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メインフレームからオープン系のシステムに移行する「レガシーマイグレーション」が、再び盛り上がりを見せている。
従来のようにコスト削減や老朽化対策といった守りの理由ではなく、海外進出やM&A(合併と買収)、各種制度の変更など、ビジネス環境の変化に強いIT基盤に刷新するといった“攻め”の姿勢が鮮明だ。
今どきのレガマイに挑む四つの企業・自治体の取り組みを掘り下げる。

(井原 敏宏、森山 徹)


【無料】特別編集版(電子版)を差し上げます 本記事は日経コンピュータ2014年3月6日号からの抜粋です。そのため図や表が一部割愛されていることをあらかじめご了承ください。本「特集」の全文は、日経BPストアの【無料】特別編集版(電子版)で、PCやスマートフォンにて、3月12日よりお読みいただけます。なお本号のご購入はバックナンバーをご利用ください。

 長年利用してきたメインフレームから、オープン系のシステムに移行する「レガシーマイグレーション(以下、レガマイ)」が、再び脚光を浴びている。アマダ、アサヒグループホールディングス(HD)、札幌市、日本生命保険は、20~30年ほど利用したメインフレームのシステムから、オープン系のシステムへの移行に踏み切った。

 レガマイに関するITベンダーへの問い合わせも増えている。「数年前に比べてメインフレームの台数は減っているが、レガマイの相談件数はむしろ1・2割増えている」(日立製作所 情報・通信システム社レガシーマイグレーション技術センタの崎本壮センタ長)。

図●従来のレガマイと攻めのレガマイの違い
図●従来のレガマイと攻めのレガマイの違い
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 最近のレガマイは、業務やビジネスを成長させるために情報システムを強化しようという“攻め”の姿勢が鮮明だ()。「海外進出や企業のM&A(合併と買収)など、会社として打ち出す成長戦略に対して、旧来のシステムでは対応できないケースが増えてきた。その解決に向けてシステム刷新に踏み切るというのが、最近の傾向だ」(日本IBM ハイエンド・システム事業担当の朝海孝理事)。

 メインフレームからの脱出によるコスト削減や、メインフレームの老朽化による障害発生・性能低下への対策などが主流だった、従来型のレガマイとは一線を画する。

 攻めのレガマイにより、海外進出に際して標準システムを素早く展開したり、M&Aで加わった企業をグループ経営にスムーズに取り込んだりといったことが容易になる。他にも、ブラックボックス化したシステムを“見える化”してITベンダーへの発注力を高めたり、消費増税や会計制度の変更などに対応しやすくしたりと、レガマイによって新たな“力”を手に入れる事例が増えている。四つの企業・自治体の事例を見ていこう。

海外展開力 アマダ

 攻めのレガマイにより、生産管理システムの海外拠点への展開力を高めたのが、金属加工機械大手のアマダだ。アマダは富士通製のメインフレームで約30年間利用した生産管理システムを、2013年2月にオープン系のシステムに刷新した。製造拠点のグローバル化に素早く対応するためだ。

 同社はリーマン・ショック以後の円高や景気変動を受け、自社製品の競争力を高めて売り上げを伸ばすためには、海外拠点での生産強化が必要と判断した。その際、重視したのが日本と同じ品質を維持することだった。そのためには、「各国で勝手に作り方を変えないように、生産のノウハウが詰まった部品表(BOM)と、それと連携する生産管理システムを統一する必要があった」(執行役員ICT部門長の武尾清氏)。

 しかし、旧生産管理システム「SONICS」はメインフレームで動くため、同一のシステムを海外拠点に展開することが難しかった。またSONICSには、受注に対して部品表と在庫状況から、必要な部品を算出して手配書を出す中核機能のMRP(資材所要量計画)が、週次でしか実行できないという制約もあった。

 これらの問題を解決するため、アマダは新しい生産管理システム「ATS」(アマダトランスフォーマー生産管理システム)」を構築した。ATSはJavaベースのパッケージソフトをカスタマイズした、Windows上で動くオープンシステムだ。メインフレームより安価かつ手軽に海外拠点に導入でき、MRPも週次から1日3回実行可能になった。

 アマダが採用したパッケージソフトは、東洋ビジネスエンジニアリングの生産管理ソフト「MCFrame XA」。その選択理由を武尾氏はこう語る。「旧システムには独自開発した機能があり、それが我々の強みだった。そのため、ソフトの選定では自分達でカスタマイズしやすい点を重視した。MCFrame XAはソースコードが提供されており、後から機能を追加しやすかった」(武尾氏)。

 ATSは日本国内向けに約1年半かけて開発した。国内の開発に苦労したが、そこで得たノウハウを生かすことで、米国や中国の工場向けには約5カ月で展開できた。「海外向けには画面の翻訳と、国ごとの商習慣に合わせて注文書の書式などを一部変更したくらいで、スムーズに展開できた」(ICTシステム部PM支援グループリーダーの宮渕貴之氏)。


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