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19位 日本調剤 偏差値64.72
処方箋1000万枚から10億円事業創る

 「ビッグデータ分析事業が、毎月2000万円もの売り上げを稼ぎ始めた。今後さらにシステムを強化し、年間10億円規模のビジネスに育てたい」。こう意気込むのは、日本調剤の河野文隆システム部長。今回調査で19位にランクインした同社は、ITを活用してイノベーションを起こし、新ビジネスを生み出している企業の代表選手だ。これまで10期以上連続で増収を続け、2013年3月期の連結売上高は前期比7.2%増の1395億円となった(図1)。

図1●日本調剤の連結業績推移
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 日本調剤は2012年から、医薬に関するビッグデータを分析し、製薬会社などに情報提供するビジネスを手掛けている。分析の基とするのは、全国約470の調剤薬局で扱う処方箋のデータ。その数は1日当たり約4万枚、年間で1000万枚を超えた(写真1)。

写真1●日本調剤の薬剤師と代表的な店舗
全国約470の調剤薬局で扱う、年間1000万枚の処方箋データを分析し、情報提供事業に生かす
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 処方箋を分析すれば、どの薬がどの地域で多く処方されているのか、年齢層によってバラツキがあるのかといった情報を把握できる。こうした情報を製薬会社などに提供すれば、大きな売り上げが見込める。そう予感した日本調剤は、社内で独自の分析システムを構築し、新事業に打って出た。

製薬会社のニーズ先取り

 処方箋データを販売する企業は他にもあるが、日本調剤の場合、自社の薬剤師がジェネリック医薬品(後発薬)と先発薬のどちらを選んだかまで分析して提供する。製薬会社は「こうした情報を喉から手が出るほど求めている」(河野部長)。ジェネリックの処方動向は、先発薬メーカーの経営を大きく揺さぶりかねないからだ。

 情報提供事業の付加価値をさらに高めるため、日本調剤は2014年3月までに約1億円(本誌推定)を投じ、BI(ビジネスインテリジェンス)システムを刷新する。年間IT投資額が推定数億円の同社にとって、大きな挑戦だ。

 「これまではハードウエアとソフトウエアの制約により、主に過去の処方実績を分析していた。処理能力を向上させることで、どんな薬の需要が増えるのか、未来を的確に予測したい」と河野部長は力を込める。分析データの付加価値を高めることで、より多くの製薬会社に加え、大学や医療機関などへの拡販を目指す考えだ。

 日本調剤はITを活用して処方箋データを精緻に分析することで、顧客に新たな体験価値、すなわち新鮮な体験や感情といった「驚き」を提供できた。だからこそ、新事業創出に成功したわけだ。

 日本調剤がビッグデータ分析事業を始めた背景には、外部環境の影響を受けにくいビジネスモデルを構築したいとの思いがある。

 調剤薬局の経営は、法規制に大きく左右される。店頭での業務プロセスや情報管理は法令で規定されている上、2年に一度実施される薬価改定のたびに、コスト削減が課題となる。さらに政府は、在宅医療や夜間営業の強化を調剤薬局に求めている。日本調剤が成長を続けるためには、ITを活用して、「役所の都合」と無関係な事業に乗り出すことが欠かせない。

システム内製に注力

 もちろん、一朝一夕に新ビジネスを生み出せたわけではない。同社はシステムにノウハウが宿ると考えた三津原博社長の号令で、2000年ごろから情報システムの内製に取り組んできた。

 診療報酬明細書の管理ノウハウや調剤録などを社内に蓄積し、「情報を一元管理して素早く経営に反映できる仕組みを磨いてきた」と河野部長は言う。経営者自らが情報活用を主導したからこそ、処方箋分析という独自ビジネスが花開いた。

 今後の課題は、店舗システムの刷新だ。現在は、調剤録などを店舗内に保管することが法令で求められている。そのため、各店舗にWindowsサーバーを設置せざるを得ず、新規出店の足かせとなっている。日本調剤は、この規制が緩和される可能性に備えて準備を始めた。「Linuxをベースにしたクラウドを構築し、店舗システムを集約したい。システムの運用コストが下がれば、出店ペースを加速できるはずだ」(河野部長)。

 安倍晋三首相は医療など、成長が見込める分野での規制緩和を進める考えだ。日本調剤は制度変更をリスクととらえず、IT活用で飛躍のチャンスに変えようとしている。

20位 ノバレーゼ 偏差値63.63
「一石三鳥」の婚礼準備システム

 自社業務を効率化するために開発したシステムが、顧客の満足度を高めただけでなく、本業以外の収益源も創出した。

 結婚式場運営を手掛けるノバレーゼの婚礼準備支援システム「WEDO(ウィードゥー)」は、IT活用が「一石三鳥」を実現できることの好例だ(写真2)。同社は2013年1月に子会社を設立し、地方のホテルや結婚式場にWEDOを販売している。年間で20社への導入を目指す。

写真2●ノバレーゼの婚礼準備支援システム「WEDO」
列席者名簿や引き出物などの情報をウエディングプランナーと共有できるので、連絡ミスを防げる。下は開発を主導した野武宏充 情報システム部長
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 結婚式の準備は煩雑だ。式場を決めて招待状を発送し、席次や引き出物にも気を配る必要がある。こうした作業を担当のウエディングプランナーが支援することで、結婚式を成功に導くのがノバレーゼの強みだ。同社の2012年12月期連結売上高は前期比6.6%増の118億円となった。

 以前は紙ベースで情報をやり取りしていたため、伝達ミスが発生し「新郎新婦から不満が寄せられていた」と野武宏充情報システム部長は明かす。この問題を解消するのが、WEDO開発の最大の狙いだった。

 Web上に新郎新婦専用のページを用意し、列席者の名簿や招待状の文面などを、自宅からインターネット経由で入力できる仕組みを整えた。WEDOでは引き出物や衣装の注文など、約70項目の準備作業を管理できる。システムを活用することで新郎新婦の作業負担を軽減できるだけでなく、「言った言わない」という水掛け論も防止できる。

 プランナーは管理画面から、新郎新婦の入力内容を確認できる。準備して打ち合わせに臨むことで事務連絡を減らし、披露宴の演出など重要な項目に時間を割けるようになったという。

安く外販し業界標準狙う

 2012年6月に全店で導入して以降、ノバレーゼで挙式するカップルの8割以上がWEDOを利用した。「プランナーの業務効率だけでなく、新郎新婦の満足度も向上した」と野武部長は胸を張る。

 2013年からはWEDOの外販を強化する。ノバレーゼはWEDOの開発費用として数千万円を投じたが、100万円の初期費用で地方の結婚式場やホテルが使えるようにした。「ブライダル業界では各社の悩みは共通しているが、中小の事業者が独自にシステムを構築する余裕はない。WEDOを安価に、多くの企業に提供すれば、業界のデファクトスタンダードを握れる」と野武部長は見る。

 導入企業でカップルがWEDOを利用するたびに、ノバレーゼは2万円のシステム利用料を受け取る。「早い段階で、月間300~400件の外部利用による売り上げが見込める」(野武部長)。中国などの婚礼専門会社も、WEDOの導入を検討しているという。

 WEDOを通じて詳細な顧客情報を管理できるようになったため、「過去に利用したカップルに対して、結婚記念日に使うレストランを紹介するなど、別のビジネスも展開できる」と野武部長は意気込む。ノバレーゼで扱う引き出物や結婚指輪の販売拡大にもつなげる。

 少子高齢化により、婚礼件数は将来的に伸び悩むとみられる。IT活用により結婚式場運営以外のビジネスを確立することで、ノバレーゼは成長を加速させる。

3位 カシオ計算機 偏差値73.36
社外の発想がイノベーションの種に

 ゼロからイチを生み出す―。今回調査で3位に入ったカシオ計算機がITを活用する意義は、この一言で表現できる。

 カシオは時計の「G-SHOCK」や世界初の液晶画面付き民生用デジタルカメラ「QV-10」など、市場に存在しなかった製品を創造することで成長してきた。だがリーマン・ショック以降、売上高は激減。2012年3月期の連結売上高は4年前の半分以下に縮んだ。

 そこでカシオは、成長の原点に立ち返り、画期的な新商品をゼロから生み出すためのプロジェクトを開始した。2011年に立ち上げた、公認コミュニティサイト「Discover CASIO!」がそれだ。

写真3●カシオ計算機の大熊眞次郎 業務開発部部長

 目的は、カシオ製品のファンを増やしつつ、ユーザーが自由に話し合う場を作ること。「アンケートなどの意見は、製品の改善には役立つが新商品の創造には結びつきにくい。自由な会話の中からユーザーの利用実態を探ることで、開発者に発想のヒントを提供したい」と業務開発部の大熊眞次郎部長(写真3)は述べる。ふとした会話の中に、想像力をかき立てる「本音」が潜んでいるとみる。コミュニティ参加者は1万人近くに達した。

 ヒントを多くの開発者が共有できるよう、2013年度中にコミュニケーションツールを中国以外の全世界で統一する。社外にあるアイデアの「種」を活用し、イノベーションを誘発したい考えだ。