるあまり、海外では通用しない─―。日本発のIT製品は総じて、「ガラパゴス」と揶揄されることが多い。だが、海外で売れているソフトウエアやITサービスは確実に存在する。成功事例を探ると、海外で売り抜くための「勝利の方程式」が見えてきた。突破口はアジアだ。日本が先進国として成長・成熟する過程で蓄積してきた課題解決の技術と経験が、今まさに必要とされている。日本のソフトやサービスは海外で十分に通用すると本誌は断言する。その証拠を示そう。

(岡部 一詩)

◆災害から国と命を守る
◆アジア発展の原動力に
◆新たな商機を見逃すな
◆これで勝てる、五つの鉄則


【無料】特別編集版(電子版)を差し上げます 本記事は日経コンピュータ8月8日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文は、日経BPストアの【無料】特別編集版(電子版)で、PCやスマートフォンにて、8月14日よりお読みいただけます。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

防災クラウド(台湾内政部消防署)
100億円に向けた「初めの一歩」

 「土砂崩れで村ひとつが丸ごと埋まってしまった」。台湾内政部消防署の陳文龍副署長は、4年前の8月8日を昨日のことのように思い出す。台風が全土に上陸し記録的豪雨が発生、700人近くの死者が出た通称「八八水害」である。

 台湾では台風による被害が毎年のように発生する。その被害を減らすため、日本の消防庁に相当する台湾の内政部消防署はITの活用に踏み切ることを決めた。2014年末までに段階稼働させる「防災救急情報クラウドシステム(防災クラウド)」がそれだ。台湾当局や自治体、住民が災害情報を共有し、避難や救助に生かすための仕組みである()。

図●「防災救急情報クラウドシステム」の利用イメージ
図●「防災救急情報クラウドシステム」の利用イメージ
災害情報の収集、管理を担う「EMIS」や住民に配布する通報アプリをNECが開発する

 防災クラウドに先駆け、内政部消防署は2013年8月にもスマートフォンなどで動作するNEC製の「通報アプリ」を住民に配布する。災害時に輻輳が起こって119番通報がつながらなくなっても、住民が救助を求められるようにするためだ。住民は通報アプリを通じて、位置情報や被害状況を示す写真データを送ることができる。

 住民からの通報や各地の自治体などから寄せられた情報を防災クラウドに集約し、台湾全土の災害情報を迅速かつ正確につかむ。これによって、「災害情報を漏れなく収集し、状況に応じてスピーディに対策を協議することが可能になる」(陳副署長)。

 大規模災害の発生時には、内政部消防署にある「防災センター」に馬英九総統など閣僚が集合し、指揮を執る。

初の海外受注に成功

 この防災クラウドのうち、各地の災害情報を収集・管理する中核アプリケーション「EMIS」の構築をNECが受注した。決め手は日本での実績にあった。同社は日本の消防指令システムや防災無線の構築などを手掛けており、自治体向け防災ソリューションでは3割のシェアを誇る最大手だ。

 内政部消防署がRFI(情報提供依頼書)を公開した時点から、当時の消防・防災ソリューション部門の責任者が台北に長期出張して、自ら提案活動に奔走。それによって日本での実績を認知してもらうことができた。

 結果的に、NECが防災分野で海外での受注に成功した初の事例となった。受注額は3億円強。必ずしも大きな額とは言えないが、意義ある「初めの一歩」だ。

 NECは受注に前後して、リーダークラスの人材を1年間台北に送り込み、視覚性を重視したGIS(地理情報システム)の構築技術などを現地技術者に教え込んだ。今では現地法人であるNEC台湾の技術者だけで開発チームを構成し、内政部消防署の向かいのビルでクラウドの構築を進めている。

「アジアには大きな需要がある」

 防災クラウド構築の契機は、冒頭の「八八水害」だった。台湾中部と南部を襲った広域水害が、「台湾の災害は範囲が限定的」(陳副署長)との常識を覆した。その1年7カ月後に、日本で東日本大震災が発生。その様子を知って「広域災害への対策を講じる決意を固めた」(同)。

 広域災害への対策という観点で、台湾の現在の防災システムは二つの課題を抱えている。

 一つは、台湾全土における災害の発生状況を、一元的に収集する仕組みが整っていないことだ。各地で救助活動などを担う自治体は、独自に情報収集システムを構築している。だが、当局と自治体、あるいは自治体間で情報を共有するシステムが不足している。

 もう一つは、住民が当局に助けを求める手段が119番通報しかないことだ。大規模災害時は、住民が一斉に通報するため、回線が輻輳してつながらないことが多い。

 NECの調査によれば、全世界の自然災害による被災者数の85%をアジアの住民が占めるという。「アジアには防災ITの大きな需要がある」。NECの嶋田恭尚消防・防災ソリューション事業部長は力を込める。「台湾での実績は武器になる」と自信を見せる。

 NECはアジアを中心に防災ソリューションを売り込み、同事業を2018年までに海外で年間100億円規模に拡大させる。


続きは日経コンピュータ8月8日号をお読み下さい。この号のご購入はバックナンバーをご利用ください。