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 働きがいのある、強いIT職場を実現するには、女性活用にかかわる三つの要素が欠かせない。ワークスタイル改革、出世意欲、新たなロールモデルである(図4)。これら三つのうち、どれか一つが欠けても駄目だ。3要素を追求する各社の取り組みを追う。

図4●女性活用に欠かせない三つの要素
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現場社員
ワークスタイル改革

インテックが本社横で運営する社内託児所

 富山県に本社を置くインテックに勤める産業システム部の清水美奈子氏は毎朝8時30分、3歳になる娘と一緒に通勤する。清水氏は本社横にある社内託児所に娘を預けてから職場へ向かう。清水氏は2009年に出産後、1年半の育児休暇を経て2010年に職場復帰した。

 「友人の話を聞くと、託児所探しが復職のハードルになっていた。社内に託児所があることが復職の後押しになった」(清水氏)。本社周辺には駐車場もある。「子供と一緒に通勤しやすい環境が整っている」(人事グループの本江美冬氏)。

 清水氏は時短勤務制度を利用し、午後4時45分に仕事を終えて託児所へ娘を迎えに行く。パッケージソフトの維持管理などを受け持つ清水氏は、時短勤務のため同僚から二つの協力を得ている。

 一つは会議時間。社内外の打ち合わせを午前中に設定してもらっている。残業を減らす工夫だ。

 もう一つは業務の分担である。清水氏は時短勤務のため、障害対応など不定期に発生する業務を担当できない。そのため中長期でこなせる仕事を担当させてもらっている。代表例がパッケージソフトの販売促進用の資料作成だ。

2時間の通勤時間を省く

 子供と一緒に通勤するのが難しい都心の会社は、在宅勤務制度の整備に力を入れる。

 日本ユニシスの総合技術研究所イノベーションラボに勤務する間瀬志帆氏は、同社の在宅勤務制度を週2回ほど活用し、自宅で資料作成などをこなす。間瀬氏は通勤に往復2時間かかる。朝5時30分に起床し、出社前に子供のお弁当作りなど家事をこなす。「在宅勤務制度を利用すると朝7時に起きても間に合う」(間瀬氏)。子供を病院へ連れて行く時にも、在宅勤務は重宝する。打ち合わせなどの用件は出社日に集中させている。

 日立製作所のITプラットフォーム事業本部に所属する浅井麻衣技師も、在宅勤務制度を利用する。浅井技師は授業参観や面談といった小学校の行事に参加する日に自宅で作業する。

 特別な制度を導入せず、育児中の女性社員を定時で帰宅できる職場へ配置転換する企業もある。サイバーエージェントのアメーバ事業本部で働く大倉香織氏は、育児休暇からの復帰を機に配置転換を申し出た。

 大倉氏は同社のブログ事業のシステム基盤に携わるインフラSEだったが、復帰後はPCの資産管理を担うHR戦略室業務効率化グループへ異動した。これにより、定時で帰宅できるようになった。

登用
出世意欲を高める

 制度を整備したところで、本人にやる気がなければ活躍はできない。制度作りと並行して、各社は女性社員の出世意欲を高める取り組みにも臨んでいる。

リコーITソリューションズが取り組む若手社員向けのキャリアセミナー

 「みんなには管理職を目指して欲しいの」─。リコーITソリューションズが11月に開催した若手女性社員向け研修の一コマだ。女性管理職が自らの体験を若手社員に語りかける。経営戦略センターの木原民副センター長は「自分自身の経験を通じて育児との両立はできるということを示したい」と力を込める。

 研修には全国の支店で働く20代の女性社員が30人ほど集まった。参加者は2日間かけて将来のキャリアパスを議論した。「同じ支店に育児と仕事を両立している人はいない。支店には同世代の女性もいないので将来を考えるうえで良い機会だった」(参加者)。

 男性社員に比べて劣りがちなスキルの補強に力を入れているのが日本IBMである。同社は2012年から、30代前半の女性社員向けに管理職としての立ち振る舞いを指導する研修「テイキングザステージ」を始めている。

 研修は英語で行う。電話応対や商談などのシーン別に、適切な英語の言い回しを教える。会議で評価されやすい話し方も指導する。「女性は声が小さかったり、控えめな単語を使ったりする傾向がある。他の参加者を見て、自ら気付き改善してほしい」(人事ダイバーシティ担当の梅田部長)。

選抜制で会社の期待度を示す

 会社からの期待を本人に直接伝えることで女性社員に出世を意識付ける企業もある。富士通は30~40代の女性管理職候補を集め、新ビジネスなどの提案を考える研修を行う。研修参加者は事業部門から選抜する。「選ばれた意識を持つため研修生の意欲が高い」(ダイバーシティ推進室の塩野典子室長)。富士通はこの研修を2011年度に始め、2年間で115人の女性社員が参加した。

 今年度の研修は「攻めの構造改革」「真のグローバル化」「新サービスの創造」の3テーマから一つ選び、数カ月かけて議論するものだった。11月12日に経営幹部も参加して発表会を開いた。

 この研修でチームを組んで議論することで、同じ役職の女性同士の連帯感も生まれた。金融システム事業本部の尾本真由氏は「普段男性社員とばかり仕事をしている。女性だけで週に何度も集まったのは新鮮だった」と振り返る。

管理職
新たなロールモデル

 育児休暇や時短勤務を経て管理職にまで上り詰めた女性社員は、総じて仕事の進め方や時間の使い方に長けているという。「自分と同じ苦労を部下の女性にはさせたくない」との思いから、女性社員のロールモデルとして理想の職場を自ら実現している。

 NTTデータの第三法人事業本部eライフ統括部に所属する渡辺恵子部長は、40人の開発部門のリーダーである。2012年4月に1年間の育児休暇から復帰した渡辺部長は、復帰後に仕事の進め方を変えた。

 休暇前は終電まで働いていたが、今は午後6時には帰宅する。限られた時間を最大限に生かすため、会議の効率アップを追求する。参加者には事前に資料を準備してもらい、議論するテーマを明確にしてから臨むように促す。

 とはいえ、開発現場は夜間のシステム更新作業などが付き物だ。渡辺部長も可能な限り参加するが、毎回というわけにはいかない。そこで、課長が自分の代わりに業務をこなせるよう、あらかじめ情報共有などを進めている。

 SCSKの総合金融ソリューション部サービサー課で働く岡下真理子課長も、「私でなくてもよい仕事は部下に任せている」。岡下課長は午後5時40分に退社する。息子のクラブ活動が終わる午後7時までに帰宅する必要があるからだ。

 岡下課長の下にはリーダーがいる。リーダーが岡下課長と同じ判断ができるように、情報共有を徹底している。

6時に帰っても改革はできる

セガ
情報システム部部長
草島 智咲 氏

 2011年からIT部門長として、25人の部員と共に働いている。私自身はIT部門に在籍して15年目になる。以前からIT部門を変えたいと考えていた。利用部門から依頼を受けて作業を進めるのではなく、業務改革を主導できる組織にしたいと思っていた。

 部長になった今がそのチャンスだ。2013年の稼働を目指して基幹系システムの刷新に取り組んでいるが、このプロジェクトを受け身ではなく主体的に進めるように意識している。

 忙しい日々だが、午後6時までには仕事を終わらせて帰るようにしている。部下も早く帰っている。それでもプロジェクトは順調に進んでいる。時間管理を徹底しているからだ。仕事は大事だが、それだけが全てではない。

 部長になってからは、ITベンダーにも物事をはっきり言うようになった。女性の役得なのか、受け入れてもらっている。(談)

コンビで社内に新風送り込む

 日用品メーカーのエステーは、CIO(最高情報責任者)とIT部門長が共に女性という珍しい企業だ。CIOが執行役の石川久美子経営管理本部長、IT部門長が武蔵由香子ITマネージャーである(写真A)。2人は2012年4月からIT部門を率いる。

写真A●エステーの石川久美子氏(左)と武蔵由香子氏(右)
(写真:稲垣 純也)

 CIOの石川本部長は法務など業務部門が長い。一方、武蔵マネージャーは入社して25年間、IT部門一筋だ。経歴の異なる2人がお互いの長所を引き出し合う。

 IT部門長の武蔵マネージャーは、ITをテコにした社内変革を目指す。「新技術を積極的に取り入れ、新システムを構築していきたい」(武蔵マネージャー)。社内改革には技術だけでなく現場の協力も不可欠。そこでCIOの石川本部長が業務部門とのつなぎ役を果たす。

 エステーは2012年度からBYOD(ブリング・ユア・オウン・デバイス)を本社部門の一部で認めるなど、新技術を取り入れてきた。武蔵マネージャーが技術検証などを推進し、石川本部長が経営陣や業務部門などへの説明などを担った。

 IT部門は女性コンビが率いるが、全社でみると女性管理職はまだ少ないという。石川本部長は「異端の存在だからこそ、社内に新しい風を送り込みたい」と意気込む。

私は育児休暇を
3回取得した

シスコシステムズ
シニアヴァイスプレジデント&チーフマーケティングオフィサー
(CMO)
ブレア・クリスティ 氏

 私は育児休暇を3回取得し、その都度復職してきた。現在はCMOとして、世界中のマーケティング戦略を統括している。私の経験から、女性が仕事を続ける上で重要なことが二つある。

 まずは配偶者の理解だ。キャリアを追求することについて同意を得ておく必要がある。昇進すれば2人でお祝いし、行き詰まれば2人で話し合って改善点を探る。

 次に柔軟な勤務体系だ。私は可能な限り家族と自宅で夕食を取るようにしている。夕食時は携帯電話も確認しない。その代わり、子供が就寝した後に仕事をしている。この働き方にはITが不可欠。インスタントメッセンジャーなどのITツールを駆使している。

 女性は物事を簡潔に説明することが得意だと思う。時間管理にも長けている気がする。性別や人種の異なる多様な人材を活用することが、企業の競争力強化につながると確信している。(談)