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 少し前に自宅のデストップOSをWindows 8から最新バージョンの同8.1へアップグレードした。Windows 8に何ら不満はなかったが、「無料アップグレード」というマイクロソフト初の施策につい引き込まれてしまった。8.1への無償アップグレードは10月17日から、全世界一斉に行われている。その5日後、米アップルも最新版Mac OS X 10.9 Mavericksへのアップグレードを無料で提供すると発表した。

 アップグレードとはいえ、OSを無償提供するのはなぜか。また、こうしたOSアップグレードの無償化はモバイルデバイスやPCにとどまらず、IBMやオラクル、富士通などの企業向けサーバーOSにも波及していくのだろうか。

 日本マイクロソフトの広報にOSアップグレードの無償提供について聞いてみると、「OSを含めてソフトの開発と提供サイクルを早める戦略に変更した。その先駆けがWindows 8.1」と話す。今後も無償アップグレードなのかと聞くと「情報がない」とのことだった。マイクロソフトが本気で「デバイス&サービス」をビジネスの柱にしていくのなら、今後もOSの無償アップグレードを継続するのではないか。

 マイクロソフトとアップルがPC用OSのアップグレードを無償にした一因は、アップルそしてグーグルがスマートフォンやタブレットといったモバイルデバイスを普及させ、OSに対する人々の考え方を変えたことにあるだろう。

 利用者から見ると、iPadやiPhoneのOS、Android、それに多くのアプリケーションは無料で提供されている。アップルはOSを自社のハードにだけ搭載しているが、グーグルはハードメーカーにAndroidを供給しており、マイクロソフトと違って料金を徴収していない。「OSは無償」のモバイルデバイスが消費者市場を席巻するようになってくると、PCについてもOSを無償にしていかざるを得なくなる。

 OSが無償になっていくなら何かで稼がないといけない。アップルは「数年前の機種では最新OSは動かない」という恐怖を顧客に与えながらハードの新製品でしっかり儲け、自ら提供するサービスでも稼いでいる。グーグルはインターネット広告が利益源だが、米モトローラのモバイルデバイス事業を買収した。OSとアプリケーションがドル箱だったマイクロソフトはフィンランドのノキアのモバイルデバイス事業を買った。アップルのようにハード、ソフト、サービスを密接に組み合わせて提供するビジネスが再び支配的になっていきそうだ。

 一方、企業向け市場はどうか。やはりハード、ソフト、サービスの垂直統合モデルへの移行が進んでいる。オラクルのサン・マイクロシステムズ買収はその典型だ。当座の目的はデータベースやERP(統合基幹業務システム)などオラクル製ソフトを売り込むカスタマーベースの確保だったが、さらにクラウドサービスも始め、そこでも稼ごうとしている。

 企業市場において、OSを含めたソフトのアップグレードはもともと無償で提供されてきたが、その代わりソフト保守料金をがっちり徴収してきた。しかし究極の垂直統合であるクラウドサービスが普及していけば、その中でハードもソフトも提供することになり、結果としてソフト保守も含めたOSの無償化が実現するのではないか。ハードもソフトも全部サービスで変動費、という世界は経営者が望むところだからだ。