富士通、NEC、日立製作所、日本IBMといったITベンダーが顧客企業などとコラボレーションすることで新たなビジネスを続々と立ち上げている。単に顧客の新規事業を支援するのではなく、リスクを取って自らの事業として推進しているのが特徴だ。顧客などとの異業種コラボにより、これまで無かった斬新なビジネスも生まれている。そうした“尖った”事例を紹介する。
(編集委員 木村 岳史)

購入すれば1台120万円以上もする家庭用蓄電池。これを家庭の負担ゼロで提供する─。NECがオリックスなどと共同出資で設立したONEエネルギーは、そんな常識外れの事業を展開しようとしている。NECのIT力とオリックスの金融力を組み合わせ、新たなビジネスモデルに挑戦する。
ITを活用した新ビジネスと言えば、従来はユーザー企業の取り組みをITベンダーが技術面で支えるのが一般的だった。ところが最近、ITベンダーが自らもリスクを取り、顧客など異業種との協業で新ビジネスを立ち上げる事例が続々と登場している。
なかでも積極的なのが、NEC、富士通、日立製作所、日本IBMの大手ITベンダー4社である。ユーザー企業にとっても、新規事業の立ち上げに向けたIT活用の新たなスキームとして参考になるはずだ。
共同出資で新事業を創造
NECが手掛ける協業モデルは、パートナーとなる企業との共同出資や資本提携といった密度の濃いものだ。ONEエネルギーの場合、資本金は1億円だが株主資本は15億円。このうち70.2%をオリックスが、残りをNECと、住宅設備のコンサルティングなどを手掛けるエプコが折半で拠出している。形の上ではオリックス主導だが、これはオリックスの金融力をフル活用するためだ。
ONEエネルギーは2013年春からNEC製リチウムイオン蓄電池の一般家庭へのレンタルを始めた(図)。料金は月額4900円だが、自治体からの補助金、料金の安い夜間に蓄電して昼間に使うことによる電気料金の削減効果などで、家庭の負担は実質ゼロになる。うまく活用すれば、さらに従来の電気料金に比べたトータルコストが下がる。しかも停電の際には非常用電源として活用できる。
事業はシンプルのように見えるが、NEC単独では不可能だった。「電気自動車用に開発した製品を家庭向けにも売ろうとしたが、全く売れなかった。オリックスに相談した結果、このビジネスが生まれた」とNEC出身の吉田精孝取締役は振り返る。ONEエネルギーは当面赤字。資本を食いつぶしながら電池をばら撒く形が続く。実はIT力をフル活用した次の事業にこそ、このビジネスの真髄があるのだ。
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