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 東日本大震災は、日本の通信インフラに過去最大の打撃を与えた。NTT東日本によると、385カ所の通信ビルが機能を停止。架空ケーブルは2700キロメートル分が流出または損傷し、中継伝送路は90ルートが切断された。

 地震や津波は特定のケーブルや通信設備ではなく、広範囲にわたる通信インフラ全てを飲み込んだ。社内WANやデータセンターに接続する固定回線を2系統用意し、機器故障や災害に備えているケースもあるが、それでも必ずしも万全とはいえない。

センターへの「入り口」を追加

 そこで注目度が高まっているのが、災害に左右されない通信手段を確保できる衛星通信である。

 卸大手の国分は、情報システムのバックアップ回線として衛星通信サービスを利用している。首都圏にあるデータセンターにアクセスするための固定回線が使えなくなった場合に、衛星回線に切り替えて事業を継続するシステムを、2010年10月に構築した。災害時のみ、使用するシステムである。

 基幹系システムは事業者が運営するデータセンター内にあるので、大きな災害が発生しても深刻な打撃を受ける可能性は低い。それでも、データセンター周辺地域の通信回線が流されたり、中継器などが故障したりすれば、外部からはアクセスできなくなる。全国223カ所の物流センターで、業務が停止することになりかねない。

 そのような場合に、固定回線ではなく衛星回線を使って、データセンター内のサーバーにアクセスできるようにする。各物流センターから、バックアップ用のネットワークを経由して広島の中継センターに接続。そこから通信衛星を介して首都圏データセンターに接続する(図17)。衛星通信には、スカパーJSATの「EsBird」の回線を採用した。

図17●国分が衛星通信サービスを利用して構築した災害対策システム
首都圏の固定回線に障害が発生した場合、バックアップネットワークや衛星通信を経由してサーバーにアクセスする
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BCP専用メニューが登場

 衛星回線を利用する際にネックとなるのは、通信料金だ。例えばEsBirdは、1拠点あたりの通信速度は32kビット/秒からのサービスだが、料金は月額6万2000円から。ネットワーク構成や帯域の広さ、使う通信機器によって料金は変わる。バックアップ回線としては割高感が否めない。

 NTTコミュニケーションズ第一エンジニアリング部門第二ネットワーク担当の田中俊光担当課長は、「使用するアプリケーションを絞り込むなどして、帯域を有効活用する工夫が必要だ」と話す。国分の場合は、衛星通信による回線バックアップを実現する際にDaaSを導入した。拠点とデータセンター間のデータ転送量を削減し、回線コストを抑えるのが狙いだ。

 「ベストエフォートで十分」「期間限定でもよい」という企業にはほかの選択肢もある。例えば、タイのIPSTARは2012年2月、初期費用50万円を支払えば、利用月のみ月額1万5000円で利用できる衛星通信サービス「IPSTAR BCP」を開始した。IPSTARが提供する衛星アンテナとモデムを使って、インターネットに接続する。最高通信速度は、下りが4Mビット/秒で、上りが2Mビット/秒のサービスだ。

 「他社よりも処理性能が高い通信衛星を使っており、1基で大容量の通信を処理する。このため、比較的安い料金を設定できる」と、田中靖人 日本支店長は話す。ただし衛星アンテナは1000台限りで、利用期間は5年限定である。

今がBCPを見直す好機

 バックアップサイト、データセンター、端末、通信回線。ここまで見てきたシステムの構成要素一つとっても、情報システム部門が再検討すべき項目は数多い。それだけ、東日本大震災が残した教訓は大きいともいえる。

 震災から1年を経た今こそ、情報システム部門にとって、ひいては全社にとってのBCPと策定・運用プロセスを検証する好機である。そのためのポイントを図18にまとめた。

図18●情報システム部門が今後取り組むべきBCP改善のポイント
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 四つの新常識を踏まえて、どのような災害が発生しても企業としての責任を果たす。震災や電力問題の記憶が薄れないうちに、この目標に向けたBCPの改善・強化に取り組む必要がある。