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1年後の2014年春、みなさんの会社には優秀な人材が入社するだろうか―。就職活動中の学生を対象に、ITベンダーやネットサービス企業を対象にした就職人気ランキングを作成した。大手メーカーの人気に陰りが見える一方で、システムインテグレータ(SI)やコンサルティングの人気が再び高まってきている。

調査概要
楽天の「みんなの就職活動日記」が調査を企画・実施。日経コンピュータと日経BPイノベーションICT研究所が協力した。2014年3月卒業予定の学生を対象に、就職活動の口コミサイト「みんなの就職活動日記」上のWeb調査と、同サイトが主催する就職イベント会場でのアンケート調査を実施。調査期間は2012年12月12日から2013年2月11日。1577人から回答を得た。回答者は就職志望の企業を7社以上10社まで複数回答。総合ランキングは回答件数を単純合計して算出した。

 2014年4月入社に向け、IT業界各社の採用活動が本格化している。既に筆記試験を終え、面接を始めたところもある。「経団連が倫理憲章を見直した(採用期間を2カ月短縮した)前年に比べると混乱は少ない」と、楽天のクチコミ就職情報サイト「みんなの就職活動日記」(みん就)の矢下茂雄事業長は説明する。「企業が説明会の開催を早めたことで、前年に比べれば、学生は落ち着いて就職先を選んでいるようだ」(同)。

 ITベンダーやネットサービス各社は、就職活動中の学生からどのように評価されているのか。楽天のみん就と日経コンピュータ、日経BPイノベーションICT研究所は共同で、2014年4月入社予定の学生を対象に「IT業界就職人気ランキング」調査を実施した。順位の変動幅や分野別/志望動機別などの順位に着目すると、IT業界のトレンドや各社への期待の変化が見えてくる。

 人気がある企業には、優秀な人材が集まりやすい。就職活動中の学生による人気ランキングは、IT業界各社の将来性を測る一つのパラメータであるといえる。ビジネスパーソンにとっても、人気のある企業で働いているほうが“やりがい”が高まるものだ。みなさんの会社は、学生からどのように評価されているのか。調査結果を見ていこう。

大手ITメーカーの人気に陰り

 まずは総合ランキング(図1)と分野別ランキング(図2)から紹介しよう。総合ランキングの1位はNTTデータだ。獲得票数は741で、2位のNTTコミュニケーションズに倍近い差をつけた。NTTデータは調査開始以来4回連続での1位で、絶大な人気を維持している。

図1●IT業界における就職人気の総合ランキング(社名は2013年3月1日時点)
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図2●企業分野別の就職人気ランキング
事業内容や主要株主の業種・業態などを基に分類。総合ランキングで100位以内の企業が対象。( )内は前回順位。前回5位以内に入っていない場合や、合併・買収などにより前回と比較できない場合は「 - 」とした
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 総合ランキングで10位までに入った新しい顔ぶれをみると、アクセンチュア(5位)、日本ユニシス(8位)、SCSK(9位)がランクインした。これら3社がトップ10に入ったのは、調査開始以来初めてのことである。

 5位のアクセンチュアは、「今回の採用から、当社が求める人材像として“挑戦する人”を明確に打ち出した」(人事部リクルーティングの増永加奈子マネジャー)。学生にとってはハードルが上がった印象だが、杞憂だったようだ。2012年5月に、アクセンチュア・テクノロジー・ソリューションズなどを統合したことで、今回からコンサルタントとは別にソフト開発技術者を採用することになった。間口が広がったことも、人気上昇の追い風になった。

 コンサルティング会社やシステムインテグレータが順位を上げる一方で、前年よりも人気を落としたのが大手ITメーカーである。前回2位の富士通は6位、前回6位のNECは11位とトップ10入りを逃した。ほかにも日立製作所は前回13位から16位へ、日本IBMは7位から23位へ落ちた。

 総合エレクトロニクスメーカーの業績不振が大きく報道されるなど、学生にとって“大手メーカー=安定”という先入観がなくなりつつあるようだ。

TISやNHN Japanが躍進

 視野を上位50社に広げて見てみると、ほかにも躍進している企業があることに気づく。最も順位を上げたのが26位(前回67位)のTISである。同社は今回、前年の3倍となる約500人のリクルーターを動員。出身大学での説明会や個別の対話など、「従業員の生の声を学生に伝えられるようにした」(大河内隆吉人事部主査)ことが奏功したようだ。

 TISのほかにトップ50の企業で大きく順位を上げたのは、32位(前回61位)のJSOL、43位(同66位)の電通国際情報サービス、45位(同80位)のNTTデータシステム技術である。トップ50入りはしなかったが、コミュニケーションアプリ「LINE」を手掛けるNHN Japanも大躍進した。前回は168位とほとんど志望者がいない存在だったが、今回は52位に躍進した。

 事業内容や主要株主などを基に分野を分けた就職人気ランキングでは、大きな順位変動はなかった。前回と1位が入れ替わったのは、金融ユーザー系システムインテグレータ(SI)の三菱総研DCS、ネットビジネスの楽天、である。

志望理由別で個性を測る

 総合ランキングでは、知名度がある大手企業が上位を占める傾向がある。企業研究があまり進んでいない学生は、「とりあえず知っている会社を受けてみよう」と短絡的に決めることもあるからだ。IT業界各社に対する学生からの評価は、総合ランキングよりも志望理由別のランキングの方が分かりやすい。

 調査では、志望する企業ごとに志望理由を尋ねた。「会社の魅力」「仕事の魅力」「雇用の魅力」それぞれでの六つの選択肢(うち一つは「特定のイメージはない」)を用意し、回答者は魅力の種類ごとに一つだけ志望理由を選ぶ。その志望者が占める割合が高い順にランキングしたものが図3である。

図3●志望理由別ランキング
入社したい第1~第3希望の企業について志望理由を聞いた。総合ランキングが50位以内の企業を対象に、志望理由別に回答率の高い企業をランキングした。例えば、「会社の魅力」の「技術力がありそう」で1位の日立システムズは、同社を志望する回答者の51.0%が「技術力がありそう」を志望理由に挙げた
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 例えば、図3の左上にある日立システムズは、同社を志望する学生の半数(51.0%)が「会社の魅力」として「技術力がありそう」を選んだことを意味する。このように、志望理由別ランキングの上位企業は、企業の個性が学生に強く伝わっているとみてよい。

 半数以上が特定の志望理由を掲げる個性の強い企業は、日立システムズのほかにもある。東京海上日動システムズは、「安定していそう」という志望理由を掲げる学生の割合が最も多かった(志望者の63.6%)。ジェイアール東日本情報システムは、身近な鉄道インフラを支えているせいか「社会に役立つ仕事ができそう」(同72.7%)で1位だった。

 三菱総研DCSは「ITなど専門スキルが身に付きそう」(同55.2%)、ディー・エヌ・エーは「実力があれば若いうちから活躍できそう」(同55.8%)、ドワンゴは「社風・居心地が良さそう」(同54.8%)、アイ・ティ・フロンティアは「教育研修に熱心そう」(同52.6%)で1位だった。

ミスマッチは起きていないか

 志望職種別のランキングも、総合ランキングとは異なる傾向が出た(図4)。調査では志望企業とは関係なく、「IT業界で担当してみたい仕事(職種)」を尋ねた。その結果を基に、職種ごとに志望者に占める割合が高い順にランキングした。

図4●志望職種別の就職人気ランキング
総合ランキング50位以内の企業を対象に算出。例えば、システムエンジニア/プログラマ分野で1位のNECソフトの場合、同社に入社したいと考えている回答者の83.8%が、システムエンジニア/プログラマを志望している
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 例えば、NECソフトを志望する学生の5人に4人(83.8%)は、「システムエンジニア/プログラマ」になりたくて同社を志望している。実際、NECソフトはシステム開発が中核業務なので、学生と企業とのミスマッチは起こりにくいと考えられる。逆に、システム開発を担当できないであろう企業にこうした学生が集まってしまうとミスマッチが起き、入社数年で転職してしまう懸念がある。

 「セールスエンジニア」では大塚商会(志望者の35.5%)、「経営・業務コンサルタント」ではアビームコンサルティング(同64.4%)が1位だった。

 「プロジェクトマネジャー」の1位はグリー(28.8%)である。新たなゲームやソーシャルメディアを立ち上げるプロジェクトに携わりたいと考えている学生が集まったようだ。ただし、同社以外のネットサービス企業はトップ10に入っておらず、大手・中堅システムインテグレータが名を連ねた。

独立志向の1位は日本MS

 今回の調査では、初めて「将来、ITを生かして独立・起業したい」と考えている志望者の多い企業のランキングも作成した(図5)。

図5●独立・起業したいと考えている志望者の多い企業のランキング
「将来、ITを生かして独立・起業したい」とする回答者の比率が高い企業をランキング。1位の日本マイクロソフトの場合、同社を志望する54.5%が「将来、独立・起業したい」と考えている。総合ランキング50位以内の企業を対象に算出
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 技術の変化が目まぐるしいIT業界で企業が成長するには、新たな製品・サービスを創出し続けることが不可欠だ。もちろん、それを実現することは簡単ではないのだが、「独立・起業しよう」という気概を持った人材が集まっているほうが有望ではないか、という考えからのランキングである。

 結果を見ると、上位は外資系企業とネットサービス企業が名を連ねた。1位は日本マイクロソフトで、志望者の54.5%が「将来、ITを生かして独立・起業したい」と回答した。これに日本ヒューレット・パッカード(同50.6%)、日本IBM(同49.0%)が続く。

 日本企業の上位は、4位のグリー(47.1%)。5位はGMOインターネットグループ(46.2%)で、7位はディー・エヌ・エー(43.5%)と、ネットサービス企業が並んだ。なお、独立・起業したいという学生は、全体の約3割(29.5%)だった。

情報発信力ではGMOが1位

 今回の調査では、ソーシャルメディアでの情報発信力が高い志望者の多い企業のランキングも作成してみた(図6)。最近の就職活動は「ソー活(ソーシャルメディアを活用した就職活動)」と呼ばれるように、ソーシャルメディアとのかかわりが深いからだ。

図6●「ほぼ毎日」ソーシャルメディアに書き込む志望者の多い企業のランキング
FacebookやTwitterなどソーシャルメディアに「実名で」かつ「ほぼ毎日」書き込みをしている回答者の比率が高い企業をランキング。1位のGMOインターネットグループの場合、同社を志望する56.3%が、「ほぼ毎日」書き込みをしている。総合ランキング50位以内の企業を対象に算出
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 調査ではまず、実名によるSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)への書き込み頻度を聞いた。その結果、約半数(46.7%)は「ほぼ毎日」何らかの情報(就職活動以外の情報も含む)を、実名で発信していたことが分かった。ランキングでは、「ほぼ毎日」情報を発信している学生が志望者に占める割合でランキングした。当然ながら、上位はネットサービス企業が占めた。

 1位はGMOインターネットグループで、志望者の56.3%が「ほぼ毎日」ソーシャルメディアへの書き込みをしていた。これに続くのが、楽天(同54.5%)、カカクコム(同53.9%)である。ネットサービス以外では、日本マイクロソフト、東京海上日動システムズ、富士ゼロックス、富士通システムズ・イーストがトップ10に入った。

IT業界の魅力アップが急務

 ここまでIT業界を対象にした就職人気ランキングを紹介してきた。忘れてならないことは、優秀な人材を奪い合うのは業界内だけではないことだ。

 ITベンダーのセールスエンジニアを目指している学生は、商社や小売業を併願しているかもしれない。エンジニアを目指している学生は、機械や素材の製造業を併願している可能性もある。

 その場合、IT業界各社は不利な状況にあるのが実情だ。楽天のみん就が実施した全業種を対象にした就職人気ランキングを図7に示す。1位は三菱東京UFJ銀行、2位は全日本空輸、3位は電通と、超大手企業が名を連ねる。ランキング上位に、IT業界の企業は一つもない。今回の調査で1位だったNTTデータでさえ、全業種の中では63位である。IT業界で2位のNTTコミュニケーションズは、トップ100にも入らなかった。

図7●全業種の就職人気ランキング
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 国内IT産業を活性化させるためには、IT業界そのものの魅力を高めていくことが不可欠だ。最近は就職活動に対し、親が助言することも珍しくなくなった。学生だけでなく、親にも魅力を感じてもらえるような業界にすることが急務である。

 国内IT産業を活性化させるためには、IT業界そのものの魅力を高めていくことが不可欠だ。最近は就職活動に対し、親が助言することも珍しくなくなった。学生だけでなく、親にも魅力を感じてもらえるような業界にすることが急務である。

ライバル企業と共同戦線

 学生が就職活動に割ける時間は短い。人気がない企業は、どうしても優先順位が下がってしまう。採用コストの抑制傾向もあり、企業側も効率よく人材を集める必要がある。こうした両者の課題を解決するために、ライバル企業と共同戦線を張る企業も登場し始めた。

1次面接を5社共同で

 複数の企業と共同で採用面接を行ったのがカカクコムだ。同社はネットサービスを手掛けるアイスタイル、デジタルガレージ、アイティメディア、リッチメディアと共同で1次面接を行った。学生は5社の採用担当者の前でプレゼンテーションを行い、各社からの質問を受ける。2次面接からは各社に分かれるが、同じ学生を取り合う形になってもよしとする。

 学生にとっては、1回の面接で5社分のチャンスを得られる。採用側にとっても、ネットサービスに関心を持つ学生を効率的に見極めることができる。共同で採用活動をすることで、カカクコムには関心がなくても、他の4社のどこかに関心がある学生と接触して自社の良さを訴求することもできる。

 カカクコム人事部の鈴木貴仁氏は、「kakaku.comなどのサービスは知っていても、その会社に入社しようと思ってもらうレベルまで学生に訴求できていない。様々な採用方法にチャレンジすることで、優秀な人材を獲得したい」と説明する。同社は共同面接とは別に、従来型の採用も行う。今回の共同面接で何人採れるかは未定だが、「手応えはある」(同)ようだ。

インターンも共同化

 インターンシップを共同で実施する企業もある。アクセンチュア、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)、電通国際情報サービスは2012年9月に共同インターンシップを行った。20人前後が1チームとなり、日替わりで異なる会社を訪問する。運営は楽天が担当した。

 例えばCTCでは、「IT分野の言葉を使わずに、ビジネスにおけるITの役割や必要性を理解してもらうことに徹した」(人事部人材開発課の岡田俊樹課長)。複数のチームに分かれ、不動産やショッピングモールといったビジネスを例に、ビジネスやITの仕組みを学生と共に考えた。

 経団連の倫理憲章では、インターンシップは採用活動とは明確に区別しつつ、5日間以上で実施することが示されている。とはいえ、1社で5日間の就業体験プログラムを用意したり、学生を募集したりする負荷は高い。共同で実施すれば、各社の負担は軽減される。こうした新卒採用を巡る企業側の共同戦線は、今後も広まっていきそうだ。