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 アジア太平洋地域を対象にした通信分野の学術会議「APAN」(Asia-Pacific Advanced Network)は8月22日~27日の6日間,台湾台北市で第20回目となる会議を開催している。8月25日には,日本と韓国の有識者らによる「玄海プロジェクト」がテレビ会議システムを使った遠隔医療に関するセッションを展開した(写真上)。

 玄海プロジェクトは,韓国釜山市と北九州市・福岡市をつなぐ海底光ケーブル「KJCN」(Korea-Japan Cable Network)などのインフラを使う日韓の有識者による学術プロジェクトで,2002年にスタート。KJCNなどの国際ネットワークを使って,日韓の大学間での遠隔講義や,病院間をつないだ遠隔医療といったアプリケーションを検討している。

 今回のAPAN会合では,台北の会場(写真中)と福岡市の九州大学病院(写真下),東京の国立がんセンター,ソウルの韓国国立がんセンター,中国・北京の清華大学の計5地点を接続。各地点の医療関係者らが,テレビ会議システムを使って早期がんに対する内視鏡手術方法について熱い議論を展開した。

 あえて通信分野の学術会議に医療関係者を集めた理由を,九州大学病院光学医療診療部の清水周次助教授は「医療こそ情報通信技術の恩恵を生かせる分野だが,医療と情報通信の接点はあまりに少ない。こうした機会に両者の距離感を縮めたかった」と説明する。

 ブロードバンド回線を使って高精細な映像伝送が可能になれば,遠隔地での内視鏡手術などが可能になる。内視鏡で適切な個所を映し出しながら手術する内視鏡手術は,熟練医でなければ難しい。「内視鏡手術の技術力は病院ごと,国ごとによってバラバラなのが現状。ブロードバンド回線があれば,各国での内視鏡手術のレベルの差を吸収できる」(九州大学病院の清水助教授)。

 高精細な映像伝送は,医師同士の情報交換や教育など“後方支援”的な役割も大きい。例えば,「若手医師の教育のために実際の手術の様子をライブで配信する。市販のビデオなどは編集されているため,とっさの場面で医師がどう対処したかといった実践的な内容が不足している」(清水助教授)。大病院で働いている医師以外には見られなかった光景を,世界各国の医師が見られるようして,国際的な医療技術を底上げする狙いもある。テレビ会議ならば,国際会議にはなかなか参加できない途上国の若手医師らも容易に参加できる。

 清水助教授は,「これまで遠隔医療というと,細い回線でやり取りできる圧縮技術を開発して実現しようとしてきた。しかし,世界各国に猛烈な勢いでブロードバンドが広がりつつある。これを使わない手はない」と力説する。玄海プロジェクトでは,来年にかけて医学学会などでも同様のセッションを開催する予定。さらに「無圧縮のハイビジョン映像伝送を使った内視鏡手術のライブ配信も2006年3月までには実施する」(清水助教授)方針だ。

 KJCNは九州電力,NTTコミュニケーションズ,日本テレコムと韓国KTの4社と日韓の経済団体(九州・山口経済連合会及び韓国全国経済人連合会)が構築。2002年3月に運用を開始した。最大容量は2.85Tビット/秒を誇る。今回のセッションでシステム運用を担当した九州電力は,「九州経済界でアジア各国に貢献しようという気運が高まったため,KJCNの敷設を先導した」(情報通信本部の寺崎善治電子通信部長)という。