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 新型インフルエンザをはじめとする感染症が世界的に大流行する「パンデミック」の発生時、あるいは発生に備え、国や企業などが講じる対策。パンデミックは世界的大流行とも訳され、国境を越えて限られた期間に感染症が増加、持続している状態を指す。

 企業におけるパンデミック対策には、従業員の出社自粛や時間差通勤の実施などがある。どういう場合にどのような対策を講じるかの基準と実施計画の策定が必要だ。日本政府が2月に定めた「新型インフルエンザ対策行動計画」があり、それに沿った立案が求められる。

 出社自粛の場合、従業員は自宅待機となるため、自宅で業務を継続できるような仕組みの整備が欠かせない。こうした場合に業務を継続できるよう、一部の企業ではシンクライアントなどの導入が進んでいる。保険会社やコンサルティング会社もパンデミック対策商品やサービスを提供し始めている。

 4月にメキシコなどでの感染症例が明らかになった新型インフルエンザについて、一部の企業は感染が多く報告された北中米への渡航禁止、自粛などの措置を取った。同地域に拠点を抱える企業は、従業員、家族の帰国を促すこともあった。「帰国後の体温が38度以上であれば出社を見合わせる」などの基準を定めた企業もあった。

 こうした指示や基準の決定や海外拠点の動向を迅速に把握するために、災害対策本部やリスク対策本部を設置している企業は少なくない。決定までのリードタイム短縮のために、対策組織の設置は急務といえる。

 4月28日、政府は内閣総理大臣を本部長とする新型インフルエンザ対策本部を設置した。国際空港では新型インフルエンザウイルスの侵入を空港で阻止し、国内感染を防ぐための水際対策に注力。指定地域からの来航便の乗客を対象に、サーモグラフィによる発熱者の確認や質問表による問診を検疫員が行った。

 抗インフルエンザ薬の備蓄やワクチンの研究開発、製造を推進する動きも加速している。行動計画では、国民の45%相当量を目標に抗インフルエンザ薬の備蓄を推進するとしている。さらに新型インフルエンザのウイルス株の同定の後、6カ月以内に全国民分のパンデミックワクチンの製造を目指して、生産ラインの整備などを進める。

 矢野経済研究所によると、2008年のパンデミック対策製品の市場規模は売上高ベースで486億4000万円。行政による抗インフルエンザ薬(タミフル、リレンザ)の備蓄追加の方針により、09年の同市場は1016億6000万円と予測する。この予測は今回の新型インフルエンザの感染症例が明らかになる前のものである。

 5月中旬には国内でも渡航歴のない人から感染症例が発生した。症例が確認された関西地域では、学校の休校など行動計画に沿った対策が採られている。一方で、世界保健機関(WHO)や各国政府が想定していたパンデミックは強毒性の鳥インフルエンザであったのに対し、現在流行している豚由来の新型インフルエンザは現時点で弱毒性とみられるため、「対応が過剰だ」という指摘も出てきている。行動計画に定められている出勤停止や事業所の閉鎖などを厳密に適用すると、社会活動、経済活動が停止しかねないからだ。

 ただウイルスは今後変化する可能性もある。政府や企業は感染実態をにらみながら対策を弾力的に運用するという、難しい対応を迫られる。