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 米マイクロソフトがスマートフォン(スマホ)市場での生き残りをかけた戦いに打って出た。2014年2月24日から27日までスペイン・バルセロナで開催された世界最大のモバイル関連展示会「モバイル・ワールド・コングレス2014」(以下MWC2004)では、伸び代の大きい新興国に向けた低価格競争が一段と激しさを増していた。そんな中、マイクロソフトが、火中の栗を拾いに行った。

低価格Windows Phoneを可能に

 MWC2014開会前日の2月23日、マイクロソフトは報道陣向け説明会で今春のWindows Phoneのアップデートなどを発表。Windows Phoneを新興国向けスマホOSとして使えるようにする数々の施策を打ち出した。

今春、Windows Phoneに大きな変更
写真1 Windows Phoneのアップデートなどを発表した米マイクロソフトのOS担当副社長 ジョー・ベルフィオーレ氏
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 説明会に立ったマイクロソフトのOS担当副社長 ジョー・ベルフィオーレ氏(写真1)は、「Windows Phoneが2013年、最も成長を遂げたOSである」と説明。地域別では、中東・アフリカが対前年比で実に758%と大きく成長を遂げているとした。その流れを今春のアップデートでさらに加速させる腹積もりだ。

 Windows Phoneの普及・低価格化に向けたマイクロソフトの施策をまとめたのがだ。

ハードウエアの低価格化を促す
表 ハードウエア要件を緩和し、低価格機でもWindows Phoneを採用しやすくする
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 これまでマイクロソフトは、Windows Phoneが稼働するハードウエアに厳しい要件を課してきた。現行のWindows Phone 8の場合、米クアルコムのSoC(シリコン・オン・ア・チップ)で、上位機種向けのものを採用しなければならなかった。今回その制限を緩め、ローエンド機種向けのSoCの採用を許容した。

 さらにユーザー体験を共通化するためのカメラボタンを必須とせずオプション扱いにしたり、物理キーではなくソフトキーの採用を許可したりといった策を打ち出して、低価格化を進める。

 世界最大の携帯電話事業者である中国移動が採用する通信方式「TD-SCDMA」「TD-LTE」への対応に加え、新興国で必須とされる、2枚のSIM(Subscriber Identity Module)カードを挿せる「デュアルSIM」への対応も図る。新興国と最大の消費地である中国の市場を強く意識したものだ。

Androidの“威を借る”

 こうしたハードウエア戦略は何を示しているのか。これはマイクロソフトが、スマホ向けOSで最もシェアが高いAndroidを搭載するハードウエアを、そのままWindows Phone向けに流用できるようにしてしまおうとする戦略にほかならない。

 マイクロソフトは端末メーカーがAndroidだけでなく、Windows Phoneも採用しやすくなる体制を整える。例えば、クアルコムのリファレンスデザイン(ハードウエア製造のための参照元になる電子的な部品などを配した基板デザイン)に沿って製造されたAndroidスマホに向け、Windows Phoneを移植するためのドライバーを用意する。

 このAndroidの“威を借る”とも言える戦略は、ハードウエアだけでなくソフトウエアにも及ぶ。

 2014年第1四半期中にもマイクロソフトによる買収が完了する(記事執筆時)フィンランド ノキアが2月24日に発表したプラットフォーム「Nokia X software platform」(Nokia X)がその象徴となる。Nokia Xのベースは、Android Open Source Project(AOSP)であり、Android向けに開発されたアプリは、原則このプラットフォームでも動作する。

ノキアは“Android”採用で低価格化進める
写真2 Windows Phoneに似た独自のUIを実装する「Nokia X software platform」を採用したスマートフォン
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 AOSPは、米グーグルがビルドするAndroidではなく、オープンソースのプロジェクトとして提供されている。Androidスマホの開発では、OSにグーグルのAndroidを採用するのが一般的だが、NokiaはAOSPを利用して独自のUIなどを実装した。その見た目はWindows Phoneそのままだ(写真2)。

 ノキアは2014年第2四半期中にもNokia Xを採用したスマホを提供する。価格は89ユーロからと日本円で1万円を切る設定とした。

Firefox OSも競合に

 ただ、マイクロソフトが新興国向けシフトを打ち出したことで、これまで競合と考えていなかった相手と戦う場面も増える。その一つがFirefox OSだ。同OSを提供する米モジラは、現在スペインの通信事業者であるテレフォニカと組み、Firefox OSの地位を南米などで築きつつある。マイクロソフトの施策にも手をこまぬいてはいない。

 2月23日にマイクロソフトが発表した直後、モジラはFirefox OSを搭載する25米ドルスマホの投入を発表した(写真3)。中国のスプレッドトラム・コミュニケーションズが開発したSoCを使って25米ドルという低価格化を実現する。

25米ドルのスマートフォンも登場へ
写真3 米モジラが25米ドルのスマートフォンを発表
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 新興国を狙うということは、こうしたライバルたちとの価格競争に巻き込まれることでもある。

法人向け機能で保険

 ただマイクロソフトがアップデートで打ち出したもう一つの強化点である法人向け機能は、Windows Phoneの新たな市場を広げるかもしれない。低価格化は新興国だけでなく法人にも魅力的で、さらにマイクロソフトが法人向け機能を強化するなら、この市場で巻き返せそうだ。

 今春のアップデートで、WindowsPhoneは電子メールの暗号化と電子署名の規格であるS/MIMEや、VPN(仮想専用線)に対応する。日本で唯一Widows Phoneを扱う携帯電話事業者KDDIの執行役員商品統括本部長の山本泰英氏は、「法人向けにはVPNが必須」と述べる。これをきっかけに日本市場にWindows Phoneが“再上陸”するかもしれない。