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北海道のコンビニ大手セイコーマートは、全国チェーンとの競争を勝ち抜くため物流とITの内製化を加速。メディパルホールディングスは医療機関を巻き込み、サプライチェーンの効率化を図る。先進企業に共通するのは、ITを駆使して物流を高度化することで、利益を生み出す姿勢だ。

セイコーマート
自前物流が低価格の鍵
セブン圧倒する北の王者

 「流通業界の競争は激しいが、物流にはまだコストを下げられる余地がある。ソフトウエアを含めて自前で手掛けることで、無駄を省いていきたい」。北海道におけるコンビニ最大手、セイコーマートの赤尾昭彦会長は、物流にこそ利益の源泉が眠っているとにらんでいる(写真1)。

写真1●セイコーマートの赤尾昭彦会長と、売れ筋商品の100円惣菜「北のポテトサラダ」
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 セイコーマートはセブン-イレブンやローソンなど全国チェーンの出店攻勢をはねのけ、道内の店舗数首位を保ち続ける北の王者である。店舗数は既に1000店を超え、他県も含めた全店売上高は1800億円に達する。

 人気の秘密は、「コンビニらしくない」低価格商品だ。自社工場で製造したポテトサラダは100円で販売。パスタなどでは近隣のスーパーより安いものもある。

 これを支えているのが、セイコーマートが長年かけて構築したサプライチェーンである(図1)。コンビニ店舗だけでなく、原料を生産する農業法人や容器の製造工場なども自前で抱える。可能な限り内製化することで、「グループ全体でコストを圧縮している」と赤尾会長は述べる。そして、サプライチェーン全体を貫く物流の強化に乗り出した。

図1●セイコーマートのサプライチェーン
原料生産から食材の加工製造、卸・物流と小売を一つの企業グループで担うことで、コストを削減する
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物流ITで10億円のコスト削減

 コスト低減に向けた物流改革の第一歩が、配送業務の効率化だ。

 英国のスーパー大手テスコやスウェーデンの家具大手IKEAが活用する、英パラゴンの配送管理パッケージソフトを国内でいち早く導入(写真2)。札幌の配送センターから各店舗に商品を届けるトラックのルート計算などに活用している。「欧州での利用が前提のソフトで、日本地図すら搭載していなかった」と赤尾会長は明かす。だが、機能の豊富さに惚れ込み、あえて自社でカスタマイズして導入したという。

写真2●セイコーマートが構築した配送トラックの管理システム
英パラゴン製のパッケージソフトを自社でカスタマイズし、北海道の各地に散らばる食材や商品などを効率よくピックアップし、店舗に配送する仕組みを作った
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 現在はGPS(全地球測位システム)と連動させ、トラックの運行状況をリアルタイムで管理。導入前、札幌センターでは90台のトラックを運用していたが、今では78台にまで削減した。その間、店舗数は増えているにもかかわらずだ。

 店舗への配送業務だけではない。全社物流網の要となる配送センターの情報武装にも、数年がかりで取り組んでいる。2011年6月には、約2億5000万円を投じて札幌センターに「ウェアハウス・マネジメント・システム(WMS)」を導入した。センターで扱う商品、約9000種の銘柄や数量、賞味期限や倉庫内の所在地などをリアルタイムに管理するシステムだ。「正確な在庫数量を常に把握できるようになった」と、グループ内で物流を担当するセイコーフレッシュフーズの堤豪気取締役は話す。WMS導入以前は、毎月の棚卸し時に「理論在庫」と「実在庫」の数量が大きく乖離することもあったという。

 一連の改革により「過去5年間の累計で、軽く10億円の物流関連コストを削減できた」と堤取締役は胸を張る。

在庫の誤差は0.03%

 WMSなどのシステムをベースに、2013年6月には札幌センターに自動発注システムを導入。配送センターの在庫量と需要見込みを商品ごとに分析し、メーカーに対して適切な種類と量を自動的に発注する仕組みを構築した。

 複数のシステムを連動させることで、在庫管理の精度はさらに向上。「2013年9月の棚卸し時の在庫誤差率は0.03%にまで減少した」と堤取締役は自信を見せる。配送センターにおけるコストを削減できただけでなく、グループ内の製造部門の業務効率化にもつながっている。

 今後は店舗のPOS(販売時点情報管理)システムとWMS、そして自動発注システムを連動させ、「自動納品システム」を構築する計画だ。実現すれば、店舗スタッフが頭を悩ませることなく、最適な商品がセンターから店舗に届くようになる。メーカーと配送センター、そして店舗をITで結び付けて物流を高度化することで、小売現場の競争力をも高められると期待する。

メディパルホールディングス
タブレット1万台を配布
顧客の在庫切れを回避

 ITを駆使して自社だけでなく顧客の在庫も管理する─。卸大手メディパルホールディングス傘下で医療用医薬品を扱うメディセオは、昨年からタブレットを医療機関や調剤薬局に配布し始めた(図2)。累積配付台数は、2013年9月時点で1万台を超えた。背景にあったのは、「顧客からの注文プロセスを改革しない限り、物流コストの削減は難しい」(メディセオ執行役員の柏木整システム本部長)という問題意識だ。

図2●メディパルホールディングスはタブレットを活用し、医療用医薬品の受発注と配送を効率化
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電子発注比率が65%に

 小規模な医療機関や調剤薬局は、保管スペースの制約から、多くの在庫を持ちたがらない。結果、必要な時に薬が欠品しがちになり、そのたびにメディセオが車両と人員を手配し、緊急配送することで対応してきた。「当社としては頼まれたら持って行かざるを得ないが、この非効率な仕組みを変えたいと考えていた」と柏木執行役員は明かす。

 さらに、電話やFAXで注文を受けると、メディセオの担当者が受発注システムに入力する必要があり、ミスの原因にもなり得る。

 そこで目を付けたのがタブレットだった。メディセオの受発注システム用の端末として配付することで、薬剤師などが必要な薬をEOS(電子発注システム)経由で注文できるようにしたのだ。

 手入力の負荷がなくなっただけでなく、構造化されたデータを受発注システムが扱えるようになり、物流などメディセオの基幹系システムとの連携が強化された。タブレット配布後1年で、EOS経由の受注率は10ポイント以上向上し65%に達した。

 メディセオはさらに、調剤薬局向けに在庫管理システムを提供。タブレットと連携させて、薬剤師が適切なタイミングでメディセオに発注できる仕組みを整えた。これにより在庫切れに起因する緊急配送を減らし、物流コストを削減できるわけだ。

 メディセオは2009年ごろから物流の方針を転換。全国各地にある物流センターの運営を外部任せにせず、システム構築なども含めた内製化に舵を切った。2013年9月には、23億円を投じて東京都心に物流センターを稼働させた。都心部には、倉庫スペースに悩みを抱える調剤薬局が集積している。タブレットを軸にした効率物流を売りに、メディセオは新規顧客の開拓を急ぐ。

富士ゼロックス
貨物の輸送状況を可視化
余剰在庫を7.7億円削減

 富士ゼロックスは2013年2月、「貨物輸送状況可視化システム」を稼働させた。

 複合機やプリンターなど、製品の所在地や在庫数をNECのクラウドサービスで管理。約40社の船便やトラック便の情報を集約する別のクラウドサービスと接続し、世界中どこからでも輸送状況を確認できるようにした。「世界市場でキヤノンやリコーと戦うためには、物流の強化が不可欠だった」。富士ゼロックス生産本部グローバルSCM部の中澤菊男グループ長は強調する。

 新システムの目的は大きく三つある(図3)。まずは納期管理の精度向上だ。

図3●富士ゼロックスが構築した「貨物輸送状況可視化システム」の特徴
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 以前は貨物に関する情報が社内で散在しており、洋上を輸送中の製品がいつ倉庫に入庫するのか、正確に把握するのが困難だった。販売代理店は顧客に対して納期を確約できず、機会損失が発生していた。また、曖昧なまま契約した納期に間に合わせるため、割高な航空便を使うケースが頻発していた。新システム稼動後は、顧客に対して即座に納期を回答できるようになり、営業効率が向上した。

問い合わせ件数が9割減

 二つ目の目的は、余剰在庫の削減だ。工場からいつ製品が届くか分からなければ、代理店は不安を抱き、多くの在庫を倉庫に抱えがちになる。一方で、正確な入庫日が分かれば、代理店は陸上の倉庫に実在する製品に加え、洋上輸送中や通関手続き中の製品も顧客に販売できるようになる。新システムの稼動により、国内事業における在庫を7.7億円分削減できる見込みだ。

 最後は、物流部門の業務改善だ。これまでは、営業担当者や代理店から在庫や納期の問い合わせがあるたびに、物流担当者が工場や輸送業者に電話などで確認して、回答していた。クラウド経由で複数の利害関係者が情報を共有できるようになり、「毎月1800件程度あった問い合わせが約9割減った」と中澤グループ長は話す。

 富士ゼロックスはまず、主要生産拠点である中国と日本、欧州などをつなぐルートで新システムを導入した。今後は、中国から新興国に直接送られる貨物についても見える化を進め、さらなる営業力の向上と、物流コストの削減を目指す構えだ。

住友商事
輸出入許可書をデジタル化
ビッグデータの発信源に

 物流、とりわけ貿易業務には複雑な規制がつきものだ。ITを活用することで規制をクリアし、新ビジネスを生み出そうとしているのが住友商事である。

 住友商事は2012年6月、「輸出入許可通知データ管理システム(DDMS)」の本格運用を始めた(図4)。税関が発行する輸出入許可書をデジタル化して保存するシステムだ。原則として許可書は紙で保存する義務があるが、税関長がDDMSを承認したことでペーパーレス化に踏み切った。物流統括部の四方田章光部長付は「税関が求める要件が厳しく、多くの企業がデジタル化を実現できていない。国内では当社が恐らく初めての例だろう」と打ち明ける。

図4●住友商事が構築した、輸出入許可書のペーパーレス管理システム「DDMS」
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 DDMSは、税関と接続する「NACCSセンター」から許可書のテキストデータを自動的に取得し、PDF形式に加工して帳票を保存する。システム開発を手掛けたNTTデータと共同で、改ざんを防止したり、変更履歴を保存したりする仕組みを工夫。数年がかりで税関長の承認を取り付けたという。

 苦労しつつも住友商事がシステム構築を続けたのは、それだけのメリットを享受できるからだ。

 まずは、保管コストの削減だ。同社は毎月平均で5000件以上の輸出入業務を手掛けている。以前は、申告ごとに発生する許可書を輸出の場合は5年間、輸入は7年間保管する必要があった。デジタル化することで倉庫面積を削減でき、紛失リスクも避けられる。

 経理や営業の担当者が、社内のPCから許可書の内容を検索できるようにもなった。消費税の還付手続きや、コンプライアンス(法令順守)関連業務の効率化に寄与しているという。

 四方田部長付は、さらに先を見つめている。「許可書のデータは宝の山だ。工夫次第で様々なビジネスに活用できる」。

 物流業務でITを活用することで、経営に役立つ「ビッグデータ」をも生み出せる。DDMSを活用してデータを分析すれば、輸出商材の季節ごとの傾向や仕向先の割合、荷主ごとの遅延確率などを把握できるようになる。荷主に対する交渉力の強化や、有事対応にも活用できると四方田部長付は見る。今後は、住友商事の海外拠点でも許可書のデジタル化を進め、ビッグデータをさらに蓄積していく。

自前物流が積極出店のカギ

 ホームセンターのコメリが、中小型店舗の積極出店を続けている(写真A)。2013年3月末時点で全国1126店舗を展開。今年度は45店舗を増やす計画。売上規模で最大手となるDCMホールディングスの倍以上で、業界内では群を抜く。

写真A●コメリが積極展開する中小型店舗
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 多店舗展開を支えるのが、物流とITの内製化である。

 コメリは全国9カ所の物流センターで、担当エリアの全店分の商品をメーカーから一括して受領し、検品する。それを店舗ごとに仕分けして、複数の商品を混載して配送する。このため、店舗では検品作業が不要になり、すぐに売り場に陳列できる。検品作業を集約することで、店舗の運営コストを抑えているわけだ。

 「多くの店舗を安く運営するには、物流の強化が不可欠だ。当社の心臓と言っても過言ではない。利益を生み出すには、自分たちで知恵を絞り続ける必要がある」。早川博取締役はそう強調する。

 情報システムについても物流と同様、内製を貫いている。「店舗でしかできない作業を、楽して実現するためにITを活用すべき」(早川取締役)との信念から、コメリの業務を熟知するグループ社員がシステム開発に従事している。

 2013年8月には推定で約10億円を投じて、基幹系システムを刷新。「さらなる店舗拡大に備えて処理能力を増強し、商品マスターなどを拡張した」と早川取締役は話す。